第16話 4人での食事 (召使いとの距離)
初めてユナと共に浮かれ気分で街中に出た凛だったが、そんな中でユナの色香に惑わされフラフラと集まってきた野郎どもに振り回されながらも、何とか食事に行くための軍資金4778万円を無事に手にしロルのもとに戻ってきた。
ロルは宇宙船墜落からずっと食事を摂っておらず、とてもお腹が空いており、とにかく美味しい物を早く食べたいようだ。
聞くと今のロルは外見だけでは無く、中身も含め身体の全てを地球の日本人をベースに作り直しているとの事だ。だから今は地球の食事を普通に、しかもとても美味しく食することが出来るそうで、すごく楽しみにしているらしい。何ともすごい科学技術である。
「リン。早く食事に行くぞ!」
「何を食べるかは調査して決めてある。お前は一緒に付いて来るだけでいいぞ。」
凛は接待などしたことが無かったので、ロルの言葉に安心した。
(付いて行くだけでいいんだ・・・)
「ところで何を食べるのですか?」
「ん? 知りたいか?」
「今回は、焼き肉・寿司・うなぎ だ!」
「3種類も!」
「食べ過ぎじゃないですか?」
「大丈夫だ。問題は全く無い!」
「リセ。まずは焼き肉を食べるぞ! 転送してくれ!」
気が付くと、お店近くの人気が無い場所にタイミング良く転送されていた。
「この先を少し行ったところです。」
とリセが道案内してくれた。
するとこれまた、たいそう立派な門構えの焼き肉店に着いた。
凛は思った。
(高そーーっ! でも、もう驚かない!)
(俺も思いっきり食ってやる!)
そしてロル、リセ、ユナと僕の4人は、お店の奥の個室に案内され座椅子に着席した。
当然、ユナは僕の横。でも前にはエロくて美人なリセではなく、ちょっとチャラそうな野郎姿のロルが座った。
(けっ! 仕方ない・・・我慢だ!)
すると着物姿の仲居さんがやって来て丁寧な挨拶をしてくれた。
ロルはどこで勉強してきたのか「苦しゅーない。苦しゅーない。」とか言っている。
(めちゃくちゃ恥ずかしい・・・)
するとロルは注文を始めた。
「特選タン塩、特選カルビー、特選シャトーブリアン、サラダ、スープ、を4人前。そして一番高いワイン持ってきてよ。」
「かしこまりました。」と言って仲居さんが奥に下がっていった。
するとロルが凛に話しかけた。
「リン。この国の法律ではお前は酒を飲んでも良いんだよな。」
「はい。ユナ以外はみんな飲めます。」
「ん? どうしてユナは飲めないんだ?」
「えっ? ユナはまだ未成年なので法律では飲めないことになっていますけど・・・。」
「ん? ユナはお前と同じ歳の設定だぞ。」
「そうだよな。リセ。」
「はいロル。その通りです。」
「リン、ユナは幼く見えましたか?」
「ええ、15歳か16歳くらいだと思っていました。」
「そうですか。」
「ユナはあなたと同じ21歳の設定です。」
「えっ? そうだったんですか!」
(同じ歳の設定だったんだ。じゃぁ、一緒にデートとかしても全く問題無いな・・・・うふっ・・。)
「ちなみに私とロルは28歳の設定にしてあります。」
(おぉーっ! ロルはどうでもいいけど、リセは28歳の設定なんだ・・・)
(僕にとっては憧れのお姉さま的な年齢だな・・・・うふっ・・最高!)
「そうだ!リセ。一つ教えて貰ってもいいですか?」
凛はユナについて、ずっと気になってた事を尋ねてみた。
「何でしょう?リン。」
「ユナについてです。」
「ユナは作ったって言われてたけど、やっぱりロボットみたいなものですか?」
「ロボット?」
「リンの言うロボットって言うのは、金属等の部品で構成された機械的な装置をイメージしていますか?」
「ええ、そうです。」
「んー。まだ私達とリンとの概念が違い過ぎるので説明するのは難しいですね。」
「あなたにわかりやすく説明するならば、ユナはロボットではありません。」
「分類上あなたと全く同じ哺乳類のヒト科に属する列記とした意志を持った一人の人間です。」
「違うと言えば我々のテクノロジーを、少しだけ身体に紛れ込ませているところだけです。」
するとロルがリンに言った。
「ユナは我々が作り出したものではあるが、お前と同じ一人の人間だ。」
「おまえの全力で大切にしてやってくれ。頼んだぞ!」
凛はユナがロボットでは無かった事にホッとしたが、何とも言えない大きな責任がずっしりと背中に乗ったような気がした。
「そうだリン。ユナは女の子だからおまえとの赤ちゃんも作れるぞ!」
「完璧だろ!」
「ワハハハハハ」
「えっーーーーー!!!!!!!!!!!!!?」
当然と言えば当然かも知れないが、凛は目玉が飛び出る程驚いてしまった。
(えーっ 変な事を教えるなよ・・・)
(それは聞かなくても良かったな・・・)
照れながらユナをチラ見した。
しかしユナは至って普通にしていた。
(ユナ、恥ずかしくないのかな・・・)
何だかちょっとだけユナに違和感を覚えた凛であった。
そんな会話をしていると準備が出来たみたいで、仲居さんがお肉をどんどん持ってきてくれた。
「よーし!喰うぞー!!」
ノリノリのロルが叫んだ。
凛も負けずに叫んだ。
「いっただきまーす!!」
仲居さんが焼いてくれるお肉は最高の焼き加減でメチャクチャ美味しかった。
ロルやリセも感激しているようだ。
「どうですか? この惑星の料理は?」
「うまいよ!リン。」
「すごいよ!この惑星の料理は。」
「何なんだろうな・・・・」
「この香ばしい香りに、独特のうま味。それを甘い脂肪が滑らかに包み込み美味しさを倍増させている。素晴らしい出来だ!」
どうやら、本来持っているロル達の味覚と僕たちの味覚はかなり違うみたいだ。
ロル達はあまり味覚が発達していないようで、僕たちの方がとても複雑に発達しているとの事だ。
だから今のロルとリセの口の中は、これまで感じたことが無い程の多くの味覚が洪水のように押し寄せて来ていて、大変なことになってるらしい。
「リセー 美味すぎるな~」
「はい。その通りですねー ロル。」
「よーし。特選カルビーの追加だ!」
「あっ 特選シャトーブリアンも追加で。」
(まぁ 何にせよそんなに満足してくれたなら本当に良かった良かった・・。)
ふと横を見るとユナも美味しそうにお肉を食べていた。
その横顔はとても可愛くて、すごく愛おしく感じた。
今までどうしていいのか分からずユナとは距離があったが、凛は積極的にその距離を縮めようと思った。
「ユナ。美味しい?」
「はい、凛様。とても美味しいです。」
と言ってユナが少しだけ笑ってくれた。
「よかった。」
ユナの笑顔にホッした。
凛は小声でユナに、
「ロルのおごりだから、いっぱい食べようね。」
と言うと、ユナはまた少しだけ笑顔で返してくれた。
(やっぱり一緒に食事するって大切だなー)
と改めて思った。
「そうだ! お願いなんだけど、凛様って呼ぶのは止めにしようか?」
「凛だけでいいよ。これから様は付けずに凛って呼ぶようにして欲しい。」
そう言うとユナは少し戸惑った。
「どうなさいましたか・・・?」
ユナが不安そうに聞いてきた。
「そんなに心配しないで。」
「僕はユナと仲良くなりたいんだ。」
「だからまず手始めに呼び方を変えようと思っただけだから。」
「そうなのですか・・了解しました。これからは凛様の事は 凛 と呼ばさせて頂きます。」
ユナは納得してくれたようで了承してくれた。
凛は彼女が本当はどう感じたのかは分からなかったが、ユナと自分の関係をほんの少しだけ進めたような気がした。
そんな感じで凛は凛なりにユナとの関係を一生懸命に模索していたが、ふと気が付くとロルが酔いつぶれて満足そうに横になって寝ていた。
「はっ?」
「ロルなにやってるの?」
「ええ、ロルは今回の焼き肉に大満足されて眠りに付きました。」
(えっ? 酔いつぶれただけじゃねえの?)
と凛は思ったが、
「今日はあと、寿司とうなぎを食べるってロルは言ってたけどどうしますか?」
「ええ、身体をリフレッシュして起こすことは出来ますが、とても気持ち良さそうですので今日はこのまま帰りましょう。」
凛もそれがいいと思った。
そしてリセがお店に40万円程の支払いをし、今日はお開きとなった。
凛はそれでも結構楽しい時間を送ることができ、ユナともちょっとだけ近づけた気がして大満足だった。
「よーし! 明日もきっと凄いご馳走だぞ!」
「明日も一緒にいっぱい食べようね。ユナ。」
「了解しました。凛」
こうして、初めての4人での食事がとても楽しく、そして無事に終わったのであった。




