第1話 宇宙船 (始まりのプロローグ)
ビービー
ビービー
ビービー
船内にまた警報が鳴り響いた。
「またか・・・もう限界に近いな。」
気が遠くなる程の時間を飛び続けてきた宇宙船だが、ここにきて急に悲鳴を上げだしたのである。
「仕方ないな・・。」
「この辺で本格的に修理する必要があるな。」
「どう思う?リセ」
ロルは唯一の仲間である宇宙船の人工意識に語りかけた。
「はいロル。おっしゃる通り無理をするにはそろそろ限界が来たようです。」
いままで、応急処置でずっと凌いできたが流石に無理のようだ。
もう船体がボロボロである。
「そうだよなー 本当に頑張らせたもんなー」
「よし。本格的な修理をしよう。」
「ここまで逃げてきたんだ。もう見つかりにい星域には来ている。」
「見つかったとしても多少の時間は稼げるだろう・・。」
「修理にはどれくらい時間が掛かりそうなんだ?」
「はいロル。今後の事も考えてこの際、戦闘型に変更したいと考えています。」
「8日間の時間を必要とします。」
「えっ? 戦闘型に! ワクワクしてきたぞ。」
「しかし8日間か・・・」
「よし。とりあえず生命体がいる一番近い惑星に進路を取ってくれ。」
「そこで完璧に修理と改造をしよう。」
「はいロル。了解しました。」
「ロル。候補の惑星までは幸いとても近いです。」
「距離1.15光年の場所にありますが時空間飛行を行いますか?」
「1.15光年か・・・」
一瞬で行ける時空間飛行にするか悩んでしまうところである。
「いや、やめておこう。」
「せっかくここまで慎重に逃げてきたんだ。」
「今見つかったら、この船体ではとても逃げ切れない。」
「船体も何とかその距離だったら大丈夫だろう。」
ロルは用心に用心を重ね、時空間飛行時に発生する時空ひずみによる索敵リスクを避けた。
「時間は掛かるが頑張って通常飛行で行こう。」
「はいロル。通常飛行で向かいます。到着まで1.65年ほどです。」
「よし! 行こう。」
「ちなみに今から行く惑星はどんなところなんだ?」
「はいロル。惑星自体は我がマスリク星の太古の状態にとても似ています。」
「本当か! じゃあ生命も多様でたくさんいるんだろ。」
「ゴミみたいな星間物質が原料の食事にうんざりしてたところだ。」
「久しぶりに美味しい物が食べられそうだな。」
「楽しみだぜ!」
「少し心外な発言ですねロル。」
リセは食事製造装置の原子から構築していく味気ない食品に対し、少しでも自然の物を取り入れた食事をとの思いからの配慮だった。
「ごめん。ごめん。リセの気持ちにはいつも感謝してるよ。」
ロルは慌ててリセの機嫌を損ねないようにフォローを入れた。
その事に関してはサラりと流したリセだった。
怖いような怖くないような・・・。
そしてちょっとだけ言いにくそうに追加情報を報告した。
「この惑星ですが、実は・・・」
「えっ? どうしたんだ」
「はいロル。そこで発展している知的生命体は哺乳類型生物のようです。」
「えっー哺乳類型?」
「がっかりだぜ。 毛がびっしりと生えた、あの気持ち悪い生き物か!」
「俺の嫌いなヤツだ。」
「おうぇー いやだよー」
「あーあ。行く気がなくなったなー」
「ロル。まあそうおっしゃらずに。」
「8日間だけの辛抱ですから。」
「はいはい。わかってます。」
「あーあ。とりあえず僕は長期睡眠に入らさせてもらうね。」
「はいロル。了解致しました。」
「おやすみなさい ロル。」
「おやすみ リセ。」
良いのか悪いのか・・・
人類史上初の地球外生命体との遭遇がまったりとこんな感じで、とりあえず決まってしまったのでした。