第壱話「夢を、欲しがる」
これは、ドタバタ調ではじまる、どうでもいいことで悩んいると周りの人間に言われている人のためのストーリーです。誰かと一緒にいても、心が孤独なひとのための、弱くも立ち上がろうとドン・キホーテのようにバカバカしいことでも立ち向かって自分なりに生きていこうとする若者の物語です。
セカイ系描写が途中で導入されますが、まだデビュー作品なので上手くないのは承知です。どんどん批評してください。
夏休み前・・・といっても8月入る前からはじまる中高の夏休み前の感覚とは違っていかにもナツがはじまっているような感覚ではじめるもないと語るミンミンゼミの♂だかなんだかがわずらわしい叫び声をわめきたてている田舎じみた大学のテストもなんとか切り抜けた(気がする)オレは、僕は、私は、うーんっと、自分の一人称が決まってない自分は、なんだかイライラしていた。
去年の夏休みは、なんだかつまらなかった。なぜかって?理由はないよ。オレがつまんないと思ったらつまんないよ。同じことやっていてもほかのやつらはおもしろく感じるのかもね。
ウゼェ。なんか、よくわかんねぇけど、人生おもしろそうなやつ、笑顔でそれなりにやれるやつ、つらそうな、めんどくさそうなことでもさっと何食わぬ顔でやれるやつ、自分と合わないやつ、オレのこと嫌いなやつ、オレのこと好きになってくれないやつ、その他、うまくいかない事象、そしてそんなことに包み込まれている自分、全部ウゼェ。
でも、この夏休みは違うよ。ハコイリムスコだった自分が、ついに解放されたんだよ(一部ね、ルールもあるけど。)
長年、将来のためとかいって、ずっと10人以上の親戚からもらってきたのに20年間ずっと銀行預金にまわされてきた資金が、(ただし通帳とかはオレがなくすのが心配だから使ったらソッコー返せだとさ)、いくらだと思う?
ふふっ、お前らには教えなーい。
オレのプロフィール、岡野タカヒロ、タカヒロは芸名です。なんちって。本名は貴博ね。農家の長男で生まれたよー。現在大学2年生。
小中高のさえない日々をくぐり抜け、これじゃ自分やばい、そう思って第一志望じゃなかったけど自分なりに納得した大学受験をやったので、やったぁ、これで日本の学生生活上もっとも華やかで猶予有る4年間を過ごせるんだぁ!
・・・・と、思っていましたが。
7月31日午前9時現在、変わり映えしない毎日を自分の部屋にて過ごしてます。
サークル?入ってません。理由はわからん。自分でもわかんないんです。
ときどき思う。
なぜなにもおこさなかったのか、と。
べつにいまはじまったことじゃない。皆さんもそう感じませんか?
だめだ。またこういうことの堂々巡りで思考が空転してくるよ・・・・てかそもそも誰と話してるのお前?お前だよッ!岡野!
独り言が多くてすみません。
姿が痛々しいのはわかってるんですよ。って、もう誰もオレのことを「痛い」とすら思ってくれない。みんなの中に、オレは痛い存在としてすら認識されていない。
知り合い、友達、いないわけじゃない。でもなんか、ずっともやもやしてる。言葉で説明することができない。
ただひとつ言えるのは、
こ わ い
ってことです。
芥川龍之介は自殺するとき言った。「ぼんやりとした不安」があると。それなんとなくわかるなー。なんかうまく言葉では説明できないけど、勝手に偉大な作家と自分の感覚がシンクロしてる。
よくよく考えたら、たしかに大学生としては大金といえる郵便貯金を手にしたわけだけど、ぜんぜん何につかったらいいかイメージできてないなぁ。親から許可を得てやったやったと文字通りうさぴょんしてたわけですがね。てへへ。
どうしよっかなー。ほんと。
アトピーで文字通り荒廃しきった顔がかゆいかゆいと泣いているのでよしよしと自分の手でこたえてあげたオレは、朝からなーんもせずテレビを見ていた。
地上波の番組、いいのやってないなぁ。こんなん完全に主婦しか見てない番組だよね。
我ながら勉学に励むべきはずの学生がなんともいえない醜態を我が家でさらしてるよなぁ・・・ま、我が家だからいいけどね!っとぉ・・・
「・・・・・ん?・・・・」
そのとき、オレは完全に心を奪われていた。画面の向こうにいるオレにとってのビーナスが、そこで燦々と輝きを放っていた。そう、ワイドショーのニュースに、あのオレが大好きだった女優であり歌手としてもアルバムを全部買ったほど熱を入れていた、白花さなえが電撃で、芸能界復帰を表明したというのである。彼女は、あの神戸歌劇団のエリートとして瞬く間に脚光を浴び、退団後は、培った演技と歌唱で一世を風靡した。1990年代後半にはあの超イケメン俳優三村正和とW主演の「スウィート・バケーション」が大ヒット。最終回の最高瞬間視聴率は47・3パーセントを記録。しかしドラマも映画も引っ張りだこな彼女に、長い女王生活の終焉を告げる出来事が起きた。
2009年。彼女の音楽活動のプロデューサー、小林哲夫との破局が原因で、睡眠薬等の薬物依存に走り、やがて自殺未遂をしてしまった。そして、追い討ちをかけるように週刊誌のどこまでほんとうかわからないスキャンダル(?)に事務所も悩んだ上で苦渋の決断を下したのだろう。彼女は芸能界引退を表明した。
彼女は、引退記者会見で、「もう自分がなにをしたかったのか、わからないんです。」と言って、カメラに一礼して去っていった。あれから5年たった世の中やマスコミ、そしてミーハーという名のにわかどもは彼女のことなどすっかり忘れ去って生きていた。その白花さなえが、笑顔で芸能界復帰の会見の理由を語っていた。会見を抜粋させていただく。
白花さん、まず今回の電撃的な芸能界復帰につきましてですね。
「はい。」
どのような気持ちで、会見をひらかれたのですか?
「そうですねぇ・・・まず、わたしが復帰するにあたって、以前あのようなカタチで父母兄弟、親戚、お世話になっていたプロダクションの皆様、そしてファンの皆様に多大なる迷惑をかけてしまったことにたいして、自分があの会見でなにも伝えきれていないんじゃないか、あのような伝え方で皆さんの前から去ってしまったことにたいして、もしもう一度、お芝居や歌に携わる機会を与えられたなら、報道陣の皆様にきかれる前に、自分の手でさいしょからきちんと大きな声ではっきり伝わるようにしておきたかったんです」
・・・・というと?
「これまで、自分はワガママな人生を送ってきました。自分のやりたい放題でまわりを困らせることも多くありました。でもそのくせ他人は許していないよねと、私の心のなかの声のひとつが言っていました。そんな自分の弱さを見ても目をそむけず私とかかわろうとした人々とも、自分からすべての『声』をきくことをやめて去ってしまったというか・・・それが5年前の会見だったと感じていました。
そのうえで、自分がもう一度、いろんな『声』を聴いたり伝えたりしながら舞台や歌にかかわれるならと感じまして、それはこの会見からはじめるんだと。」
それで今度の会見に至ったわけですね?
「ええ。」
個人的に私が知りたいと思ったことがあるのですが、よろしいでしょうか?
「どうぞ。」
今回白石さんは、復帰作となります映画『あばずれ』に主演するわけですが、白石さんの新境地開拓ともいうべき作品といわれていますね。
「はい。」
白石さんがこれまで演じてきた役というのは、善人になるにしても悪人になるにしても飛び抜けた『なにか』に秀でているということがとても明確にあらわれていた役でしたよね。
「えぇ。」
しかし今回はそれがない。
「やはりそう感じますか?」
むしろ、いいところを見つけるほうが難しいように感じる人が多いと思います。
「そう言っていただけるということは、あなた、私の術中にハマってますね(笑)」
そうなんですか(笑)
「はい。どっぷりと(笑)おっとっと、これ以上言っちゃうと旨味がなくなっちゃうんで、このあたりにしておきますね、作品については(笑)で、なんでしたっけ、本題は(笑)」
復帰作にて、そのような役柄を演じるということは、演技のみだけではなく、先ほど言いました、その『声』かなにかと関係があるのでは?復帰しようと考えたのも、その『声』について気づき、なにかしようと思ったからですよね?
「さっきから鋭いなぁ。ご名答ですね(笑)」
復帰のきっかけになるような出来事は?答えられる範囲でよいので、よろしければ教えて欲しいのですが・・・
「えぇっとぉ・・・何かひとつに絞れといわれると難しいのですが・・・いちばん大きかったものといえば・・・」
いえば?
「うーん。これ言っちゃっていいのかなぁ(笑)インパクトがあったといえば、すごいなんか、とんでもないことってわけではないですよ。」
はい。
「『ドリーム・マシン』ですかね。」
ドリーム・マシン・・・あの2年前から流行している、あれですか?
「はい。『生きることの刺激』を教えてくれたものです。つらかったとき、何か脱せるものがないかなと、わらにもすがる思いでこれを購入して・・・それが運良く私を救ってくれたものでした。すこしずつ変わっていけたんです。」
具体的にはどのように・・・?
「なかなか上手くは言えませんが、夢と現実のはざまで、生きていこうと。それはこれまで自分が好きであり続けた仕事ならいちばんやりやすいんじゃないかと。一時期は嫌いにもなりかけた仕事でもありますけどね。いや、いまでも大嫌いかもしれない(笑)
仕事してるときは、この瞬間いいなぁって思えば、『大好き』だし、あー今日の自分イキイキしてないなって思ってる時は、『大嫌い』なんですよ、自分勝手で、私は(笑)そういういろんな気持ちを含めてたくさんのものと向き合ってることは、『大好きでいたい』って思うようになれまして・・・あっ、でもたまたま私に合っていただけの話なので、皆さんにすすめられるものかと言われると、それは断言できません・・・」
そうですか・・・ではお時間もせまってきているので最後の質問になりますが、白石さんにとって、演技や歌とは、なんですか?
「人生です、といってしまうのは簡単ですけど、なんか安易に使う気にはなれない言葉ですね(笑)
わたしを植物に例えるとしたら、この仕事は、白石さなえの『草の根』です。私という人間をいろんな角度から表現して伝えていくもので・・・そのいろんな角度から、何かとつながる感覚を皆様にちょっとでも味わっていただいて、働いてて苦しい毎日だけれども、楽しいこともなくはないかなと思ってもらいたい。そのくらいしか、私にはできないんですけれども・・・
もちろん日本、もっといえば世界でも、私の演技や歌どころか白石さなえが生きていることすらどうでもよい人のほうが圧倒的に多いんですよね。仮に私の名前を知ってても私のことが好きとは限らないですし・・・
むしろ、私を批判したくてウズウズしてる人もいるでしょう(笑)でも、名前や顔を知ってたりすればそれだけ誰かの『草の根』と『草の根』がつながって、何かの栄養分になれる可能性はあるし、私のことを良い部分があると認めてくれる人がいるなら、それはそれで私も栄養を与えられているわけで(笑)嫌いだろうが好きだろうがかかわるかぎり草の根が伸びていることを伝えたい。ラクなことばかりじゃないけど、その草の根をちょっとずつ伸ばし続ける人生は楽しいと思います。
私のことを好きな人も嫌いな人もここにいていいのが当たり前だし、ここにいていいからこの場所にいるのだと思って欲しいです。もっと言えば誰かと距離を置いたり傷つけたりしても、そのぶんだけほかの何かと関わる人生はよいとも伝えたい。
ほんとは芝居や音楽なんかでなくてもよいですよ。こんなものは、私の道楽に過ぎませんから(笑)すべての仕事がそうあるべきだと感じてます。私は余りものなんでね。
そんな私でも、私が私として生きていられることに感謝したい。それは生きているうちにしか出来ないことですからね。そのための努力はキツくても楽しいので、道楽ですらキツいと思ってる私の『おふざけ』を見てくれる人には、近かろうが遠かろうが共有するものがあったらよいですね。
ワガママな長い会見でしたが、話は以上です。ほんとうにありがとうございました。」
ありがとうございました。
「へぇっ・・・あの白石さなぇが復活したんだ。もう無理だと思ってたのに。」
そのときのオレには、そんな月並みにもなっていない感想しか、抱けていなかったけども、また彼女の作品を追っかけられると思うと、ニヤニヤを隠せずにはいられなかった。
「ただいまー!いい子にしてたか?おっ、あんたの大好きな白石さなえじゃん。良かったなぁ、嬉しいだろー(笑)相変わらず美人だねぇ。」
「そりゃぁ、母さんに比べたらね。」
「なんだよー。その言い方はー!ま、いいけどね、わたしはオバサンだし(笑)」
おいおい、今日やけに機嫌がいいんだな。
「なんか、うれしそうだけど、どったの?」
「いやあ、あたし映画みにいってきてさぁ(笑)はっはっは。」
「また映画?」
「悪い?」
「いや、悪くはないけど・・・もしかして・・・あれ見てきたわけ?」
「そうそう、『あばずれ』!おもしろかったよー!あのねー!白石さなえがとことんゲスい女でねぇ・・・あたし昔はあのタカビーな女っぷりが嫌いだったんだけどさぁ、」
「ネタバレすんなよ・・・見る気失せるだろォ・・・」
「ごっめーん(笑)まぁでもいいでよね?あんた昔から白石さなえが大好きなんだし、どうせ見に行くんでしょ(笑)」
「もういい。その話聴きたくない。」
チッ・・・こいつめんどくさ・・・はしゃいでうざい。
機嫌がわりぃと怒鳴り散らし当たり散らし・・・べつにオレのこと好きだと思ってねェだろ?ま、親が子どものことを好きだとは限らないけどさ。都合良すぎだっつの。
ダルいもんで、自分の部屋にこもってパソコンつけて、適当にネットサーフィンでもして野球の動画でも見てるかぁ・・・
そうしてオレは、動画サイト『Your Tube』を開く。
おー。あったあった。伝説の名投手、黒井直樹の高速スライダー。1997年優勝争いのまっただ中、7月24日に行われた東京シャイアンズ戦、熱狂的なファンが録画したものをアップロードしていた当時のテレビ中継の動画は再生回数は14万7千5百回を突破。
物心つきはじめた頃から憧れてた、横浜ダイヤモンズの絶対的守護神。かつては先発として活躍していたが、エースとして多くの試合に登板するうちに無理がたたり、肘を手術し3年後に復活して守護神に。日本プロ野球のセーブ記録を塗り替えた。チームは46年ぶりの日本一を果たした。
しかし、今度は守護神としての登板過多で肘を完全に壊してしまっていた。違和感はすでに、日本シリーズ前からあったそうだ。そして、日本シリーズ第7戦を最後に二度とマウンドに帰ってくることは無く引退。そんな彼も一時期精神を病んでいた。そんな彼も、コーチとして第二の人生を歩みたいと、久しぶりに出てきたテレビ番組で言っていた。
そういやこの人もドリーム・マシンのおかげで復活出来たとか言っていたなぁ・・・
・・・みたい。
買ってみたい。
オレも買って、ドリーム・マシンでなにかが欲しい
・・・・それで、変われるなら。




