第1話 幽霊の少年
新品の制服に身を包み、登校する。
彼女、東条優は中学でもずば抜けて頭が良かった。
この帝陽高等学校では一緒に登校する友達はまだいない。まだという言葉にも少々間違いがあるだろう。
元から友人などと親しくする性格ではないため、中学でも1人でいることが多くあった。しかしそれはいじめられているわけではなく。ただ単に優が人に懐かない性格だからだ。
「優ちゃーん!」
聞きなれた声とその呼び名。
驚きながらも振り返った。そこにはいるはずのない少女、成瀬希美が走って優の元へと近づいてきた。
「希美?高校間違えたの?」
「違うよ!そこまで私バカじゃないし」
「自覚はあるんだ」
成瀬希美というのは唯一の優の幼馴染だ。
希美はちゃんと知っている。優がどんな家庭に生まれ、どんな力を持っているのかも。
「希美って頭悪かったよね」
「へっへー。スポーツ推薦が来たんだ。絶対優ちゃんと同じ高校行きたかったしね!」
希美は頭が悪い代わりにスポーツがかなりできる。体力だって男子共になんか負けてない。もちろん優にも。
逆に言えば優は勉強や頭の働きは早いが運動の方はごく平凡だ。
「自分の進路くらい自分で決めたら?」
「そういうこと言わないでよ!ほらほら!クラス発表の見に行こう!?」
希美に無理やり手を引かれる。小走りになりながらも引っ張られるがまま移動していった。
「やった!同じクラスだよ!優ちゃん!」