第六話
少し早めですが第6話です。
どうぞ。
30分ほどの今後の行動を決める軍議が終了し、先輩の皆さんが会議場から退場した。
今、尚もこの場に残っているのは、新人である俺達4人と、だらしない格好をした青年とピシッとした副団長らしき男の2人。
そして、各中隊長を務める先程の金髪のお姉さんと天川大尉を含む、6人の精鋭メンバーだけだった。
ここに来るまで気に留めてなかったが、改めて6人の精鋭メンバーを見て、俺は驚いた。それは何故か。
全員が女性、しかもとびきりの美人だったからだ。
ここに来るまでの間に「美人が多い」と言っていた健太をことごとく論破してやった俺だったが、今なら健太の言葉に頷いてしまう。
だが、この人たちも内心では俺たちを笑っているのだ。そう思うと辛くてたまらない。
「じゃあみんな、新人達に各々自己紹介をしてくれ。」
副団長の言葉に、椅子に座っていた天川大尉を除く幹部メンバー5人が椅子から立ち上がった。
「じゃあ私からね。」
最初に名乗りをあげたのは、先程の金髪のお姉さんだった。
「私の名前は袴田楓。階級は大尉よ。よろしくね。可愛い坊や達。」
俺を除く3人は照れながらもそれぞれ「はい」だの「よろしくお願いします」だの返した。
袴田楓。教科書の情報が確かなら、光魔法を得意とする袴田中隊の隊長。戦闘力も去ることながら、状況判断能力にも長けているという。もしそうなら隊長としてこれ以上優れた人物はいないだろう。
袴田大尉がさがると、次に赤い髪をした気の強そうな女性が前に出た。
鮮やかなクリアレッドの瞳で俺たち4人をまじまじと見つめ、やがて目を細めるとドスの効いた声で言う。
「次はあたしだね。あたしの名前は浜崎茜。階級は中尉だ。言っとくがてめーらみたいなヒヨっ子と馴れ合うつもりはねぇ。あたしと対等に接したかったらそれなりの武勲を上げな。」
浜崎茜。銃の扱いを得意とする浜崎中隊の隊長。口調や態度は粗暴だが、業魔の討伐数は2万を軽く超えているという紛れも無い実力者。
「「「は、はい……。」」」
彼女の眼光に不覚にもビビってしまった俺、信司、悠斗の3人は俯きながら答えた。
だが、健太は違った。
「はい!よろしくお願いします!」
何故この眼光を向けられながらもそんな返事ができるのだろうか。その答えは彼の表情から読み取れた。
が、言わないでおこう。彼の尊厳を守るためでもある。
そして健太の返事と態度が予想外だったのか、浜崎中尉は興味深そうに健太を見つめ、何か言おうと口を開きかけた時―――
「ダメだよ茜。新人くんたち完全にビビってるじゃん。怖がらせてどうするのさ?」
そう言って後ろから声をかけたのは、アホ毛が2本飛び出した白髪ショートヘアの快活美女だった。
浜崎中尉はちっ、と舌打ちをすると黙って引き下がった。代わりにその快活美女が元気よく答える。
「始めまして新人君達!私の名前は相沢尊。階級は中尉だよ。よろしくね!」
相沢尊。風魔法を得意とする相沢中隊の隊長。型にはまらない自由奔放な戦いぶりが特徴的で、業魔の討伐数は3万を記録しているという。もし本当ならスーパーエースと言って相違ないだろう。
「(俺、タイプかもしれねぇ……)」
どっかの老け顔少年の声が聞こえた気がしたが、ここはあえて無視するとしよう。
次に名乗りを上げたのは茶髪をセミロングにした、おとなしそうな女性だった。
「……峰岸秋穂。階級は中尉……。」
そう言ったきり口を開こうとしなかった。
俺の情報が確かなら、目の前にいる峰岸秋穂は、土魔法を得意とする峰岸中隊の隊長という事になる。地面や地中の形状を操り、コンクリートや岩盤の壁などを生成する事が出来るという。おそらく「守り」に関しては彼女の右に出る者はいないのだろう。
「(こういうおしとやかな人って好きなんだよな……)」
今度はリーゼント頭の声が聞こえた気がしたが華麗にスルー。
そして幹部メンバーで最後に名乗りを上げたのは、なんと俺たちと大して代わらない年齢の女の子だった。
「なっ!?」
これには俺も驚いた。
青白い髪を後ろで結んだポニーテール。まだ幼さが残る可憐な顔立ち。
思わず目を奪われていた俺達を正気に戻したのは、目の前の女の子の可愛らしい声だった。
「始めまして、新人の皆さん。あたしの名前は青山桜花。年齢は多分あなた達と同じくらいだけど、あたしの階級は上級大尉ですから。そこの所よろしく。」
「「「(か、可愛い・・・)」」」
3人の思考は顔に出ていて、恐ろしく分かりやすかった。正直気持ち悪い。
だが、青山桜花なる人物は俺の記憶にはなかった。そもそも俺の記憶は、高等部の教科書に載っていたことを引用しているだけだ。
ということは、彼女は教科書に載っていなかったことになる。考えられる理由は2つ。
一つは情報統制がかかった事。もう一つは―――目立った活躍をしていないという事だ。
「(いやでもブレイブコート着てるし……実力は……あるんだよな?)」
俺の疑問は、副団長らしき人物が名乗りを上げた事でひとまず保留とされた。
彫刻刀で掘られたような顔立ちに、俺の一回り以上大きい体格。その外見に反しない低い声で男は言った。
「さて、次は俺だ。俺の名は紅井薫。階級は大佐だ。ここの副団長兼参謀を勤めている。改めてキミ達を歓迎しよう。」
「「「「はっ!!」」」」
紅井薫。第12独立魔術師団の副団長。業魔の討伐数や戦闘方法などは不明だが、実力者なのには変わりない。
そして最後に名乗りを上げたのがだらしない風貌の男だ。
今更ながらコイツが団長じゃありませんようにと願う。だが、その願いは叶わなかった。
「んで、俺が青山昇だ。ここの総団長をやっている。階級はコイツと同じ大佐だ。以後よろしく。」
青山昇。俺の記憶が間違っていなければ第12独立魔術師団の総団長だ。
世界でも数える程しかいないと言われている「戦女神」なる称号を与えられたうちの1人で、10万以上の業魔を倒しているという噂も聞く―――と、俺はそこである疑問に至った。
「ちょっと、待ってください?「青山」って事はひょっとして……。」
「気づいたわね。」
青山「上級大尉」が口を開く。
「そう。キミ達の目の前にいるアホ団長は私のお兄ちゃん。血の繋がった家族よ。」
「な、桜花!アホ団長とはなんだアホ団長とは!」
「事実じゃない?今回も遅刻してきたくせに。何してたのよバカ団長。」
「アホじゃなけりゃいいってもんじゃねえよ!ちょっと眠気覚ましにコーヒーをだなぁ……」
「アホ。」
「いや「団長」はつけよう!?アホでもせめて「団長」はつけよう!?」
やはり予想通り、目の前のアホ団長と青山上級大尉は実の兄妹だった。
もういっそのこと立場を逆転させちゃってもいいのではないかと思うのは俺だけじゃないはずだ。
妹に散々いびられて意気消沈している団長を放置しつつ、紅井大佐が言う。
「さて、自己紹介が終わった所で、キミ達に説明がある。」
首を傾げた俺達に、副団長はさらに続ける。
「今自己紹介したメンバーは、これからお世話になる―――かもしれない人間だ。かもしれないと言うのには理由があってね。キミ達にはこれからテストを行ってもらう。本来であれば、新入りのキミ達の階級は一番下の二等兵からだ。だ今回のテストは、そんな君たちが二等兵より上の階級からスタートできる最初で最後のチャンスだ。無論、難易度はものすごく高い。」
なるほど。と俺は思った。確かに今現在、業魔との戦線は人類側の有利には程遠い。
幸い、俺達は学校の成績を、トップで抜けてきたおかげで、学校側から補正がかかり、俺達は「学校が誇る逸材」と言う扱いになっている。
何も知らないで入ってくる兵士とは大違いだ。使い方次第じゃ即戦力にもなるかもしれない。
そんな淡い期待をしなければならないほど、戦場で人員が要されるのだろう。
ただまぁ、仮に実力が認められたとしても所詮新兵は新兵。
「(せいぜい一等兵か上等兵あたりが上限だろうな。)」
そんな俺の予想は、副団長の言葉で大きく覆った。
「成績次第では、最大で准尉にまでなれる。」
「「「「(准尉だと!?)」」」」
俺達は驚愕した。普通だったら俺達なんて使い捨ての兵隊程度のはずなのに、このテストに合格すれば、准士官にまでなれるのだ。
言ってしまえば幹部候補と言ってもいい。
その瞬間。俺たちの中で炎が燃え滾った。
やってやると。この試験、絶対合格してやると。
「キミ達の選択肢は2つ。無謀とも言える難易度を誇るテストに挑み、チャンスに賭けるか。それともそのチャンスを諦め、二等兵からスタートし、実績とキャリアを積み重ね強くなるか。さぁ、どっちを選ぶ?」
俺達は迷わず答えた。
「「「「その試験、受けさせてください!!」」」」
その言葉に、副団長は微笑んだ。
「ふっ……いい返事だ。それじゃ、試験内容を伝えるぞ。キミ達に貸す課題は1つだけだ。それは―――」
紅井大佐は背後にいる青山団長を指差した。
「そこのバカ団長、青山昇を倒すことだ。」
最近テストが近くなってきました。
更新状況が悪くなるおそれがありますのでご了承ください。
次回の投稿予定日は10月3日か4日を予定しています。




