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雷の戦女神(ヴァルキュリア)(凍結)  作者: yutaso
第一章 入団、魔術師団
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第五話

お待たせしました。第五話です。

どうぞ。

―――第12独立魔術師団本部。

円形の壁に沿って造られており、上から見れば、一般的なオムレツのような形をしている。

全体の約四分の二を占めている本部基地を中央に配置し、それぞれ両端に開いた残り四分の一のスペースに兵士の訓練場や、兵器の倉庫及び実験場。その他一部の航空機離発着用簡易基地などがそれぞれ配置してある。

広さにして約5万平方メートル。かつて日本に存在した東京ドームとほぼ変わらない広さだ。

俺達は今、天川大尉に連れられて本部基地の5階にある「会議場」に向かっている。

そこで待つ団長以下数名の幹部メンバーと顔合わせをするためだ。

基地のロビーを抜けて、大型エレベーターに乗り、5階で降りた後、灰色の壁をした廊下を歩く事3分。

「着いたわ。」

俺達は「会議場」と書かれた鋼鉄製のドアの前にたどり着いた。

「ここが……。」

「そう、会議場。もう中には全員いると思うわよ。」

俺は息を飲んだ。

この向こうには、業魔との戦いを生き延びてきた、真の戦士たちが集っているのだ。

緊張しているのは他の3人も同じで、信司はガチガチに固まってしまい、悠斗は深呼吸を繰り返し、健太は掌に「人」と書いて飲み込んでいる。

「さぁ、行きましょう。」

そう言って天川大尉はドアノブを捻った。



 

約70畳の縦幅が広い会議場には、天川大尉と同じく、ブレイブコートを着た幹部メンバーと思われる5人が会議場の先頭―――つまり一番前の椅子に座っている。

その後ろにその5人が隊長を務める中隊のメンバーが、それぞれ50人ずつ―――合計300人が勢ぞろいしていた。どの人も激戦を潜り抜けてきた猛者たちだ。

会議場の先頭に並べられた椅子は全部で6つ。そのうちの1つが空席になっている。

おそらく、天川大尉を含めて幹部メンバーは合計6人いるのだろう。

俺達が目の前の光景に呆気に取られていると、先頭に座っている5人の幹部メンバーの内の1人が、天川大尉に声をかけた。

天川大尉と同じく、ブレイブコートを着ている金髪碧眼の女性だ。

化粧なんて必要ない整った顔立ちに、天川大尉に引けを取らない抜群の体型。

全身からあふれ出る上品なオーラ。そしてなにより―――

「おかえり雫。」

まるで楽器のような美しい声音などなど、非の打ち所が無い美女だった。

「ただいま楓。」

よほど仲がいいのか下の名前で気軽に呼び合う。

「……後ろにいる彼らが噂の?」

その姿に思わず見とれていた俺を除く3人は、自分達に注意が向けられたことで我に返った。

「えぇ。今日から入ってきた新人たちよ。」

慌てた様子で敬礼をする3人。そんなこいつらに内心呆れながらも敬礼をする俺。

「あら、意外と可愛い子達じゃない。」

楓さんと言いましたか?あなたの美貌でこいつらにその言葉は禁句です。

そんな俺の思考を知ってか知らずか、顔を赤くしアタフタしている3人を放置して、楓さんは天川大尉に再び声をかけた。

「団長は?」

「まだ来てないみたい。」

それを聞くと、天川大尉は呆れたようにため息を漏らす。

「全く青山君は……いつまで経ってもこうなんだから。」

そして俺達に振り返ると天川大尉は、俺たちの斜め後ろを指差して言った。

「すぐ後ろに巨大モニターがあるでしょ?あなたたちはそのすぐそばに椅子があるからそこに座ってなさい。」

「「「「はい!」」」」

俺達は同時に返事をすると、モニターの傍にあったパイプ椅子に腰掛けた。

ざわざわとメンバー達のささやきが聞こえる。俺達の事を珍しがっているのだ。

無理も無いだろう。俺たちのいた学校で、実際に軍に志願できる権利を行使してここに入ってきた者は、過去3年の間で俺達が初めてなのだ。珍しいに違いない。

これから俺達は、この人たちの一部となって戦場へ赴くのだろう。

だが、そのメンバー達のささやきが一瞬で消えた。

俺達が入ってきた会議場のドアが開き、中から2人の男―――ブレイブコートを纏った幹部メンバーと思われる男性に、耳を引っ張られながら、だらしない格好の青年が入場してきたからだ。



―――3分前。青山昇は、休憩所で缶コーヒーを飲んでいた所を、副団長である親友に見つかり、そのまま耳を引っ張られて連行されていた。

「痛い痛い!耳!耳引っ張るなって薫!」

昇がそう言うと、ブレイブコートを見に纏った茶髪のオールバックが特徴の副団長―――紅井薫くれないかおるは、生まれつきの強面をさらに怖い顔にしながら叫んだ。

「うるせえ!お前のせいで会議が遅れてるんだよ!早く来いボケ!」

「分かった!分かったから耳!耳を引っ張るなって!」

乱暴に引っ張られたまま会議場まで連れてこられた彼は、部屋に入るや否や背中を思いっきり副団長に蹴られた。

「いって!」

前のめりに倒れそうになりながら、モニターの前にたどり着く。

会議場にいたメンバーの中からは、盛大に笑い声が響く。

それを見ながら、やれやれと言った様子でため息をつく副団長以下6名の幹部メンバー。

ふと、昇の視界に入ったのはモニターの横に座っていた4人の少年の姿だった。

4人の少年は困惑した表情で自分を見ている。特に右端に座っている金髪の少年からは失望にも似た表情が浮かべられている。


―――配属早々の新兵になめられてんじゃないわよ。


脳裏から響く女の声も、ちょっと不機嫌だ。

こりゃちょっとふんどしを締め直さなくてはならない。

昇は、姿勢を整えると、咳払いを一つしてから、口を開いた。

「いやぁ、すまんすまんみんな。ちょっと休憩所でコーヒー飲んでたらコイツに大目玉食らっちゃってさぁ。」

再び笑い声が響く。

「おかげで副団長様も「もう一人の俺」もご立腹だ。これ以上ふざけると後が怖いから、会議始めようか!めんどくせーけど我慢してくれみんな!」

合計で3回も笑い声が響いた会議場。いい加減副団長の顔がピクピク引き攣って来た所だ。

「じゃあ全員起立!」

その言葉にメンバー達は各々が座っていた椅子から立ち上がり、姿勢を整えた。

4人の新入りメンバー達もあわてた様子で立ち上がる。

「これより、第12独立魔術師団!第39回軍事会議を行う!総員!総団長に敬礼!!」

副団長の怒声にも近い号令で、メンバー全員が上るに敬礼をした。昇自身もそれに敬礼で返す。

5秒ほどの間を置いて敬礼が終了し、昇の合図で全員が席に座る。

「さて、早速会議を始めようか――――と言いたい所だが。まずは新人君を紹介しないとね。」

そう言って昇は新米兵士4人のほうへ振り向いた。




敬礼をしながらだが、俺は失望していた。

なんなんだこの適当な奴。

目の前の青年がだらしなく着崩している軍服の中には、黒い柄の入ったTシャツだけで、白ワイシャツや黒ネクタイは無い。

見たところブレイブコートも着ていないではないか。

本当にこんな人がここのリーダーなのか?

「さて。それでは今回第12独立魔術師団に入団した新たな仲間を紹介するとしよう。」

俺の思考は、目の前の適当な青年の声で遮られた。

「それじゃ新人くん4人は、各々前に出て自己紹介をお願いできるかな?」

俺たち4人はほぼシンクロして立ち上がると敬礼をビシッと決めた。

「「「「了解!!」」」」




俺たち4人は、モニターの前に連れてこられると、各々自己紹介するように促された。

まず最初に信司から。

「ほ、本日より、この部隊に配属されることとなりました!多村信司です!火炎系魔法を得意としています!よろしくお願いします!」

ガチガチに固まりながらも最後まで言い終えた信司に返って来たのは、先輩たちからの歓迎の拍手だった。

少々照れくさそうにモニターの前から退散する信司。それに続いて―――

「野上悠斗です!学校では氷結系魔法の専攻でした!よろしくお願いします!」

リーゼントヘアの悠斗。それから―――

「新井健太です。治癒系魔法の専攻でしたが、創造系魔法もかじっています。これからよろしくお願いします。」

黒縁眼鏡の健太と続き、ついに俺の出番となった。

俺は、兼ねてから言おうと思っていた台詞を脳内で反芻した。

「……よし!」

覚悟を決めモニターの前に立ち、俺は言った。

「北条誠です!電撃系魔法を得意としています!俺は……この軍服を纏って、誰よりも強くなって、この世界から業魔を一掃するのが夢です!」

それまで名前と、得意な魔法を挙げるだけの簡単な自己紹介だけだったのに、いきなり本格的な自己紹介をされて戸惑っているのか、みんな表情に驚きが出ている。

だが、それでも誰一人、俺の言葉に野次を飛ばさないでくれるのがありがたかった。

「しかし当然のことながら、今の俺は口ばっかりで、それを叶えるための実力は伴ってはいません。」

俺は一度言葉を切り、深呼吸をした。みんなは黙って聞いている。

「それでも俺は、気合と根性だけは誰にも負けない自信があります!強くなるためなら……命だって惜しくありません!これからお世話になる先輩の皆さん!どうかこの新参者に、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いします!!」

最後に大きく頭を下げて、俺の自己紹介は終了した。

そして流れたしばしの沈黙。

それを破ったのは―――だらしない青年からの拍手だった。


「いい覚悟だ。最高の自己紹介だよ。」


青年が発したその言葉を皮切りに、会議場のいたるところから、拍手と声が溢れた。

「いいぞガキんちょ!」

「なかなか根性あんじゃねーか!」

「困った事があればいつでも聞いてちょうだい!お姉さんなんでも教えちゃうから!」

そんな歓声を受けて、俺は不覚にも涙が出そうになった。

拍手はしばらく、止む事は無かった。


次の投稿予定日は10月1日です。お楽しみに。

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