第五十二話
お久しぶり!yutasoです!
長い間放置してて申し訳ありませんでした。
三ヶ月ぶりの戦女神。存分に楽しんでください。
青い髪がなびき、炎の砲弾が轟音を上げて迫る。
私はそれに雷撃をぶつける。
双方のエネルギーがぶつかり合い、爆発。
魔法の威力は相殺され、衝撃は相手を倒すには至らない。
そんな事を、どれだけ続けていたのだろう。
彼女―――青山桜花との撃ち合いは、どれだけの間続いたのだろう?
時間の感覚さえおかしくなりそうな緊張と、魔力が減り、疲労が溜まってきているのを知覚しながら、私はその瞬間を待ち続けた。
―――そして、それは前触れもなく訪れる。
「今だッ!」
桜花の火球を撃ち出す速度が滞った一瞬の隙を突き、私は炎の中を走った。
今の私の魔力量は、桜花と互角。
そして私は、先程までかなりの出力で電撃を撃ち出していた。
桜花の火球がその電撃をすべて相殺していたという事は、それぞれの攻撃手段による魔力の消費量もまた同じくらいだろう。
そこに付け入る隙がある。
私が戦闘開始直後、彼女から逃げ回っていたのに対し、桜花は最初から全力で攻撃をして来ていた。
そんな私達が同じ速度で同じ量の魔力を消費し続けていれば、どうなるか。
「(先にバテて魔法攻撃そのものに支障が出てくるのは、青山上級大尉!貴女の方ですよ!!)」
「コイツ……ッ!!」
こっちの狙いに気づいた桜花が攻撃方法を火球による投擲から火炎放射に変更したが、もう遅い。
私は放たれる火炎を屈んで躱し、一気に距離を詰める。
そして、
「(ごめんなさい!後でご飯奢りますから!!)」
心の中で精一杯土下座した後、
「おりゃあ!!」
桜花の顔を右の拳で思い切り殴った。
「ぶっ!?」
「ふん!はっ!やぁっ!」
その後、間髪入れずに拳を叩き込んでいく。
拳で何かを殴った経験が無いはずなのに、腰の入ったパンチを放てるのは、おそらくかつて男だった頃の私がやんちゃだったからだろう。
女になった今でも、その頃の記憶を体が覚えていたのだ。
物騒なことは嫌いだが、今だけは昔の自分に感謝だ。
「て、めェ……!!」
額に血管を浮かび上がらせながら、右手に火球を生み出す桜花。
「させないっ!」
私はそれを放たれる前に腹に前蹴りを放った。
「ぐっ!?」
鳩尾を蹴られた事で前のめりになった桜花の手からはみるみる内に火球が消滅する。
そして、
「せいやぁぁぁ!!」
無防備になった桜花の後頭部に、私は容赦なくかかと落としを決めた。
私に後頭部を蹴り抜かれた桜花は、ロクに受身も取れないまま地面に顔面を直撃させる。
誰から見てもトドメの一撃。事実、桜花は動かなくなった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
私は恐る恐る足をどけて数歩後ろに下がる。
「(やった……?)」
明確な確証こそ無いが、ここまでやれば私の勝ちという事で軍配が上がるだろう。
「(良かった、これでやっと……)」
この地獄から解放される。そう思って私が力を抜きかけた、その時。
「なぁに勝手に終わらせようとしてんだぁ?あぁ!?」
その顔を赤い鮮血で染めた桜花がゆらりと立ち上がると、鬼のような形相でこちらを睨みつける。
私はこの時ほどチビりそうになったことはない。
直後、
ズドン!!という爆発が私のすぐ足元で起きた。
遠隔で魔法陣を指定の場所に浮かび上がらせ爆破させたのだろう。
「きゃっ!?」
あまりにも強力な爆風の影響で、私の体はかなりの距離を吹き飛ばされる。
ロクに受身も取れないまま背中から地面に叩きつけられた私は、一時的に呼吸が出来なくなる。
「……、ぁがっ!げほっ!ごほっ!」
思わず咳き込む私に、桜花はその顔を残虐に歪め、一枚のカードを取り出す。
「よくもまぁここまで派手にやってくれたよなぁえぇ!?落とし前つけさせてやるよ!!」
魔力を流し、カードを反応させる。
カードから眩い光が発生し、ひとつの洋弓が生み出される。
それを左手に持ち替えると、桜花は右手に火球を生み出す。
「基本となるこの火球に魔力を集中……!」
その言葉の通り、桜花の手の中で赤い炎が徐々に青い炎へと変わっていく。
魔力により発生しているエネルギーを炎が取り込むことで、熱量が増している証拠だ。
「それを矢の形状へと変形!弾速を強化!」
再びその通りに、青い炎が矢の形状へとその姿を変える。
桜花はそれを洋弓に番えると、弦を引き絞り狙いを私へと向ける。
「今、この矢には私のほぼ全ての魔力が詰まっている!さっきの攻防で減ったとは言え、ここいら一帯を吹き飛ばすことなら簡単だ!」
「ッ!!貴女……団長と同じ事をするつもりですか!?」
「知った事かボケェ!!私はテメェをぶっ殺すことが出来りゃあそれでいいんだよぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!」
ゴオオオオオオオオ!!という大気が震えるような重低音が響く。
「(まずい!どうする?今の桜花さんは周りが見えていない!このままでは本当に……!)」
私が迷っている間にも、破壊の矢は放たれようとしている。
時間はない。こうしてる間にも、死へのカウントダウンは続いている。
「(どうすれば……!?)」
その時だった。
―――消えろ。
「え?」
私の脳裏に、声が聞こえた。
ノイズが走った、それでいてよく聞こえる声が。
―――その体は、俺のものだ。
「っ!?」
変化はすぐに現れた。
私の全身がまるで金縛りにあったかのように動かなくなったのだ。
「な、にが……?」
もはや呂律すら回らない。
じきに、視界が霞んでくる。
もはや前後の記憶さえ曖昧だ。
「(私、は……)」
「これで終わりだァァァああああああああああああああああああああ!!!」
誰かの声が聞こえる。
眼前から、赤い何かが迫る。
それが何か災いをもたらすものだと、分かる。
でも、どういった災いなのかが分からない。
「(わた、し、は……)」
結局、
私の意識はそのまま、闇へと沈んだ。
そして、ようやく「俺」は、自分の体を奪い返す事に成功する。
「!!!」
視界がクリアになる。
体も軽い。
自分の体を取り戻したと言う事に対する活力が沸く。
そして、それと比例して魔力も上がる。
「(行ける!!)」
俺がそう確信した時には、破壊の矢はすぐそこまで迫っていた。
時間はない。俺の脳が、その性能をフルに発揮するために高速で回転する。
術式、構成完了。
魔力巡回、良好。
発動座標、確定。
魔導シールド、展開!!
「うらぁっ!!」
破壊の矢は、俺が出現させた魔法陣の形状をした半透明のシールドに着弾。
圧倒的爆風と熱量を、その場に撒き散らす。
しかし、俺はそこで自らのミスを知る。
「んなっ……!!?」
結論から言えば、俺のシールドは爆風を至近距離で受けたにも関わらず、その威力を完全に防ぐ事に成功していた。
しかし、シールドに防がれるはずの炎は、シールドを透過してきたのだ。
俺のミスは唯一つ。
防御指定対象の設定ミス。
俺が設定したのは爆発による「威力」のみ。
つまりこのシールドは威力は殺せても純粋な熱量―――その殺人的火力を持つ炎までは、打ち消せないのだ。
俺は思った。
「(これは、死んだな)」
死。
俺は自分でも驚く程簡単に、その事実を受け止めた。
後悔はもちろん、無念だってある。
それでも、納得せざるを得ない。
そう思うほどの絶望だった。
「(短かったな、俺の人生……父さん、母さん、彩音。今から俺も行くよ。)」
俺は、目を瞑った。
だから気付かなかった。
自分の肉体が、生存本能に従って動いていた事に。
そして、
俺の右手が、極彩色の輝きを放っていた事に。
いつになるか分からないけど、俺は再び帰って来ます。
次回もお楽しみに!




