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雷の戦女神(ヴァルキュリア)(凍結)  作者: yutaso
第三章 発現、魔女化能力
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五十一話

最新話です。

久々にバトルを書きました。

私―――北条真子は窮地に追い込まれていた。

突然私を襲った魔力の不安定化。

それの治療の為に青山団長の指示の下リハビリを続け、やっとこさ復帰したのが四日前。

そして魔女化能力の暴走により幼女から元に戻れなくなった先輩を介抱する目的で八重樫先輩と仮の夫婦を演じ始めたのが3日前。

そして今日、魔力が安定したのを皮切りに始まった模擬戦。

ただ魔力が正常かどうかを判断する。

私が挑もうとしていたのは、ただそれだけの簡単な模擬戦だったはずだ。

それがなぜ―――




「オラオラいつまで逃げまどってンだ三下ァ!玉砕覚悟で突っ込んでこいっつゥのォォォォォ!!!!」

「なんでこんな命を賭けた戦闘になってんのよ!?」




もうワケが分からなかった。

模擬戦の相手である青山桜花上級大尉は、私よりも遥か上の立場にいる上司だ。

故に、彼女が普段どんな人間なのかを知る由などない。

だが、

「(それにしたってこんなトリガーハッピーだなんて聞いてないわよ!)」

しかも何か何処かで聞いたことあるような口調に変わってるし。

しかし、どれだけ嘆いても状況が覆る事はない。

ここまで来たらやるしかないのだ。

そう覚悟を決めたはいいものの、正直な話、

「(勝てる見込みがないんですけど……)」

私はここに来てまだ半年も経っていないピカピカのルーキー。

大して相手は数々の修羅場をくぐり抜けてきた文字通りの戦士。

いくら魔力によるアドバンテージが互角だからとは言え、戦法や経験によっては雲泥の差が出るのが戦いというものだ。

私は考えた。

この戦いで生き残る方法。

次々に襲い来る火球を避けしながら、必死に。

「(あの人の火球は威力は高いが数はそこまでじゃない。これなら……)」

そこで私は振り向き、


「私の電撃でも叩き落とせる!」


火球に狙いを定めて電撃を放った。

赤い炎の球体と青白い雷の光が触れ合った瞬間、巨大な爆発が起きた。

爆風の中から再び出てきた複数の火球に、もう一度電撃を浴びせる。

ビルの爆破解体のように、規則正しい順番で爆音と爆風が吹き荒れる。

「ッ!」

周囲が灰色の煙に閉ざされ、視界が奪われる。

私は周囲の砂鉄を磁力を操って動かし、砂鉄のムチを数本作り上げた。

これを不規則な軌道で振り回し、風を起こす事で煙を吹き飛ばす。

再び開けた視界に映っていたのは、意外そうな顔をする青山上級大尉の姿だった。

攻撃を仕掛けてこないのが不気味だったが、やるしかない。

「はッ!」

私は砂鉄のムチを巨大化させると、一斉に青山上級大尉めがけて振るった。

不規則な動きで放たれるムチ達は、獲物を見つけた蛇のように向かって行く。

しかし、


ドパッ!と。

砂鉄のムチ達は彼女に辿り着く前に彼女の火炎魔法で溶け、燃え尽きてしまう。


「金属に頼るようじゃ、私の火炎魔法は突破出来ねェなァ!!」

嘲笑うように叫び、青山上級大尉は自らの背後に数十発の火炎球を生み出す。

「ッ!」

私も素早く脳内で術式を組み立て、両手に集中させる。

女性としてのアドバンテージが活かされた強力なエネルギーが、私の手の平の中にあるのを感じる。

「へェ~?真っ向勝負って奴か。おもしれェ!」

彼女の背後の火球が、さらに増加する。

私の手の雷撃の出力もまた、それと比例するように高まっていく。

そして、お互いの気迫が最も充実した瞬間。

「おらァァァああああああああああああああああああああああ!!!」

「はァァァあああああああああああああああああああああああ!!!」

炎と雷。

熱を持つ二つの属性がぶつかり合い、光と音が世界を包む。











自分の妻と上司が、模擬戦を行っている。

その戦況を食入いるように見つめている先輩の皆以上に、彼は席の端で、その様子を固唾を飲んで見守っていた

何やら戦いが激化しているのが分かる。

彼は心配だった。

妻を攻撃するあの人は本気だ、このまま行けば本当に殺されるかもしれない。

鼓動が高鳴り、全身からは汗が流れ、膝は笑い、腕は震える。

極度の緊張が、彼を襲っていた。

その時、


「すー……すー……」


規則正しい寝息が彼の耳に滑り込んだ。

ふと視線を下げる。

するとそこには、自分の胸の中で安らかに眠る一人の幼い女の子がいた。

「すー……すー……」

こんな時でもぐっすり眠っている彼女を見た瞬間、彼の心はとても穏やかになった。

次第に激しい鼓動が収まり、震えも消える。

そうだ。

今ここで自分が出来るのは、彼女の身を守ること。

眼下で戦う我が妻に託されたこの子を保護する事だ。

今は、妻を信じて待つしかない。

割り切った彼は、その子の寝顔を食い入るように見つめる。

「すー……すー……」

彼女はかつて、彼の親友だった男。

そして、今の彼の愛する娘。

「……ふっ」

自然と笑みがこぼれる。

今まで、戦いしかしてこなかった自分が、まさかこんなに小さく、そしてこれほどまでに大きな幸せを得ることが出来ようとは。

しかし、これで良かったのだ。

今まで彼は、全てを犠牲に戦ってきた。

これは、神様がそんな彼に与えた褒美。

この幸せは彼の人生の、一つのゴールなのだ。

「(なぁ、望月よ……俺たちは最初から、こうなる運命だったのかもしれないな。今まで友情だったものが、愛へと変わっていくのを感じるよ。今、俺たちの運命は、父と娘という一つの形になった。)」

親友の父となる事を決意した彼の人生は、これからも続いていく。

いつか、彼女の父であった事を誇りに思いながら逝ける。

そんな人生が―――





「ちょっと待ちなさいコラーッッ!!」




スパコーン!とどこから取り出したのか分からないハリセンで叩かれた八重樫強志の頭部が小気味のいい音を立てる。

「いてっ」

その痛みと衝撃が、彼を感傷の海から引き摺り出す。

ふと頭を動かすと、そこにはハリセンを持った一人の女性がいた。

黒く艶やかな長い髪。

美人の部類に入る整った顔立ち。

ダークグリーンのジャケットの上から、黒い漆黒のコートを羽織るその姿は、間違いなく彼の部隊の隊長―――天川雫だった。

普段からすごい威圧感を漂わせるその目元がさらに釣り上がって、今彼女が激おこなのを強く実感させる。

彼は軽く首を振って頭の混乱を戻すと、何食わぬ顔で問う。

「いきなりどうしたんですか天川隊長?俺、何か悪い事でもしました?」

「さっきから何をブツブツブツブツ小言で呟いてるのよ貴方は!気持ち悪い!目を覚ましなさい!」

「何言ってるんですか、俺は正常ですよ」

言いながら彼は、優しい手つきで愛娘の頭をそっと撫でる。

「それに、あまり大きな声を出さないでください。ひなが起きちゃいます」

「ほら!ちっとも正常じゃないじゃない!何か憑き物が落ちたような顔してるもの!一つの戦争が終わった後の兵士みたいな顔してるもの!」

何をこの人はそんなに焦っているんだろう?

そんな素朴な疑問を抱きながら、彼は愛する娘を撫でる手を止めない。

「あ、そうだ。隊長、近々有給休暇を頂きますね。久しぶりに第2地区に帰って、この子を遊園地に連れて行ってあげたい。」

「言ってるそばから父親すんな!目を覚ましなさい八重樫強志!貴方は彼女の父親じゃないのよ!」

「真子とひながコーヒーカップに乗る姿を眺めて、ひなと着ぐるみのツーショット写真を撮って、俺とひなでお化け屋敷を巡って、最後は家族みんなで観覧車…………夢が、膨らみますよね。」

「この男!私の話を完璧に無視しつつ家族サービスの計画を練っている、だと!?」

彼の相当なスルースキルに、雫は驚愕する。

すると、彼の胸で眠っていた望月ひなが目を覚ます。

「あ……れ……?」

「ほら、隊長のせいで娘が起きちゃったじゃないですか」

「私のせい!?ってそうじゃない!ホントの貴方を思い出しなさいって言ってるの!」

「パパ。ママは?」

「うん?ママかい?ママは今、あそこで戦っているよ。」

彼の指が指し示す場所に目を向けるひな。

眼下では真子が、模擬戦の相手である青山上級大尉にかかと落としを振り抜いている所だった。

「わぁ、ママ強い!」

「そうだね。これは驚いた。でも、ひなの応援があれば、ママはもっと強くなれるよ」

「ホント!?分かった、私応援する!ママ~!頑張れ~!」

なんて微笑ましいやり取りをしている中、ついに敵の堪忍袋の緒が切れた。

青山上級大尉は武器召喚を用いて、一つの洋弓を召喚し、左手で握る。

右手に炎の矢を生み出し、弓に番える。

その様を見ていた副団長―――紅井薫が焦った顔で言う。

「まずい!あの馬鹿再びここを吹っ飛ばすつもりだ!」

「「「「「ッ!!?」」」」」

一同に緊張が走る。

「嘘だろ!?」

「兄妹揃って何やってんだろうね~」

「……兄妹の血」

「それはないと思うけど……いえ、あるの?」

「なんかもう取り返しがつかない気が……」

各々が様々な答えを出す。

そして、



破壊の矢が、放たれた。



すっかり不定期ですが、これからも応援よろしくお願いします。

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