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雷の戦女神(ヴァルキュリア)(凍結)  作者: yutaso
第三章 発現、魔女化能力
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五十話

お待たせしました、最新話です。

地下訓練場。

かつてあった地下闘技場をそのまま流用し、一部改装したそこは、かつて「幹部専用特別観客席」として機能していた天井の円盤型特等席もそのまま残っていた。

そこには幹部の皆をはじめ、北条真子ら育成学校組。そして八重樫強志と望月ひなのいわゆる「魔女化能力騒動」に直接関わった面々が集っていた。

ちなみに肝心の青山団長の姿はココにはない。

世の中には、知らなくていい事もあるのだ。

「やっぱりというか何と言うか、失敗しましたね。」

「うォォおおおおおおおおお…………ッッッ!」

「ぐすっ……」

真子は未だにぐずるひなをあやしながら呟き、強志は頭を抱えて蹲る。

本気で頭が痛いのだ。

なお、ひなの模擬戦時の記憶は催眠魔法を使って一時的に封印している。

トラウマを植え付けない為のせめてもの処置だ。

故に今のひなは戦闘時の記憶だけがなく、恐怖だけが残っている状態なのだ。

「全然ダメだったな。」

「やっぱそう簡単にはいかねぇか……」

副団長の薫と浜崎中隊の茜がどうしたものかと頭を捻る。

「もういっそこのままでいいんじゃな~い?なんか無理そうだし~」

「……可愛いから、許す」

「そんな殺生な事言わんでください!!」

ほぼ諦めかけてるというか我関せずといった感じで無責任なことを言う尊と世界共通の正義「可愛いから許す」を掲げる秋穂に、強志が涙を流しながら叫ぶ。

「誠……じゃない、真子さん?次があなたの番よ。」

ひなをあやしていた真子に、雫が声をかける。

「あ、はい。分かりました。」

頷いた真子は、自分の胸にしがみつくひなに優しく囁く。

「ひな、大丈夫?」

「……うん。」

「そっかそっか。じゃ、お母さんちょっと行ってくるね」

「え?どこか行くの?」

「大丈夫。すぐ戻ってくるから。」

ひなの脇の下を持って体を持ち上げて、床に立たせる真子。

すると、

「いい子にしてて待っててね。」

慈愛に満ちた表情でひなの頭を優しく撫でた。

「うん!」

すぐに機嫌を良くしたひなは元気良く頷く。

その姿を見た幹部メンバー達は、

「(おいおいおいおいおい……コレはマズイだろ)」

「(どこの新妻お母さんだよコイツ……)」

「(これもう収拾つかないんじゃな~い?)」

「(……ふつくしい)」

「(微笑ましいわね……あと娘かわいい)」

それぞれの―――しかし限りなく開き直った反応をしていた。ちなみに、

「(……)」

雫はそんな姿を毎日見せ付けられてるであろう強志に目を向けた。

会うたび会うたびに顔がやつれてきていた彼だったが、ここへ来て表情が死に始めていた。

「(そりゃ、そうなるわよね……)」

心の中で彼に同情しつつ、苦笑いを浮かべる雫であった。

「じゃ、あなた。ひなをお願いね」

「……………………………あぁ。」

「……ねぇ、大丈夫?」

「………………………………………………………大丈夫だ、問題ない。安心して行ってくるといい……」

「全く安心できないけど……行ってくるわね」

覇気のない声で応答する強志に不安を覚えながらも、真子は控え室へと向かった。

「……大丈夫?」

耐え兼ねた雫が心配の声をかけるも、

「しばらく……放っておいてください……。」

そんな言葉しか、帰ってこなかった。











リングに上がった私は、周囲の風景を眺めてふと3ヶ月前の事を思い出す。

ここに来たばかりの頃。

即戦力として加えてもらえるチャンスをもらった私達は4人がかりで青山団長に挑んだ。

どうやって戦ってたかはもう覚えてないけど、死にそうになりながらも合格をもぎ取ったのはいい思い出だ。

さて、さっきの場所に青山団長がいなかったのを見ると、私の相手はまたあの人なのだろうか?

4人がかりでさえ結局は倒せなかったあの人を相手に、私はどう立ち回ればいいんだろう?

そんなことを考えていた私の前に現れたのは、







「どーせ、団長が来ると思ったんでしょ?残念、正解は妹よ」

「お、桜花さん!?」








胸元に猛者の証である「ライオンエンブレム」刺繍入りの「ブレイブコート」を制服の上から羽織、、うなじのあたりで青い髪を結んだその少女―――青山桜花上級大尉は、私の反応を見るなり眉間に皺を寄せた。


「悪いけど気安く呼ばないでくれる?お兄ちゃ……青山団長とかのせいでいろいろと勘違いしてるみたいだけど、私たちはあくまで軍人よ。そして私は上官。少しは立場を弁えたら?」

「す、すいません……」


真っ向から正論をぶつけられた私は反射的に謝るしかなかった。

なんやかんやで幹部メンバーと接する機会の多かった私は、根本的な所で弛んでいたらしい。

そういったものを引き締めるつもりで、私が―――


「青山上級大尉!今日は、よろしくお願いします!」


頭を深々と下げてそう言った直後だった。




「ねぇ、頭を下げてる(・・・・・・)余裕なんてあるの(・・・・・・・・)?」



その言葉が耳朶を打った瞬間、これ以上ない本能的危機を全身で感じた私は、すぐさま行動を取った。

頭の中で反射にも近い速度で術式を組み、電撃魔法を発動。自分の真横に放電した。

放たれた高圧電流は空気を瞬間的に加熱、膨張させて空気爆発を引き起こし、その風圧は私の体を真横に吹き飛ばす。

直後、




ゴバッッッッッッ!!!!と。

巨大な火球が地面を抉り、焼き焦がしながら私の真横を通り過ぎた。




あれに焼かれていればどうなるかといういらない想像を振り払って、眼前の敵に集中する。

そんな敵は私にこう言った。


「貴女ってとことんナメてるのね。入団したての頃はまともな奴だと思ってたけど、失望したわ」


呆れたように彼女はつぶやく。

彼女の得意とする属性とは裏腹に、どこまでも冷ややかな口調で。


「模擬戦だから命までは取られないと思った?致命傷を避けるようにしてくれるとか思った?甘ったれてんじゃないわよクソ野郎。テメェはこの3ヶ月。戦場で何を賭けて業魔と闘ってたんだ?あぁ?」


ヒートアップするにつれて乱れる口調を直そうともしないで彼女は続ける。


「闘争の本質ってのは自分(テメェ)の命を賭けた殺し合いだ。模擬戦だろうが実戦だろうが本気(ガチ)()らなきゃ意味なんかねぇんだよ。」


その口調が、仕草が、どんどん女の子から離れていく。

そして、顔が歪む。

整った美しい顔立ちが、狂気じみた笑顔に変わっていく。


「だからさぁ……」


その変貌ぶりに怯えることしかできなかった私は、再び本能的恐怖に体をこわばらせた。

彼女の開かれた両手にそれぞれ一つの火球があった。

それを天高く振り上げ、彼女は私に最後の言葉を投げかけた。




「せいぜい足掻いてみやがれよぉ三下ルゥゥゥキィィィィィィィ!!!!!」




恐怖が迫る。

















「……えっ?」

青山上級大尉の変貌を見た俺―――八重樫強志はここ数日における精神的ストレスも半ば忘れて、唖然とするしかなかった。

開いた口が塞がらないとはこの事だろう。

「あーあ、始まったよ。あいつの悪い癖が。」

となりで呟く副団長に問う。

「どういう、事ですか?」

「ん?そうか、お前は知らないんだったな。彼女は戦闘になると興奮して性格が豹変するんだ。」

なるほど、と納得しかかった脳に慌ててストップをかける。

「ちょっと待ってください?それはいろんな意味でまずくないですか?」

「あぁ、下手をすれば……北条くんは死ぬ。」

とんでもない発言に言葉が出ない俺。

「……ママ?」

俺の腕の中で、眼下の戦いを見るひなの声だけが、俺の脳裏に響いた。


すぐに投稿するかもですし、また時間を開けるかもしれません。

気長に待っていていただけると嬉しいです

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