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雷の戦女神(ヴァルキュリア)(凍結)  作者: yutaso
第三章 発現、魔女化能力
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四十七話

史上初、二日連続投稿。

こんな事は滅多にありません(もう一度バイト落っこちたらあるかも)。

やぁ、こんにちは諸君。八重樫強志だ。

さて、早速で悪いのだが俺は2016年7月27日現在、窮地に立たされている。

結論から言わせてもらおう。



「ふふふっ、ひなちゃんの髪ってサラサラで気持ちいいね~」

「あははははっ、やだよママぁ~くすぐったいよぉ~」




誠 と 望 月 が 壊 れ た 。




今のこの状況だけでは、諸君らは理解できないと思う。当然だ。情報が不足しているからな。

だから、ここからは俺が語り部として、ここまで至ってしまった経緯を少しずつだが説明していきたいと思っている。

不束者で申し訳ないが、よろしく頼む。












あれからもう、2年になるのか。

そう、あれは今から2年前の2014年の4月。

第12独立魔術師団が発足して間もない頃、エリア12に住む魔術師たちは魔術連合国家政府直々の命令によって、一斉にある検査を受けさせられていた。

「魔術検査」と呼ばれるそれは、表向きはちょっとしたテストのある健康診断だったが、政府の真の狙いは、第12独立魔術師団に戦力として見込みのある魔術師達を選別するというものだった。

結果、その検査で「優秀」と評価された魔術師達は、老若男女問わず、こぞって第0地区に移住させられていた。

当時15歳だった俺は肉体強化魔法、望月はその魔女化能力を高く評価され、第12独立魔術師団の天川中隊(当時は大隊)に入隊した。

しかし、望月はその魔女化能力が仇となってしまう。

第12独立魔術師団は、発足当時はまだ戦女神の力に覚醒していないものの、若き頃から「神童」と謳われ、魔術連合国家でも一目置かれていた青山昇が、若干18歳にして団長を勤めていた。

そんな彼が定めた規則の中に、かつてこういう一文があった。


入団試験で合格し、ある特定の条件を満たした魔女化能力者を「適合者」とし、この「適合者」は必ず団長本人が監督を務める特殊検査を受ける事。


青山団長は当時から「戦女神」という新たな戦力に強い関心を持っており、独自で研究を進めていた。

そこで、新部隊を発足するにあたり、戦女神になれる可能性を秘めている魔女化能力者を選抜し、同じく魔女化能力者である青山団長自らが検査をする事でより可能性を近づけよう、と言うものだった。

しかしながら、戦女神の覚醒した例は当時の過去を遡ってみても片手の指で足りる程度しかなく、その規則には確実性がなかった。

しかし、青山昇団長は基本的スペックこそ恥さらしと言わざるを得ないが、そんな確実性のない規則を設けるほど馬鹿ではない。

本来ならこんな規則が存在していた事自体おかしいのだ。

しかし、それはあくまで青山「昇」の場合に過ぎない。

この規則の制定には、確実に青山「焔」の糸が絡んでいるであろうことは、諸君らの目にも明らかであろう。

今思えば、あの時から青山焔の悪癖は始まっていたのかもしれない。

そして、望月はその「適合者」として選抜され、試験という名目で青山焔と一対一で軽く対話をしたそうだ。

それ以降。



俺は一ヶ月間。望月といかなる手段を以てしても接触することが出来なかった。



勘の良い諸君らならもうお分かり頂けただろう。

そう。これは今から3日前の2016年7月24日の北条誠とほぼ同じパターンなのだ。

望月は1ヶ月もの間、それこそ北条にしていた事と同じかそれ以上のことを強いてきたのだろう。

一ヶ月後、帰ってきたのは俺の知る望月拓哉ではなく、


俺の事を「お兄ちゃん」と呼ぶ、「望月ひな」という一人の幼い女の子だった。


俺はショックだったし、何よりその後が一番辛かった。

元に戻そうにも人格はおろか記憶さえも改ざんされていた当時の彼に、速効性のある治療は無理だった。

だから俺は、彼女の「お兄ちゃん」として彼女と接し、彼女に「昔話」という形で望月拓哉の話を毎日のように語って聞かせた。

そうした努力もあって1ヶ月と2週間後。

ついに、望月は帰ってくる事が出来たのだ。

当時の俺は泣いて喜んだ。ただの幼女となり果ててしまった腐れ縁の友人に「お兄ちゃん」と呼ばれ続ける苦しみから、解放されたのだから。

しかし、この出来事は望月の心に、トラウマとして深い傷跡を残す事になる。



そして時は進み、3日前。2016年の7月27日。

あの北条真子の姿とあの日記を見てしまった事により、望月の中で封印されていた忌々しい過去が心の闇となって蘇り、拓哉の人格を呑み込んでしまった。

結果、団長室で語りかけていた俺の前に、


「あ、つよしお兄ちゃんだ!!」


彼女、望月ひなが帰ってきたのだ。










「あ、そうだ。ひなちゃん。ママと一緒にお風呂入ろ?」

「え?いいの!?」

「うん。たまには、ね。」

「やったー!おっ風呂!おっ風呂!」











と、望月の話が一段落着いたところで、北条誠の話もするとしよう。


あの団長室での一件の後、俺と誠。そして望月の3人には、特別休暇が与えられた。

精神面で疲労が溜まっているであろう誠と、「ひな」になってしまった望月の面倒を見るように、と。

誠にはとりあえず、今、諸君らに話したことは全て話した。

最後まで真剣に話を聞いてくれた誠に、俺は思わず弱音をこぼしてしまった。

今の俺に、もう一度彼女の面倒を見れる自信はない、と。

すると誠は、俺の手を取って強く、それでいてどこか優しくこう言ってくれた。


大丈夫ですよ八重樫先輩。俺がついてます。今度は二人で乗り切りましょう。と。


俺は誠の見せてくれた優しさに感動した。

普段は降魔に対する復讐心で躍起になっている彼だが、根は心優しい少年なのだと言うのを知った。

誠は自分には勿体無いくらいのよく出来た後輩だ。

俺は思った。あの辛かった時期も、誠とならもう一度乗り越えられると。

だが、俺の抱いていたものは所詮幻想であった事を、俺はすぐに思い知る事となったのだ。


それはつまり、発作的な「北条真子」の再発。


前触れもなく突然起きるそれは、俺を混乱させるには十分だった。

しかも、真子として活動している間の記憶は一切なく、誠に戻ったときは、全く覚えていないと言う。

初日は一日に一回だけだと思っていた。

事実、その翌日は一度も発作を起こしていない。

しかし、事件は二日目に起きた。

ひなが、無邪気な笑みを浮かべてこう言ったのだ。


「なんか家族みたいだね!つよしお兄ちゃんがパパで、まこお姉ちゃんがママなの!」


ひながこれを言う直前までの誠が、今現在で俺が確認している「北条誠」の最後の姿だ。

それからはもう、北条真子が前面に出てきてしまい、誠の影は完全に潜めてしまっていた。

そして、ひなが彼女を「ママ」と呼ぶたびに、真子に笑顔が増え、目に輝きが宿り始めたのだ。

俺の勝手な憶測ではあるが、あれは「北条真子」という作られた人格に、精神が順応し始めてしまったのではないか、と俺は考えている。

こんな事になるくらいなら、目に輝きがないままの方がマシだった。

そう思っていた俺に、更なる追い討ちをかける出来事が起こる。

最初、誠も真子も俺の事を「八重樫先輩」と呼んでいた。

しかし、それは日が移るごとに「八重樫さん」「強志さん」と、どんどん変化していき、


いつしか彼女は、俺をこう呼ぶようになった。


「“あなた”。ひなをお風呂に連れて行くわね。」

「あ、あぁ……行ってらっしゃい……。」


俺の返答を聞き真子は、ひなをバスルームへと連れて行った。

愛娘に慈愛の目を向ける真子と、最愛の母とお風呂に入れる事に無邪気に喜ぶひな。

微笑ましいその光景は、俺の目から見ても間違いなく母と娘だ。

そして俺は、そんな家族を守り、支える一家の大黒柱。

つまり、真子の夫であり、ひなの父親であることを



「強いられているんだ!!」



……すまない。いきなり怒鳴ってしまった。

だが理解して欲しい。これが、今の俺を取り巻く現状だ。

別に同情してくれとは言わない。理解さえしてくれればそれでいい。俺もそれだけで十分救われる。

だが俺は正直、どうしたらいいのか分からない。

当然、俺は一児の父親ではないし、ましてや彼女がいた事すらない。

願わくば、これを読んでくれている諸君らにも知恵を貸して欲しい所だが、そういうわけにも行かない。

だから俺は、戦う。

不器用な俺は、戦う事しか出来ない。

だから俺は、誠と望月が戻ってくるその時を信じて、ただ耐えて、耐えて、耐え忍ぶという形で、この状況と戦いたいと思っている。




諸君。今日はありがとう。

語り部という事だったが、途中から俺の愚痴話になってしまったな。申し訳ない。

俺はここで失礼するとしよう。



それでは諸君。

また会う日まで、さらばだ。

いかがでしたでしょうか?

次回の投稿は例の如く活動報告で。

今後、作者のバイトの面接が成功するよう祈るのか、失敗するよう祈るのか。

それは皆様が判断してください。

それではまた次回。

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