四十五話
一ヶ月ぶりの最新話です。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
「さぁ、紹介するわ!北条真子ちゃんよ!!」
「皆さんお久しぶり!いや、この名前だとはじめましてだね。北条真子で~す!」
焔が満面の笑みで真子を紹介し、真子も笑顔で皆に手を振る。
しかし、この場にいる人間は、彼女たちを除いて、状況の処理が追いついておらず、呆けた顔をしていた。
「あれれ?どうしたんですか皆さん?そんなポカンとしちゃって?」
少女が、首を傾げる。
そんな真子の動作で、いち早く正気に戻った雫が、変わり果ててしまった部下に問い掛ける。
「まこ、と……くん……?」
すると少女は困ったように、
「やだなぁ~、隊長。真子ですってば真子!新しい名前を名乗ったばかりじゃないですか?」
そして、皆が状況の処理を終え、現実に帰還した瞬間。
「「「「「「「いや、北条真子って誰だァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」
絶叫が団長室に木霊し、その後、皆は次々と口を開いた。
「おい焔!これは一体どういう事だ!?」
「そうよ!完全に元の人格が影も形もなくなってるじゃない!」
驚きと焦りで、声が大きくなっている薫と桜花。
「よく見たら目も死んじゃってるしね~」
「……洗脳?」
間延びした声は相変わらずだが、完全に顔が引きつっている尊と、ボソッと一番ありがちなワードをこぼす秋穂。
「ねぇ雫……誠くん、どうしちゃったの!?」
「こ、こっちが聞きたいわよ!なんで、何であんな……」
恐怖に顔を青ざめさせている楓と、動揺と混乱でそれ以上言葉が出ない雫。
少なくとも、いい反応では決してない。
そして、雫はあることに思い立った。
「はっ、そうか!八重樫くんと望月くんの様子がおかしかったのは、この日記を見たせいで―――」
「やめろぉ!!」
そう叫んだのは、八重樫強志本人だった。
その後、すぐに頭を下げ、
「……申し訳ありません。ですが、その日記に関してはもう、触れないでください……。」
「のじゃ……のじゃ……のじゃあ……」
とても辛そうに謝罪の言葉を述べた。
なお、拓哉―――この場合は望月ちゃん―――に至っては、体育座りのまま「のじゃ」を一定の間隔でボソボソとつぶやいている。
もう、彼女のライフポイントはゼロなのかもしれない。
と、ここで。
「「「誠!!」」」
今まで黙っていた真子の同期―――多村、野上、新井の3人が、彼女の前に立ちはだかる。
「あぁ、みんな!久しぶり。元気してた?」
彼らを前にしても全く変わらない真子の態度に、3人は各々口を開いた。
「なぁ誠。一体何がどうしたんだよ!?」
「何でこんな……身も心も女になっちまって!」
「目を覚ましてよ誠!君はそんな事よりも、戦う事の方が本分じゃあないか!!」
すると、一定の間隔をあけた後、真子の口からとんでもない一言が漏れた。
「身も心も女って……何言ってるの?私は元から女じゃん」
「「「え?」」」
3人は思わず聞き返した。
彼がいま何と言ったのか、分からなかったからだ。
「今、なんて……?」
「だーかーら。私は最初から女だったでしょ?って話。」
信じられない現象に目眩がするのに耐え、彼らは必死に声を搾り出す。
「う、そ……」
「嘘もなにも、今までなんだと思ってたの?」
「いや、だってお前……お、男だったじゃねーか!」
「ちょ、まさか今まで男だと思ってたわけ!?そ、そりゃ確かに女にしては髪も男の子に近かったし……む、胸だってそんな無かったけど、でも、それでも男だと思われてたなんて!?」
「だから!!誠!君は正真正銘の男だったんだって!!」
「それだよ!女の子なのに「誠」って名前だったからそう思われちゃってたんだ!はぁ~、新しい名前にして良かった。だからみんなもこれからは「真子」って呼んでね?」
ダメだ、取り付く島もない。
そう感じた3人の心は、早くも折れ始める。
そして、もうとっくに心が折れている望月ちゃんが光の宿っていない虚ろな目をしながらゆらりと立ち上がり、
「もう、消すしか……」
などとうわ言のようにつぶやいた直後。両手から氷の外部骨格が出現した。
「っ!?ダメだ望月!気をしっかり持て!!」
すぐさま望月をガクガクと揺さぶる強志。
その光景を見た隊長格の皆は戦慄した。
「(な、なんて奴だ……人格どころか記憶さえも改ざんするだなんて……!)」
「(お姉ちゃん……こんな事って……)」
「(これはねぇだろ…………うん、ねぇよ)」
「(こればっかりはさすがの私も引いちゃうなぁ~……)」
「(……ドン引き)」
「(ひどい……ひどすぎる……!)」
そんな中、ただ一人。
「(なんとしても、誠くんを目覚めさせる!!)」
天川雫だけは、行動に出た。
同じ過ちを二度と繰り返さないために。
雫は真子の両肩をしっかりと掴むと、真剣な眼差しで彼女を見つめた。
「へっ!?た、隊長?どうしたんですか?そんな怖い目して……」
真子の素っ頓狂な声を無視し、雫は冷静に。しかし強く、語りかけるように行った。
「いい?貴方の名前は北条誠。一人の立派な男性兵士よ。今、貴方が自分を女性だと思い込んでいるのは「後天性魔女化能力」の突発的な発現による身体、精神面での混乱に乗じて、そこにいる青山焔団長が「保護観察」と偽って行った洗脳のせいなの。もう一度、よく思い出して。貴方がここに来た理由を。」
「私が……ここに来た理由……。」
詰め寄られて、真子は考える。
自分が、ここに来た理由。それはつまり、
「それは……業魔を、倒すためです。」
「だったら、こんな所で油売っていていいのかしら?」
「えっ……?」
「1週間前の貴方はこんな所で女の子してないで、暇があれば訓練してるようなそんな人だったけど?」
「……。」
戸惑う真子に、雫は希望を見出した。
今の真子は、男だった時との矛盾がいくつか存在している。
そこを指摘し、男だった頃の記憶を掘り起こす事が出来れば、勝機はある。
「(これで行ける!)」
雫はそう信じて、真子に更に追い討ちをかける。
「養成学校時代。貴方は誰と同じ班だった?」
「そ、それは……そこにいる信司達と……」
「それはおかしな話ね。養成学校は部屋割りはおろか座学から実技までのカリキュラムが男女きっちり分けられてるって聞いたことあるけど?」
「っ!そ、それは……」
先天的に魔力の高い女性と、魔力の低い男性で同じカリキュラムを組めば、まず男性はついていけない。
そのため魔術師養成学校は授業は愚かクラスまでもが男子と女子に分けられており、男女が一堂に会する事になるのは、実技授業の時のみなのである。
「つまり、貴方は男だった。じゃなかったら、中等部で彼らと同じ釜の飯を食べて来たあなたの記憶は偽物ってことになる。」
「っ……。」
さらに何も言えなくなる真子に、雫は内心で「その瞬間」を今か今かと待つ。
「(彼女が「それ」を言った瞬間、彼の中にいる誠くんが目を覚ますはず……!)」
はたして、その時は来た。
「た、確かに私は元は男だったのかもしれない……でも、私はこの魔女化能力を手に入れ、女として生まれ変わったんです!魔力上限の高いこの体なら【男だった頃の私なんか】よりも強くなれたはずです!」
その言葉の直後だった。
「うっ……ぐぅ……ぅああああっ!?」
真子が突然、頭を抱えて叫び始めたのだ。
「っ!?誠!」
「おい誠!」
「大丈夫か誠!?」
突然何かに悶え苦しんでいる真子に、信司、悠斗、健太の3人はすぐさま駆け寄る。
「(来た……!!)」
雫はそんな真子よりも、彼女の中にある誠の記憶が呼び起こされたという確信を得ていた。
「(今彼女は「男だった頃の自分」を下に見た!それはつまり「今まで頑張ってきた自分を否定した」のと同じ!!)」
そして、それは正しかった。
「(な、何……!?頭の中に、何かが流れ込んでくる……!)」
それは「北条誠」という、自分とよく似た境遇の少年の記憶だった。
2012年5月13日。
地球上を覆い尽くした謎の自然現象である「漆黒の入道雲」と共に復活した業魔達によって、両親と妹を殺され、逃げるように日本を去ったその少年。
「日本国連合」の居住区に移り住んだ彼は業魔への復讐を誓い、魔術師養成学校に入学した。業魔を倒すための力を鍛えるためだ。
しかし、そこで見せつけられたのは女尊男卑の現実だった。
事実、学校内でも男は女に媚を売り、女は男をまるで奴隷のように扱ってきた。
男の教師は女子生徒には頭が上がらないし、女性教師の期限を損ねればすぐに停学・退学などの処分を受けるなど日常茶飯事だった。
男たちはその現実をあるがまま受け入れ、女達の奴隷となりながら、学園生活を送っていた。
たった4人の少年達を除いて。
「っ、うぅぅぅっ!!」
少年達は女子達に逆らった。
女子達の自らを見下しきった態度と、それに従い媚を売る男達が気に食わなかったからだ。
だが、女子たちにとってそれは格好の「的」だった。
女子たちは、彼らが突っかかる度にその圧倒的実力でねじ伏せ、実技試験ではボロ雑巾のようになるまでしごき、放課後には、完全下校時刻まで徹底的にいじめ抜いた。
肉体的にも精神的にも疲弊させ、屈服させるのが目的だった。
「あぅ、うぅぅぅああああっ!!」
しかし、少年達は屈しなかった。
彼女たちに受けた屈辱の数々を胸に刻み、あの上から目線の女王様達にいつか目にもの見せてやると、座学、実技共に人一倍励んだ。
そして彼らはやがて、魔術師養成学校の同期全員(当然女子を含め)を座学、実技を含めた総合成績のベスト4を、一位を北条誠。その後ろに新井健太、多村信司、野上悠斗の順で総ナメにし、彼らは4人揃って中等部を首席で卒業した。
そして、卒業の日に北条誠は、自分たちをいじめていた女子たちに向かって、こう告げた。
『これが、テメーらが見下していた男の底力だ。あまり男を、ナメるんじゃねぇ。』
「うわあああああああああああああああああああっ!!!」
団長室に、真子の絶叫が木霊し―――
「はっ!?……お、俺は……今まで何を……?」
一人の少年が、帰ってきた。
「漆黒の入道雲」
業魔復活の際に世界中で同時多発的に発生し、地球上を覆い尽くした巨大な入道雲。
通常の雲と違うのは、遠くから見ても真下から仰ぎ見ても漆黒に見えることである。
業魔に占領されている地域や、業魔の巣の上空には、この雲が常に発生しており、立ち入り禁止区域に指定されている。
はい、完全に後付けですwww
ただ、あくまで「占領されている所だけ」なので、進行した来た業魔に関してはその比じゃありません。
そんなこんなでこの最新話の為に近々第二話を修正します。
ご了承ください。
あと、途中あった「同じ過ちを~」の所は完全に伏線です。
次回の投稿予定は活動報告でお知らせします。
それだはまた次回!(なるべく遅くならないようにはしますが、期待はしないで下さい)




