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雷の戦女神(ヴァルキュリア)(凍結)  作者: yutaso
第三章 発現、魔女化能力
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四十話

お待たせいたしました。40話です。

誠は一体どうなってしまったのか?

そんなことは置いといて今回は信司くんがメインです。

信司くんの言っていた「あの人」が出てきます。

「本日の稽古は終了します。隊長に、礼!!」

「「「「「ありがとうございましたーっ!!!」」」」」

礼に始まり、礼に終わる。

それが、今も昔も剣道の作法って奴だ。

最も、俺―――多村信司が、つい先程まで地下にある屋内訓練場(元闘技場)で行っていたのは、スポーツとしての剣道ではないが。

その証拠に、後片付けや着替えを始めた先輩の皆さんの紺色の剣道着に付着している赤い汚れは、いつまでも落ちる気配がない。

まぁ、それは俺の剣道着も同じか。

「おう信司。ご苦労様。」

俺の名を、高いソプラノ声が呼んだ。

声のした方を振り向けば、スポーツドリンクの入ったペットボトルを差し出しながら、笑みを浮かべている一人の少女の姿があった。

少女と言っても年齢は俺より2つ年上だし、この場合はお姉さんと呼ぶべきか。

「あ、先輩。お疲れ様です。」

「ほら、やるよ。」

「すいません、いただきます。」

セミショートの黒髪に整った顔の中でも特に目立つ釣り目が、見る者に勝気な印象を与える。

おそらく、もし世界が平和なら高校のバレーボール部でキャプテンを務め、女の子からラブレターをもらう感じの正統派ボーイッシュガールだ。

だが、この人は女性じゃない。 

俺に声をかけてきたこの人物の名は、小林こばやし修一しゅういち

名前から分かる通り、立派な男性だ。しかし、今の彼は明らかに女子の姿をしている。

答えは明白。小林先輩は魔女化能力者なのだ。

彼のタイプは「人格統合型」とよばれるポピュラーなもの。

つまり、男だろうが女だろうが人格は一つ。一番分かりやすく、法的問題も起こりにくいタイプだ。

しかし、俺がこうして剣道着の胸元から見え隠れする肌色で柔らかそうな母性の象徴をガン見すると―――


「いやっ!?何見てるのよ信司くんのエッチ!!」


バキッ!と。

俺の脳天を木刀の一撃がクリティカルヒットした。

「ぶべらっ!?」

なす術なくぶっ倒れる俺。

「あぁ、すまん!大丈夫か!?」

後から心配する小林先輩。

と、このように。

小林先輩が魔女化している際にこう言った視姦行為やセクハラ発言などなど、とにかく「女」を意識させる言動や行動を起こしたり、そういった環境に放り込むと、思考や価値観などが女性に変化する特徴があるのだ。

これはこれでなかなか面白いが、やりすぎれば命に関わるので注意が必要だ。

「だ、大丈夫っす。むしろすんません」

「いや、こっちもすまないな。気を付けてはいるんだがどうしても、なぁ……」

「そんなことよりさっさと着替えて食堂で夕飯にしましょう。俺もう腹減ってやってられませんよ」

「あぁ、それもそうだな。」

目的が決まった俺たちは、ロッカールームへと向かった。





あの「初陣」から2ヶ月と数週間あまり。

俺の体は数え切れないほどの打ち身、捻挫、肉離れ、切り傷、そして骨折を経験した。

理由は唯一つ。相沢中隊が採用した独自訓練法。

その名も「実戦式剣術戦闘訓練」のせいである。

この訓練は、スポーツとして現代に復活した剣道を、より実戦に特化させ、業魔の討伐につなげるべく、防具類などを一切付けず、実戦での打ち合いをひたすら続けるという訓練法である。

要するに「小手先の技なんて戦場じゃ通用しねぇからとりあえずお前ら木刀で殴り合えよ。何なら真剣使う?」と言う事だ。

うちの中隊は医療魔法が使える人も多いから大丈夫だよ~♪なんて隊長に言われて安心したあの日の俺の頭蓋を木刀で叩き割ってやりたい。

そりゃ確かに、実際に訓練中に怪我をした時は医療班が治療してくれる。

だが、あの時も今も、俺は自信を持って言える。

「理屈じゃない」と。




最初折ったのは確か肋骨だったか。

痛いなんてもんじゃなかった。

かつて、かなり厳しかった親父から剣道を叩き込まれた俺は、痛みや辛いのには我慢が効く方だと思っていたがとんでもない。

よくアニメや映画で「くっ……肋骨の二,三本は持って行かれたか……」とか冷静に言った後平気な顔して戦ってる奴とか普通にいるが、あいつらは普通の人間じゃない(断言)。

実際に肋骨を骨折した方ならわかると思うが、本当に折れていたらあの時の俺のように


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!いてぇ!!いてぇよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


と泣き叫びながらのたうちまわったことだろうと思う。とてもじゃないが正気など保っていられない。

またまた~アバラ折れたくらいで大げさだよ信司く~ん♪なんて言うあの時の隊長は、頭がどうかしてると本当に思った。




だが、そんな地獄を二ヶ月続けるとあら不思議。

あれだけ痛かった骨折も、それほど気にならなくなってしまうのだ。

最初こそ子供のように泣き喚いていた俺が、今となっては


「ぐっ……アバラやられた……腕上がんねぇ……」


くらいなのだから、人間の適応力の高さには驚くべきものを感じる。

そして、そうした痛みに慣れてくると、今度は医療班が治癒魔法を意図的に不完全にしてくるのだ。

これは、隊員の怪我の治りをあえて不完全な状態にすることで、人間が本来持つ自然治癒力を高めるという目的がある。

無論、真剣での訓練はそうはいかない。真剣での斬り合いは、斬撃の直撃が高確率で死に直結するからだ。

真剣での訓練の場合は、少なくとも治癒魔法がBランク以上で使用できる魔術師が5人、審判が3人必要とされている。

また、首、頭、心臓など、一撃で絶命させる箇所の攻撃は禁止。

そして原則として、一撃でも先に攻撃の入ったほうが勝者となる。

まぁ、人を殺すのを本来の目的としている武器で斬り合うのだ。それぐらいは当然だろう。

そんなこんなでタフさと自然治癒力が飛躍的に高まったわけだが、その分古傷も増えるわけで、俺の全身には結構な数の傷跡が残っていた。

「しっかし、信司も古傷が多くなってきたな。一人前の剣士っぽいぞ。」

「っぽいって何ですかっぽい―――」

冗談交じりに言ってきた小林先輩に、俺は軽口で返そうと彼の方を向いた。

「ってええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!?」

「ん?何だどうした?」

不思議そうに首をかしげる小林先輩。

ここで、現在の状況、及び場所を説明しよう。

まずここは地下訓練場に設置された大型ロッカールーム。シャワーも完備している優れものだ。

当然だがロッカールームは二つある。無論、男性用と女性用だ。

俺と先輩が会話している所から、ここが男性用ロッカールームであることが分かると思う。

そして、今の小林先輩は……



その男子ロッカールームで、俺だけじゃなく他の男性メンバーがいるこの場所で、魔女化状態のまま堂々と剣道着と袴を脱ぎ去り、慣れた手つきでブラジャーに手をかけようとしていた。



「どどどどどどどどどどどどどうしたじゃなくて先輩!何を堂々と着替えを開始してんですか!!」

「はぁ?だってここ男子用だろ?」

「hey!そんなあなたにquestion!あんたの今の姿は男子と女子!一体どっちでしょうか!?」

言われて気付いたのか、小林先輩がゆっくりと下を向き今、自分がやろうとしていた事を悟る。

今更ながら周囲を見回し、男子隊員たちの顔色を窺う。

男子たちの中である者は顔を赤くしながらそっぽを向き、ある者は「やれやれだぜ」と首を振り、またある者は鼻の下を伸ばしていた。

「あ、ぁ……」

瞬間、彼―――いや彼女の顔が耳の先端まで茹でダコのように真っ赤になり、小刻みにプルプルと震え始めた。

ゆっくりと俺の方を向いた先輩の目元には、あまりの恥ずかしさからなのか、涙が溜まっていた。

「い、い、い……!!」

「あ、あの……小林先輩?」

嫌な予感が駆け抜けた俺は、すかさず両手を挙げ、降参の意を示そうとするが、もう遅い。

「いやぁあああああああああああああああっ!!?」

「いや今回俺悪くないよねぶごぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」


結局。


小林先輩の可愛い女の子の小ぶりな拳が放つ、殺人的威力を孕んだその一撃をまともに喰らった俺は、壁にめり込む事になってしまったのだった。




なお、壁にめり込んでいる間、俺が新たな扉を開きかけたのはまた別のお話。

小林君のネタ設定は自力で考えました。

「TSモノでありそうでなかった」を目指した一つの形です。

次回もお楽しみに


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