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雷の戦女神(ヴァルキュリア)(凍結)  作者: yutaso
第三章 発現、魔女化能力
45/61

三十九話

お待たせいたしました、三十九話です。

今回はちょっと短めです。どうぞ!


追記 追加で編集したので短くないです。

「はぁ……」

自室での待機処分を言い渡された俺は、自分のベットに横になっていた。

別に退屈じゃないと言えば嘘になるが、今の姿であまり表には出歩きたくはない。

「……」

俺が魔女化能力者になったと言う噂は、間もなく部隊中に知れ渡るだろう。

別にそれが嫌なわけじゃない。むしろここの人達は魔女化能力者に対しては、ある程度の理解をしてくれるはずだ。

ただ、単純に、俺がこの姿で外をうろつきたくないだけだ。

たとえ害意や悪意が無くても、好奇の視線に晒されるのが嫌なのだ。

「俺……どうなるんだろうな……」

本日何度目かわからない不安を口に出してみる。

しかし、俺の鼓膜を叩くのは俺であって俺じゃない、可愛い女の子の声。

そのどうしようもない事実が、俺に計り知れない脱力感を与えてくる。

このまま惰眠を貪ろうと思い始めた、その時。

ピンポーン、と。来客を告げる電子音がインターホンから流れ出た。

「ん……?」 

同部屋である先輩二名は現在勤務中のため、この部屋には俺しかいない。

逆に言えば、今の時間帯だと、皆が皆勤務中であるはずなので、ここのインターフォンが鳴るわけがない。

……明らかに嫌な予感がするが流石に無視するわけにも行かない。

そう思った俺は、ベットから起き上がってインターホンの画面を確認した。

「(……焔さん?)」

画面に映っていたのは、ここの団長である青山昇のもう一つの姿、青山焔だった。

通話ボタンを押す。

「青山団長……?どうなさったんですか?」 

『あぁ、誠くん?とりあえず開けて。』

「はい」

通話ボタンをもう一度押して、通話を切ってから、俺は玄関まで移動し、ドアを開けた。

ドアの向こうにいた焔さんは、何やら上機嫌な様子だった。

「どうしたんですか?」

「実は、あなたの今後について話が決まったの。申し訳ないけど私に付いてきてくれない?あぁ、格好はそのままでいいから。」

「は、はぁ……」

この時の俺は、特に疑いもせず、貴重品だけを持って言われるがまま焔さんについて行った。









これが、悪夢の始まりだというのに。









俺が連れてこられたのは、本部基地の上階にある団長室―――の隣にある青山昇及び焔さんの自室だった。

「さっ、入って入って!」

「お邪魔しまーす。」

内装は20畳程の広い部屋で、右手にバスルームとトイレ。左手に洋室。廊下の奥に居間とキッチンがある所から、1LDKであることが分かる。

さすがは団長室。基本的に1Kで3人部屋でも13畳程しかない兵舎村の住居とはエライ違いだ。

焔に言われるがままついて来た俺は、とりあえず居間にあるダイニングチェアに座らされた。

「今、お茶出すから」

「あ、いいですよそんな。団長にそんなことさせる訳には―――」

「いいのいいの細かいことは。大人しく待ってて。」

「はい……なんか、すいません」

程なくしてテーブルには、暑い夏にはぴったりなアイスティーの注がれたグラスが置かれた。

いただきます、と宣言してからアイスティーを一気に喉に流し込んむ。

ほのかな甘みと香り、そしてキンキンに冷えた紅茶ののど越しが、暑さで苦しんでいた俺の体を心地よくクールダウンさせてくれる。

「っはぁ!あ~美味しいですね。」

「そう?そう言ってもらえると嬉しいわ。」

クスクスと笑う焔さん。

だが、そんな平和な空気はいつまでも続かなかった。

焔さんは顔を引き締め、俺の正面に座る。

「さてと。今回誠くんをここに呼び出したのにはちゃんとした理由があるの。」

「理由、ですか?」

「うん。単刀直入に言うわね。」

焔さんはひと呼吸開けて、俺にこんな事を言った。




「今日からあなたにはしばらく、ここで生活してもらうわ。」




「……え?いや、ちょっと待ってください。」

唐突のことで頭が真っ白になった俺だが、数秒で持ち直した。

要は焔さんは、今日からここで私と一緒に暮らせ、と言っているのだ。

だが、そんなこといきなり言われても困る。モノには順序があるのだ。

「……理由って聞いてもいいんですかね?」

「えぇ、いいわよ。」

焔さんはそう言うと、俺に理由を話し始めた。

「あなたの身に起きているその症状は、後天的に発現した魔女化能力だと見て間違いないわ。」

「やっぱり……」

薄々、いや、それにはほぼ確信を持っていたのだが、これがまだ悪い夢の続きなのだろうと、どこかで淡い幻想にでも浸っていたのかもしれない。

「そこで貴方に一つ朗報があるの。」

「朗報、ですか?」

今のこの絶望しかない状況のどこに希望があるのか?



「あなた……もしかしたら戦女神ヴァルキュリアになれるかもしれないの」

「っ!!?」



俺は体中に稲妻が走ったかのような衝撃を受けた。

戦女神。

そう、忘れもしない今から約2ヶ月前のウズベキスタン基地攻防戦。

そこに突如として現れた大規模災害型個体「ヤマタノオロチ」型を、あっという間に屠ってみせた伝説の戦士。

俺が、あの英雄と同じ土俵に立つ事が出来るかもしれない。

そう考えただけで、俺の体をビリビリとした興奮が包み込む。

「ところで誠くん。貴方、魔女化能力者についてはどれくらい知ってる?」

「え?えーっと……教科書で見たくらいですかね?」

「って言うと?」

「えーと……人によっては女の人格が生まれたり生まれなかったり、とか?」

「まぁ、それが主流よね。他にも男の時はおネェ、女の時は俺っ娘とか、興奮すると女が出てくるとか、いろいろあるの。」

「へぇー……」

俺もここの魔女化能力者の皆さんとはそれなりに接してきたが、それは知らなかった。

「で、戦女神になれる魔女化能力者は、男と女。双方の人格を持っている人じゃないとダメなの。」

なるほど、と言いかけた口に、俺の脳が慌ててストップをかけた。

何かが引っかかる。

「え?ちょっと待ってください?」

俺は今までの会話を思い出し、要約し、その真相を探る。

「じゃあ……俺の中に女の人格が生まれないと、ダメって事ですか?」

「そういう事になるわね」

今までの興奮から一点、俺の中には嫌悪感が渦巻き始めた。

何度も言っている事だが、俺は女という生き物はあまり好きじゃない。

昔から、魔力を持つのは女性だけとされてきた。

故に、男でも魔力を持つ事が出来る今でも、俺たちの社会では(昔ほどではないにしろ)女尊男卑が当たり前になっている。

そんな社会のせいなのか、元々女がそういう生き物なのかは知らないが、俺は魔術師育成学校の中等部にいた頃、女のそう言った嫌な所をさんざん見てきた。

いつか見返してやる。

俺たちのことを上から見下ろしているお前らなんかに、俺は絶対に負けない。

日々、そう思いながら修練に励む内に、いつの間にかトップの成績を取っていた、と言うのが本当の所だ。

だから、俺の中にそんなドロドロしたものが生まれるとなると、正直な話すごく遠慮願いたい。

だが、それを乗り越えなければ戦女神にはなれない。

俺の心が、激しい葛藤に苛まれる―――事はなかった。

「あ、言い忘れてたけど、この話、誠くんに拒否権はないわ。これはもう決定事項なの」

「はァ!?」

俺は思わず椅子から立ち上がった。

「なんでですか!?」

「なんでって……決まったんだからしょうがないじゃない。」

「そんな理不尽な……!」

「仕方ないでしょ?後天的魔女化能力者が生まれたケースなんて初めてなんだから、ここは団長である私が、厳重な管理体制の下、私が面倒見ることになったの。」

俺は、涼しい顔をしてアイスティーを口に運ぶ焔さんに、これ以上詰め寄れなかった。

確かに、言い分は正しい。

だが、そこに俺の意思が入っていない所は如何なものか。

「安心しなさいよ。別に取って食おうってわけじゃないんだから。」

そう言う焔さんだったが、俺の胸中にある不安は拭えない。

「(俺……これからどうなっちまうんだ……?)」

答えてくれる奴は、いなかった。





「はい、と言うわけでまずは、ここで暮らすための準備をします!!」

新しいおもちゃを手に入れた様子の焔は、目をキラキラ輝かせると、誠を強引に自分の自室へと引きずり込んだ。

「(うわぁ……)」

誠が連れ込まれたのは、ファンシーなぬいぐるみやら小物やらがあちこちに置かれた可愛らしい装いの部屋だった。

「(俺、女子の「カワイイ」の感覚はよく分からんが……これがカワイイって言うのか?今時の女子ってこんな感じなのか?)」

根拠の無い情報を刷り込まれている誠。

「そんなとこに立ってないで!ホラホラ!」

焔に急かされて、クッションに正座する誠。

改めて女の子の部屋を見回す。

慣れない空間のせいかいつも以上にソワソワしてしまう誠。

「♪~」

焔はそんな誠を置いといて、何やらタンスの中を鼻歌交じりにあさり始めた。

「あ、あの……?」

未だ不安感がぬぐいきれない誠は、焔に問う。

「なあに?」

「ここで暮らすための準備って……何するんですか?」

「まぁ、正確には「これからの君に必要なもの」かな?」

そう言って焔が取り出したのは……



面積の小さい独特の形をした2枚の布―――女性用の下着だった。



瞬間、嫌な予感が雷光の速さで全身を駆け抜けた誠は、半ば本能的に部屋の出入り口を目指した。

右手を限界まで伸ばし、ドアノブを掴む。

しかし、

「(あ、開かない……!!?)」

「無駄だよ?その部屋のドアは既に内部の鍵を熱して変形させちゃってるから絶対に開かないの。」

誠に、逃げ場は残されていなかった。

「や、やめ……!」

「いいねいいね~その怯えて涙目の表情は最高にそそられるわ~♪」

そう言いながらまるで蛇のように舌なめずりをする焔。

恐怖のあまり今にもちびりそうな誠。

両者の姿はまさに「蛇に睨まれた蛙」そのものであった。


「でも安心して?私がすぐに女の子として覚醒させてあげるから♪」

「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」



団長室から響いた悲鳴を最後に、



北条誠は、一切の消息を絶った。

次回もお楽しみに!



追記 最新文字データを追記入力しました。4月27日

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