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雷の戦女神(ヴァルキュリア)(凍結)  作者: yutaso
第三章 発現、魔女化能力
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三十五話

第三章スタート!

トルクメニスタン。

それは、中央アジア南西部に位置する共和制国家。

「カラクム砂漠」と呼ばれる砂漠が国土の85%を占めており、国民のほとんどは南部の山沿いの都市に住んでいる。

豊富な石油や天然ガスを埋蔵しており、それらは魔術連合国家群の大切な資源の一つとなっている。

そんなトルクメニスタンの砂漠地帯の中央に、「ダルヴァザ」という一つの村がある。

「テケ族」と呼ばれる人達が住んでいたそこは、


2016年7月16日現在、業魔と魔術師団の兵士が戦う戦場と化していた。






民家が焼け、少なからず犠牲になった村人たちの骸が転がるダルヴァザ村で、一人の少年が業魔を次々と打ち倒していた。

ダークグリーンのスラックスと黒の軍靴。袖をまくった白いワイシャツという出で立ちの少年は、金色の髪を揺らしながら、ためらわずに業魔の群れに突っ込む。

「「「キェアアアアアア!!」」」

猿型の個体10体が、誠に飛び掛るのと

「うおおおおおおおッ!」

少年―――北条誠の雄叫びが迸るのが同時だった。

直後、バチバチバチィ!!と青白いスパークが弾け、100万ボルトの電撃が猿型全てに襲いかかった。

圧倒的熱量と衝撃を受けた猿型たちは、体細胞が死滅した事により、黒焦げた屍となって地面に転がる。

しかし、その程度で止まるほど業魔は弱くない。

黒焦げの屍を越えて、新たな個体が次々と襲いかかってくる。

「オラァ!!」

向かってくる個体の内一体を拳で殴り飛ばし、背後から迫ってきた個体に蹴りを叩き込む。

どうしてもカバーできないところは砂鉄を操って切り刻み、遠方にいる鳥型の個体共は電撃を浴びせて撃ち落とす。

「(よしっ!)」

誠は心なしか、いつもより電撃魔法の発動が、円滑に行えるようになってきていた。

男性には少ない量しかないはずの魔力も、今日だけは二倍に増えたような気がする。

「(今日の俺は調子がいいぜ!)」

やがて猿型が全滅し、次に襲いかかってきたのは1体のサイ型だった。

鋭い角を前に突き出し、誠の胴部を貫かんと突進してくる。

誠は一瞬、自分の右手に意識を向けた。

それは、自らが持つ奥の手。ありとあらゆる物体や物質を、望んだモノへと変貌させる、究極の右手。

「(物体変化魔法……行けるか!?)」

右手に魔力を集中。

すぐに誠の右手の甲に極彩色の魔法陣が浮かび上がる。

周囲にあった砂鉄を電撃魔法の磁力を使ってを集め、鉄剣を作るべく右手で砂鉄に触れる。

その時だった。



ガクン!と。

頭の回るスピードが極端に低下した。



「っ!?」

その事実に驚愕しながらも、脳内で術式を組み上げていく。

しかし、なかなか術式が組み上がらない。

術式の行使に必要なレシピを間違えたり、術式を並べる順番を間違えたりと、普段なら絶対にしないミスを繰り返す。

そして、やっとの思いで鉄剣が完成した。

所要時間は2秒。

いつもなら一秒とかからずに出来る作業であるはずなのに、大幅なタイムロスをしてしまった。

それは当然、サイ型に対する対応が遅れることを意味する。

既に彼我の距離は、10メートルにまで迫っていた。

「ッ!!」

考えている余裕はない。

誠は咄嗟に鉄剣を左手に持ち替えた。

残り7メートル。

鉄剣を逆手で握り、右手の掌を鉄剣の柄尻に添える。

残り4メートル。

タイミングをしっかりと見計らい、誠は鉄剣を前に突き出した。

直後、ドスッ!とサイ型の額に鉄剣の切っ先が突き刺さり、


「うおおおおおおおおおおおっ!!」


鉄剣を伝導体にして、高圧電流がサイ型の全身を駆け巡った。

すぐに肉が焦げるこびりつくような臭いが、誠の鼻腔を刺激する。

赤い瞳から命の光が消え、サイ型だった肉塊が黒い煙を上げながら横に倒れる。

「はぁ…はぁ…」

鉄剣を引き抜き、息を整える誠。

目の前には未だ、大量の業魔。

「考えるのは後だな……!!」

自分に言い聞かせるようにそう呟いた誠は、鉄剣を握り直し、再び業魔に立ち向かっていった。






7月16日の午後3時頃。

トルクメニスタン北部より、業魔の出現を確認。

これに対し、第12独立魔術師団は「天川中隊」を現場に派遣。業魔の殲滅任務を行った。

天川中隊が業魔を補足した時、業魔たちはトルクメニスタン中央部にある「ダルヴァザ」村に進行していた。

今回の業魔の総数は、推定約1000体程。

先の「ウズベキスタン基地攻防戦」と比べれば安いものだろうが、ダルヴァザに住んでいた村人達から、少なからず犠牲を出してしまった。


今回の戦闘における第12独立魔術師団の死傷者数

天川中隊  死者0名 負傷者12名


今回の戦闘における民間人の死者、行方不明者数

26名







午後9時。

俺は、先輩2人と過ごしている部屋のシャワールームにいた。

理由は当然、汗を流すためだ。

先程、無事に帰還した俺達を襲ってきたのは、食堂から漂う悪魔的な匂い。

瞬間、俺たち3人の胃袋が一斉に悲鳴を上げた為、食堂でたらふく料理を頬張った。

大浴場に行こうとも考えたが、食堂からだとかなり距離がある為、部屋に備え付けられたシャワールームですますことにした。

蛇口をひねり、頭に熱い湯をかぶりながら、ふと今までの出来事を軽く思い出す。





俺、北条誠が第12独立魔術師団に入団して、実に3ヶ月の時が過ぎた。

初陣である「ウズベキスタン基地攻防戦」で出鼻を挫かれた俺たち新兵だったが、その後の戦闘で次々と討伐数を伸ばしていった。

信司は怪我が治ってからと言うものの、毎日のように剣の鍛錬に励み、その実力を飛躍的に向上させていって、今では相沢中隊内でもそこそこ名が通っている。

ただ、かつて大浴場で話していた「小林」なる人物には、未だに勝ち星を上げられていないという。

悠斗の方は相変わらずで、障壁を張るのに苦労しているようだが、単純な練習時間だけなら俺たち3人を軽く超えているだろう。その努力は、隊長の峯岸中尉も認めてくれているようだ。

健太は「ウズベキスタン基地攻防戦」以来、人が変わったように強くなった。

訓練の成績はここ3ヶ月間、浜崎中隊内でトップを維持し、入団3ヶ月にして遊撃隊の隊長に任命されている。

とはいえ、普段の態度や仕草は今までと何も変わっていない。

最も変わったのは、戦場に出た時だ。

浜崎中隊の中で、一人だけ軍用ゴーグルをつけ、業魔を完膚なきまでに虐殺するその姿に、当時の俺は恐怖した。

そして俺、北条誠も(自分で言うのもなんだが)かなりの戦果を上げている。

実戦のコツを掴んだ俺は、今までの戦い方から一転、無駄のないストイックな戦闘スタイルを確立することに成功した。

魔力で劣っている男性が、どうやって戦場で生き残るか?

その一つの到達点としてたどり着いたのが、余分な魔力を極力出さないという事だった。

現に、これを実行してからというものの、俺は冗談のように戦績を伸ばし、このままいけば准尉に進級出来るかもしれないと言われた時は、それはそれは嬉しかった。

と、ここで俺は先程の戦闘での違和感に思い立った。

「(あの時頭の動きが鈍ったのは何だったんだ?)」

そう、サイ型を目の前にし、鉄剣を作り出そうとした時に感じたあの違和感。

あれの正体が未だにわかっていない。

「(そう考えたら今日の電撃魔法の精度だっておかしいんじゃないのか?)」

次に思い立ったのが、電撃魔法の精度の向上。

あの時は気分が高揚して、何も考えていなかったが、今思えば明らかにおかしい。

何故ならあの時、本当に魔力の上限が増加していたからだ。

物体変化魔法が思うように使えなくなっている反面、電撃魔法の性能が向上している。

「(どうなってやがんだ……?)」

これが一体何を意味するのか、俺には理解できなかった。







シャワールームから出た誠を待っていたのは、何やら話しているスウェット姿の先輩達二人だった。

「おー、上がったか。」

「はい。ところで、何を話していたんですか?」

「ん?あぁ……最近の業魔の異常発生の背景について議論していたんだ。」

強志が世界地図を広げながら、さらに続けた。

「先のウズベキスタンでのヤマタノオロチ復活を皮切りに、ここ最近業魔の出現数が異様に増えている。」

「それはどこの国も同じだろ?」

「いや、どうもそうじゃないらしいんだ。」

「え?」

思わず問い返したに拓哉、強志はこう補足する。

「隊長に聞いた話だと、大規模災害型が復活してから俺たちのいるこのあたりがかなりの出現率になっているらしい。」

「そういえば、初めてヤマタノオロチ型が出現したアジア東部は今でも業魔の出現が絶えないそうですね。」

「あぁ。おそらく大規模災害型が出現した地域は、業魔が湧きやすくなるのかもな。」

「まぁ、何はともあれ」と、拓哉が最後にこう結論を出した。

「人類が勝利するのはまだまだ先の話だな……」

「えぇ、そうですね……」

と、誠が同意の声を上げたとき、強志がふとこんなことを言った。



「北条。そういえばお前、髪伸びたか?」



「え?」

思わず首を傾げる誠。

「3ヶ月も経てば髪なんて嫌でも伸びるだろ?それに誠は元から男にしては髪長めだったじゃん」

しかし、拓哉のその意見には、矛盾が生じる。

「俺、先月に切ったばかりなんですけど……」

「マジで?」

先月の中頃、ついに髪がうっとおしくなった彼は、第0地区にある散髪屋に足を運んで、短くしてもらっていたのだ。

自分はそこまで髪が伸びるのが早かっただろうか?

頭にクエスチョンマークを浮かべた誠だったが、強志はやがてこう言って片付けた。

「まぁ、特に気にする事でもないか。」

「そうですね。」

結局この話は、気にする程でもないという結論に至った。

「さて、じゃあもう寝ようぜ?」

「あぁ、今日はどっと疲れた。」

「そうですね、明日また頑張りましょう。」

誠も寝巻きに着替え、その日は早々に眠りについた。





そう、これから自分の身に何が起こるかも知らぬまま……

次回の投稿予定日は3月14日、15日を予定してます。

お楽しみに!

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