表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雷の戦女神(ヴァルキュリア)(凍結)  作者: yutaso
第二章 初陣、ウズベキスタン基地攻防戦
36/61

三十一話

予定が一日遅れました。yutasoです。

今回は迷惑をおかけしてごめんなさい。

それではどうぞ

その時。

先ほどの爆発で負傷した峯岸秋穂の弟―――峯岸大貴に肩を貸しながら、生存者を探していた野上悠斗は、ろらに流れる赤い光の尾を見て思わずこぼした。

「なんだ、あれ……?」


その時。

砕けた愛剣を握り締めたまま、多村信司は空を見上げた。

「赤い光……」


その時。

仰向けで倒れていた浜崎茜は、上空を滑空する紅蓮の流星を見ると、

「おせぇんだよ、バカ……」

満足したように意識を手放した。


その時。

破壊された装甲車に寄りかかりながら、化物の前に赤い光が落ちたのを見た相沢尊は、

「やっと来たんだ……」

やれやれといった様子でため息を吐いた


その時。

化物の前に立った一人の戦士を見て、

「どうやら、俺たちはまだ生き残れるらしい。」

八重樫強志は得物である戦棍を杖代わりにしながら立ち上がり、

「相変わらず美味しいタイミングでやってくるのが得意じゃのう。」

望月拓哉は、魔女化能力によって幼くなった体を無理やり起こし、

「信じてたわ……」

天川雫は目尻に涙を浮かべながら、戦士に自分の気持ちを呟く。



「お待たせ、北条誠くん?それにみんなも。」



「青山……団長?」

誠は目の前の光景を受け入れるのに時間がかかった。

疲れきった脳が、もはや満足に演算処理をしてくれない。

そんな誠の事情を知ってか知らずか

「しっかし驚いたわ。本会議中にヤマタノオロチ型が復活したって言うもんだから。会議をおじさまになすりつけてやって来ちゃった。」

舌を出して可愛くウインクしてみせる焔。

今頃、会議場では土産の酒を買い込んでホッコリしていた釜谷頑獣郎がアタフタしている事だろう。

「さぁて、と」

焔は周囲を見回す。

「ずいぶんとまぁ、私の部下を可愛がってくれたじゃない?」

彼女の視界に映ったのは、完全に壊滅したウズベキスタン基地と、ズタボロになった兵士たちの姿だった。

皆が皆憔悴しきっており、中には生きてるのか死んでるのかすら分からない者までいた。

「覚悟は出来てるんでしょうね?」

そう言った直後、焔の全身が謎の発光現象を引き起こした。

色は白。それは徐々に強さを増していく。

「そういえば、誠くんたちには見せてなかったわね。」

目を開けるのも難しい程の光の中で、もはや全身の輪郭がぼやけ始めた焔が、口を開く。

「刮目しなさい、これが戦女神ヴァルキュリアよ!」

瞬間、


ドン!!!!!!!と巨大な光の柱が、天空を突き抜けた。



光が収まり、視覚の復活した誠の視界の中央にいたのは、相変わらず青山団長だ。

しかし、外見が昇とも焔とも違う。

身長は昇と焔の中間といった感じだ。

羽織っていた漆黒のレザーコートの両肩には、海軍の司令官のような肩パットが付き、両手には黒のレザーグローブが嵌められており、その甲には白い魔法陣が刻まれている。

アップスタイルを維持していた後頭部のゴムは完全に解かれ、長い髪が背中まで届いている。

先程まで明るい青色をしていた髪の色は、美しさと神々しさを兼ね備えた白を帯びた青色になっている。

目元には、今までの飄々としたものや慈愛に満ちたものはなく、代わりにどこまでも鋭く、そして攻撃的な雰囲気が漂っている。

「これがわたしの本当の姿だ。」

発せられた声は、誠の鼓膜を振動させ、彼の脳に「凛としたハリのある透き通った声」として認識される。

その姿に、誠はいもしない全知全能の神を垣間見た。

直後、

「キシェアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

突如現れた新たな敵を排除すべく、ヤマタノオロチ型が動いた。

八つの首すべてが「青山団長」めがけて全長5メートル以上の火球を放つ。

それらは青山団長に向かう過程で融合し、約40メートルという巨大なモノとなって、二人に襲い掛かる。

しかし、放たれた火球は、ゴバッ!!と青山団長に当たる前に消滅する。

青山団長が化物に向けてかざした左手に触れた瞬間に、全て。

「魔術連合国家軍の総司令部から「炎王えんおう」と呼ばれたこのわたしに向かって火球攻撃なんてしたら……防がれるのは当たり前でしょ?」

含み笑いすら浮かべながら、彼女は化物に向き直った。

「さてと、本物の火球攻撃を教えてあげる。」

そういった彼女の左手に、ソフトボール大の小さな火球が生み出された。

「火球はね、デカけりゃいいってもんじゃないの。」

手のひらにある火の玉を軽く弄びながら続ける。

「お前の火球なんて、せいぜい1発あたり摂氏1300度が限界ってところかしら?」

そこまで言った青山団長は、左手を引き絞ると、まるで車のキーを投げ渡すように軽く放った。

それだけで手の平にあった火球は、誠の肉眼では視認できないスピードで加速し、


ゴバンッ!!と首の一つを跡形もなく消し飛ばした。


「こんな風に小さな火球でも、摂氏7000度オーバーの熱エネルギーを圧縮して打ち出せば、かなりの威力になるんだぜ?」

「……」

誠は、目の前の光景に驚愕しすぎて、声を上げることすら出来なかった。

あれだけ苦戦させられたヤマタノオロチ型の首が、一撃で灰に還ったのだ。

首一つといっても、その胴回りは巨大で、どう少なく見積もっても10メートル弱はある。

ましてや、その首一つ吹き飛ばすのにすら、多大な労力を要したのだ。

それをこうも容易く消滅させてしまうのだ。驚かない方がどうかしてる。

目の前の光景に頼もしさを覚える反面、今まで自分達がしてきた事に意味が見い出せなくなった誠。

しかし、状況はそんな誠を待ってはくれない。

「誠。」

青山団長は誠に声をかけた。

決着をつけるには、まだ舞台が整っていない。

わたしが時間を稼ぐ。その間に貴方は生きている全兵士を基地から退避させなさい。」







「なぁ大貴?あれ、なんだ?」

眼前で起こる光景が信じられない悠斗は、肩を貸している峯岸大貴に訪ねた。


「なんでヤマタノオロチ型が、たった一人に圧倒されてんだ!?」


突如としてヤマタノオロチ型の前に立ちはだかった人影が、あっという間に首の一つを消し飛ばすと、そのままあの化け物を蹂躙し始めたのだ。

両足から赤い光(炎?)を噴射しながら空を自由自在に飛び回り、また一つ首を消し飛ばしている。

しかし、ヤマタノオロチ型もただでやられるわけじゃない。

消し飛ばされた首を数秒で復活させ、残った首で宙を飛び回る襲撃者に熱エネルギーの光線を放ったり、大きく口を開けて飲み込もうとしたりしている。

しかし、ヤマタノオロチ型の攻撃のいずれもが、避けられるか防がれるかしてほとんど効果を示さない。

「青山団長さ……」

亜麻色の前髪の奥から、はしばみ色の瞳が目の前の光景を視界に収める。

「青山団長って、あの青山団長か!?」

「そう、だらしないことに定評があるあの人だよ。」

「信じられねぇ……あの人があんなに強いなんて……」

こうしてる間にも、普段のズボラさからは想像も出来ないほどの強さで、自分たちでは手も足も出なかったヤマタノオロチ型を軽々と圧倒していく。

「俺たちはどうすればいいんだ?」

「分からない……僕も戦場に出て1年経つけど、ここまでイレギュラーな事態は初めてだよ。」

その時だった。

「おーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!」

背後から叫び声が聞こえた。

「ん?なんだ?」

悠斗は首を後ろに向ける。

よく見ると、生き残った兵士の一人が、悠斗たちに呼びかけていた。

「青山団長から伝言だ!「わたしが時間を稼ぐ間に基地から逃げろ。貴方達がいるとドドメを刺せないの!」だそうだ!!早く逃げるぞ!!」

ご丁寧に一字一句間違いなく伝えたその兵士は、すぐさまUターンしてその場から離れていった。

「……だってよ」

「仕方ないね、僕たちも行こう。」

そう言った大貴は、貸してもらっていた肩から離れ、自力で立ち上がる。

「おい、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ。行こう」

ぎこちない動きながらも走り出した大貴を、慌てて追いかける悠斗。



勝利は、目前に迫っていた。





次回の投稿予定日は1月18日ですが、今回のような事がまたあるやもしれません(もちろん、最善は尽くします)。

ので、あくまで目安ということでよろしくお願いします。

それでは

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ