プロローグ
初投稿です
完結目指して頑張ります
そこかしこの家から火が上がり、崩れ落ちる。
そこらじゅうから人間の悲鳴が聞こえる。
鉄の焼けた臭い、肉が腐ったような臭いが満ち満ちている。
先程まで確かに存在した「俺達の世界」は完全に「この世の地獄」となっていた。
そんな地獄を俺はひたすら走っていた。
視界の端に見える人の屍を、極力見ないようにしながら、俺は走っていた。
恐怖を押し殺し、怯えてすくむ足に鞭を打ち、頻繁に訪れる猛烈な吐き気を無理やり抑え、俺は地獄となった自分の住む町をただ、ひたすら走った。
自分の家へと―――家族と共に、この地獄から抜け出すために。
「ハァ…ハァ…ゲホッ!ゴホッ!」
どれだけの距離を走っただろう。息が苦しい、脇腹も痛い、咳も止まらない。
だが俺はそれでも足を止めない。急がないといけないから。嫌な予感がするから。
「父さん……母さん…彩音…!」
学校から家に帰るときの最後の角を曲がり―――俺は立ち止まった。
俺の家があった場所には、既に奴らが何体もいた。
赤黒い肌を持ち、橙色に輝く眼を持つ、猿のような形をしたそいつらは、俺の家の玄関前で、何かを喰らっていた。
「……え?」
目の前の状況に困惑し、思考が追いついていなかった俺がやっと喉から搾り出した言葉がそれだ。
その言葉に反応したそいつらは、俺の方を向いてきた。
だがその時、俺は奴らと目が合った事を認識する事ができなかった。
なぜなら奴らの目の前に存在し、奴らが喰らっていた「何か」の一部が視界に写り、そちらへ認識が行ったからだ。
いったいそれは何なのか?
それは、血に塗れた人間の腕だった。
俺のそれより一回り細く、銀色の腕時計をした、どこか見覚えのある人間の腕。
どこで見たのだったのだろうか?
そして俺は、自分の記憶の中を探す内に、その腕が何なのかを悟り、そして瞬時にその認識を拒否したい衝動に駆られた。
その腕がしていた腕時計が―――妹の彩音がしていたそれと酷似していたからだ。
俺は、吼えた。
今回は短編ですが、次回からは本格的に入っていきます。




