プロローグ
「魔王様…私は魔王様の事が!!」
メイド長のナナが俺の胸に飛び込んでくる。
そっと抱きしめてやるとナナの全身の力が抜けたのを感じた。
きっと安心したのだろう。 ナナはほっと息を漏らし、
「私は…魔王様に出会えて、最高の人生だったと誓えます」
と俺の目をじっと見てきた。
俺も優しく見つめ返し、
「俺もだ、ナナ」
と微笑んだ。
魔王羨ましすぎるぜ、チクショー。
俺は読んでいた小説の表紙を見た。
複数人の美少女に囲まれる魔王が満足げに笑っている…羨ましい!
駅前の書店で買った異世界小説、【魔王と美少女ヒロイン達】。
あらすじはタイトルの通り、魔王が美少女ヒロインにチヤホヤされたりしたりするギャルゲーよりの異世界ファンタジーである。
そんな魔王が羨ましくて仕方がない…。
いつか、この魔王になってみせる!
と無茶な願望を抱く高校生の俺、加藤遥斗は毎日妄想の嵐だ。
部屋にあるパソコンがメイドやバニーガールに見えたりすることも珍しくはない。 むしろそれが日常だ。
だが、現実はバニーガールもメイドも俺の部屋にはいない。
俺は脳内で美少女達を想像することによって若干の満足感を得る。
妄想というのは無茶な願望を見た人間に与えられる【ご褒美】なのだ。
去年の初夏に買って、もう1年が経とうとしていた。
信じられないと思うがずっとこれしか
-編集中-