敵襲来=1
「・・ただいま」
オレは暗い家の玄関を開けた。もう夜に近い。太陽は沈んでしまったから。
まだ、母さんは家に帰ってきていないらしい。
・・・買い物にでもでかけたのかな?
そう考え、オレは自分の部屋へと続く階段を登った。
この時、オレは気づかなかった。
敵がおかしたたった一つの欠点に・・・
「・・・はぁ、疲れた~」
電気も付けず、部屋に入ったオレは、カバンをそこらへんに投げ捨ててベットにダイブした。
ギシッというベットの一瞬の悲鳴が部屋真っ暗な部屋中に響くのを聞きつつ、布団に顔をうずめる。
――・・・今日はいろいろなことがあった。
青空のような青年に出会ってもまだ、オレの心は混乱している。完全に怒りがおさまった訳ではない。
「・・・母さんに何て言おう・・・・・・」
ボソッとつぶやいた声は響くことなく消える。部屋から、オレの中なら・・・
――・・・しばらくは、母さんを心配させるのも悪いし・・・・・しばらくは、黙っておくか。
オレが自分のことについて知ってしまったことを・・
・・・ギシィ・・・
ふいに、オレの寝ているベットが音を立てた。
え?と思った瞬間、誰かがオレの上に覆いかぶさってきた。
「っ!!?」
――・・・誰!?幽霊!??
一瞬、体をこわばらせる。
でも、それはないだろう、と気づく。だって一応体温が暖かいから。
もしかして、これは敵・・・・・・
「だ、誰だ!!」
じゃっかん踏み潰されつつ、叫ぶオレ。
その声には殺されるかもしれない、という恐怖と不安が入り混じる。
「・・・君ぃ~無防備?」
低く綺麗な男の声がすぐ耳元でする。そして、オレが質問するより早く再び声がした。
「・・玄関の扉、鍵がかかってなかったの気づいた?」
「・・・あ・・」
そういえば、と思い出す。
いつもは母さんが家にいるから鍵がかかってないのは当たり前だった。
でも、今日は・・・・・・
しまった、と内心オレは苦い思いになる。
恐怖と失態をかかえ、オレはできるだけ低く怖い声をだした。
怖がっている声で弱みを見せれば終わりだから・・・
「お前、オレをどうする気だ?」
「さぁ?」
オレの問いに以外にも男はすぐに答えてきた。
一瞬意味が理解できず首をかしげる。
そんなオレの反応をみて、男は言った。楽しそうに。
「・・・君の反応しだいかな」
「え?」
首をかしげるオレ。
怖すぎて言えないが、そろそろ重くなってきたので降りて欲しい。
いつまで男と重なったままでいなきゃいけないのか・・・
「鍵穴はどこ?」
「え」
男がポツリといった。
その言葉には今までの半分ふざけた雰囲気は感じられない。
いわゆる、本気だ。
――・・・鍵穴?ヤベー分かんない
「何それ?」
純粋な答えに男は一瞬だまりこんだ後、少し面白そうにこたえた。
「・・・・・・とぼける気だね?いいよ、じゃぁ自分で探す」
言葉と同時に男がいきなり、オレのYシャツのボタンを外してきた。
予想外の行動にオレは驚く。
「ちょっ!?な、なななに??なん、で」
急いで、外されたボタンを閉めていく。しかし、外す技術の方が遥かに上回っている。
オレが一個ボタンを付けたとき、すでに他のは外されていた。
いったい、どこで練習したというのだ。
「・・・君が答えるまで、僕が探す。・・・鍵穴をね?」
男は無理やりYシャツをオレから引き剥がし、オレを上向けに転がした。
「・・・僕の能力は『探り』。箱を開けるならまずは鍵穴を見つけろってボスが命令してきたんだよ」
男は良く見ると若い。というか肌がきれいだ。切れ長の目が大人っぽい。
白い肌が、闇の中浮き出て見える。
「オ、オレ本当に知らないですって!!」
叫べば、男がクールに笑った。
「ならぁ、見つけなきゃね?」
その意地悪そうな笑みをみて、オレの背筋は凍りつく。
男はそのまま、オレのシャツをめくる。
「可愛いぃものがたくさん付いてる」
そして、可笑しなことを呟きつつ、手を動かした。
ピンクの所にそれがふれる。
「ぃやだ!やめろ!!」
オレは体中に走ったそのいやな感覚にビックリし、男の手を掴もうとする。
しかし
――あれ?
体が動かない。
というか、金縛りにかけられたような・・・重い・・・
男は手を動かしつつ、クールに言う。
「あぁ、ここに来てるのは僕だけじゃない。この部屋には監視役2名と『縛り』の能力者がいる。今は隠れてるけどね」
――・・なんだそれは!!
つまり、オレはこの男が満足するまでやられ放題って事か!!
何をやるかは分からないが、鍵穴は見つかってはまずいようなきがする。
それよりも――――
「そ、そこ嫌だ!!離せ!」
暗闇の中、オレはいつまでも、同じところを揉む男を睨む。
しかし、一方の彼はまったく止める気配がない。
――・・・きっとこいつはこうやって、鍵穴をさぐる能力・・・・・・なんだろうけど!!
オレは顔をしかめた。
これでは、オレがコイツとエロティックな事をしているように見えるではないか!!
オレが女だたったら完全にアウトだ。
「や、やめろって!!ってか、降りろ!!・・・なんでこんな事するんだ!!?」
本当に嫌だった。暗闇で男二人がという光景よりも体中に走る感じたことのない感覚が。
ただでさえ嫌なのに、足をばたばたさせる事もできない。
「言ったでしょ?ボスの命令だって」
男がニコリと笑う。
今にしてみれば切れ長の目はもうクールでも何でもない。
ただの変態だ。
気づけば目が少し潤っていた。
――・・・高校生が情けない・・・・・・
「可愛いねぇ」
悔しそうに顔を歪めれば、男が呟いた。
「ザキに顔だけ束縛を解いてもらってたかいがあった。」
――ザキ?外人か?
頭で余計な事を考えつつ、うるさい黙れ!とオレは男を睨んだ。
その時―――
パリィィイイン!!!
派手な音をたててガラスが、オレの部屋のガラスが割れた。
当然、男とオレは驚いてそちらを見る。
そこには、窓からの月明かりが照らす青年が立っていた。
思えばもう、外は真っ暗だ。
「・・・お前、何してる?」
窓から入ってきた青年の低い声。
さすがの月明かりも青年の顔までは照らしてはくれなかったのだが・・
オレはその声を聞いて、青年が誰なのかを理解した。
「や、・・やざ、き?」
そう、声の音からしてさっき合ったばかりで心底嫌悪していた、夜崎隆だ。
ガラスを踏み潰す音を同時に彼が一歩一歩せまってくる。