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~箱~高校生の非日常  作者: 夜野 彼方
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日常~最悪の再開~

 「やぁ」

 夜崎隆の口元がそう動いた。


ーーげげ

 オレは内心でぼやいた。


今まで、かんの鋭い友人たちにバレぬよう、今朝の嫌な記憶を忘れるべく努力していたのに、彼が現れた瞬間にすべてが鮮明に思い出されてしまった。そして、それと同時に警戒心がふつふつと沸き起こった。


ーーあぁ、逃げたい。

ーーオレとしては、一喝したい気持ちもあるんだけど、こういう常識離れした相手には何言っても通じないだろうし、距離を置くのが一番良いんだろうな。


 オレが考えている間も夜崎隆は歩み寄ってきていた。そして、それに気づいた彼の友人らしき2人とオレの視線が一瞬だけ交差した。


 友人のうち一人は茶髪に派手なピアスをチラつかせるチャラそうな人物。そしてもう一人は黒に限りなく近い藍色の髪の毛を片耳にかけた一見オシャレだが大人しそうな人物だった。


彼らは、夜崎隆がオレに興味を示していることを察しつつも、その行動の真意までは分からず不思議そうな顔をしていた。そして、授業を終えた生徒でごった返し始めた売店で声を張り上げた。


 「おーい、隆どーした!?今は焼きそばパン買うほうが先決だろ!」

 「・・・早くしないと無くなるよ〜。」


 「……あぁ、今行く」


 夜崎隆は、この人混みで絶対に聞こえないだろうと突っ込みたくなる程の声で、友人に返事をした。



 オレがアレコレ考えていると、ふと彼の胸元に目がいった。そして、どうやら彼は年上らしいということに気がついたのだ。


そう、胸元には各学年別に色の違った名札がついている。

 一年生が赤色の名札。

 二年生が青色の名札。

 三年生が緑色の名札、と決まっている。


 ちなみに、夜崎隆は2年生を表す青色の名札を付けていた。

ーーつまりアイツはオレの一個上の先輩かよ。


 どうして、先輩というたけでここまで強そうに感じてしまうのだろう。素朴な疑問が頭をよぎったがそれどころではなかった。オレとしては彼が憎たらしい反面、朝の恥かしい出来事を知られているため下手な行動ができなかった。


 というのも、もし仮にここで彼から逃亡したことで、朝の惨事を全校にバラされたとなれば、恐らくオレは羞恥心でこの学校にいられなくなるのだ。

 『男が男に噛まれた』だなんて。


ーー噛む方も異常だけど!!



内心で悪態をついていると、夜崎隆は前で立ち止まった。


ーー一体、どんな脅しをくらうのだろうか……


 少し怯えながら見上げると、夜崎隆はオレの予想に反して少し柔らかい笑みを浮かべていた。


 「・・・今朝は悪かったな。シェイク奢るから、放課後校門の前で待ってろ。」

 「・・・・・・え、・・・あ、いえ、けっこうです。」


 オレは、彼の予想外の言動に戸惑ったが、関係を断ち切りたい一心で会釈したーー瞬間、頭を話時掴みにされた。


 「・・・・・いいじゃん、付き合えよ。先輩が奢るっていってるんだし」

 驚いて見上げると、そこには夜崎隆の茶髪友人がいた。


 俺は内心びびりつつ(ここでOKしたら、何か危ない気がする)、さらに反抗した。

 「いえ、大丈夫です。こうみえても俺、シェイクには嫌なトラウマがありまして苦手なんです。それに、どちらかといえば、海老かつ派だし」


 先輩の手を頭からどけようと、たたくが中々外れない。


 すると、俺の頭を掴んでいる茶髪の先輩の掴む力が増した。

 「コイツ、先輩にシェイクよりも高いもの奢らせようとしてるぜー!度胸パネェ!!ハハハ」

 「・・・・・・・・・・・・」

――::そうくるか・・


 俺としては別に奢ってもらう気すらないというのに。

 俺は茶髪の青年の方を向き、じっと目を見つめた。

 昔から、こうするとだいたいの人は、了承してくれるのだ。


 「俺、奢ってもらわなくてもけっこうです。」

 そう、いつもはここで分かったという返答が来るのだが・・・


 「おいおい、そんなの俺たちには通用しないぜぇ?やるといったらやるんだぞ~」

 茶髪の先輩の頭を掴む腕が外れたと思った瞬間、今度はオレの顎をグッと掴んできた。


 「来るよなぁ?今日。」

 脅すように低いトーンで顔を近づけられる。


ーーひっ!こわ!!

 その剣幕に押されて、俺はコクコクとうなずくことしか出来なかった。


 俺がうなずくと茶髪の先輩はきげん良さそうな笑みになり、顎から手を離した。

 「ってことで、隆!俺にもシェイク奢れー!!」

 「無理」

 「えぇ、何でこの後輩にOKなんだよ?俺は?生まれた年はお前より遅いから後輩なんだけどー・・」



 渋い顔をする茶髪男。

 それがねらいか、と納得するが正直大人げないぞ。


なんとなく、その場の雰囲気でオレへの用事が終了した様な気がしたため、俺は震える足に力をいれて、先輩たちを残しその場を後にした。

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