日常2
俺は目の前の同じ学ランを着た生徒に顔からぶつかってしまった。
「ごふぅっ!!」
二人同時に倒れこむ。
「っす、すいません!」
反射的に伸びのけ、相手に向かって土下座をすれば・・・
「許さない」
異様に低くとがった青年の声がした。
これにはさすがにドッキリだ。
「え、・・・ってか許してもらうための謝罪じゃないし・・・・・・」
「じゃぁ、何のため?」
「・・・・・・カタチだけの・・・」
そこまでいいかけて、俺はハッとした。
学校に送れてしまうではないか!!
「あ、俺・・・学校あるんでっ!!」
立ち上がろうとした俺の腕をぶつかった相手が掴んだ。
「待てよ」
「っ学校に遅れるんだ!離せ!!」
振りほどこうとしたが、すごい力で腕が折れそうになる。
とうとう俺はヤツの腕をほどこうとするのを諦めて、彼の前にしゃがみこんだ。
――もしかしたら、怪我とかしてるかもしれないしな・・・あぁ、面倒・・・
「・・・すわせろ・・・」
「は?」
「吸わせろ」
――何を?
疑問を問い返すより早く、路上に横になったままの相手は俺の太ももにかじりついてきた。
「っひぃ!?」
予想外の衝撃に思わず尻餅をついてしまう。
そうしている間にも、相手は制服の上から太ももにかじりついている。
「っ、やめろ!!」
――・・・もしかして、こいつ吸血鬼か?
一瞬思ったが、タブン違うだろう。
だって吸血鬼って首筋にかぶりつくのが王道だろ?
俺は相手の髪を鷲づかみにし、引っ張った。
しかし、顔はいっこうに離れない。
――っ・・・だんだん痛くなってきたっ!!
「離せ、変態!!誰かー!!!ここに変態がいます!!助け―!!」
引っ張りつつの叫び声。
俺が髪を引っ張った反動で彼の顔が俺の股間に来た。
「っぁ・・・・・・」
これにはさすがに叫び声が出なくなる。
それに、この状況を誰かに見られでもしたら・・・
青年は今度はももに被りつくのとは対照的に、俺の股間に吸い付くようにかぶりついてきた。
「っ・・・や、め!!・・・・・・ぁ」
思わず体をくねった。
「っ・・・ふざけ、んなぁ!!!」
最後の力。
それをふりしぼって、青年の顔ごと引っ張りあげた。
すると、いとも簡単に彼は俺から顔を離す。
「っハァハァ・・・お、お前初対面に何考えてんだよ!!死ぬかと思っただろ!!!」
もう俺の制服はきわどいところが濡れていた。
まるでお漏らししたみたいじゃないか!
睨みつければ、相手は楽しそうな笑みを小さく浮かべた。
「・・・あれ、間違えた。」
「っふざけんな!ってか、何を間違えるんだよ!!!」
「・・・いあ、最近マクドナルドのシェイク吸ってなくて・・・・・・」
そして、青年はあっさり立ち上がった。
というか、あの吸い方は絶対間違えたはずないだろ!
・・・でも何故だろう?目の前の男が嘘をついているようには見えない。
「・・・俺、夜崎 隆。悪かった。御礼に今日シェイクおごるよ。」
真顔で俺に言った後、青年はスタスタと学校へ行ってしまった。
――・・・あぁ、最悪・・・
美少女にかまれるならまだしも、男にかまれた・・・しかも、たっちゃったし。
どうすればいい?きわどいところが濡れてしかも、たっている。
こんな格好では到底学校に行けるわけが無い。
俺は近場の公園でズボンを洗うのを目的に、歩き出した。