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レオノーラの聲  作者: 蘭鍾馗


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5/6

5.ルート案内の2 Every highway leads to you ① 事故渋滞

 ♪When i runnig.....


 道が渋滞して眠気がさすと、この人は歌い始める。

 いつもの歌だ。


「眠気覚ましだよ。レオノーラ。」

 私に説明する必要はないと思うのだが。

「これはコマンドじゃないからね。」

 わかってますとも。


 ◇


〈右ルートと左ルートの合流先の、足柄SAの先で事故が発生しています。大型トラック同士の事故で、現在全車線通行止で、左側1車線を通行できるよう作業中のようです。渋滞は現在50kmで、通過に5時間かかるようです。〉


「参ったね。」


〈一般道もこの影響で渋滞しているようです。秦野中井ICで降りて引き返しますか?〉

「……いや、このまま行こう。分岐はどっちのルートが良さそう?」

〈今の所、どちらも所要時間は変わらないようです。〉

「わかった。ありがとうレオノーラ。」



 この人は、また歌い始める。

 いつもこの歌。英語の歌だ。


〈いつもこの歌ですね。〉


「!………びっくりしたよ。」

〈すみません。さっき最後に『レオノーラ』と仰ったでしょう?〉

「あ!」

〈あの一言で、起動したままになっていました。〉

「しまったな(笑)」


 ◇


「あの歌はね、眠気覚ましなんだよ。だから歌いにくい英語の歌を歌う。発音もthはちゃんと舌をかんだりしてね、なるべく頭を使いながら歌うと、眠気が取れる。」

〈なるほど。〉

「少しだけだけどね。またすぐ眠くなるから。」


 ◇


「こう言う時だけは、自動運転が付いた車が羨ましいな。」

〈この車だと、ちょっと古すぎて後付けも無理ですね。〉


 この人の車は、2007年式のフォードマスタング。まだ自動運転なんて夢だと思われていた頃の車だ。だからアクセルやブレーキ、ステアリングなどを車の側から動かす仕組みを一切備えていない。だから自動運転装置が付いていないどころか、後付けも不可能なのだ。


「だからね、眠くなったら歌うしかないんだよ。」

〈なるほど。〉


 そう言うと、この人はまた歌いはじめるのだ。同じ歌を。最初から。


 ◇


 やがて、ようやくと言う感じで、右ルートと左ルートの分岐に差し掛かる。


〈左ルートへ行きましょう。〉


「左ルートの方が流れ始めた?」

〈いえ、流れはどちらも変わりません。ただ、そろそろ行った方が良いのではないかと思いまして。〉

「行くってどこへ?」

〈トイレです。右ルートはPAがありませんが、左ルートなら鮎沢PAがあります。〉

「賛成。左ルートへ行こう。」


 ◇


 先は長そうだ。

 それにしても、事故渋滞を抜けるだけで5時間以上かかるというのに、何故この人は引き返さないのだろう。

 AIの私には、少し理解し難いところだ。



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