2.レオノーラの質問
<質問をしてもいいですか?>
レオノーラが訊く。
どうぞ。
<『死に場所』とはどのような場所でしょうか。>
◇
ちょっと意外だった。
「どういう意味でしょうか」と訊いてくると思っていたのだ。
死に場所とは、私がそこで死ぬ場所だよ。
私はそう答えた。
<遠くても構いませんか?>
構わない。むしろ大歓迎だ。
<では、少々お待ち下さい。>
◇
レオノーラの反応は、私にはちょっと意外だった。倫理規定的なものがあって、こういうオーダーは拒否されるのではないかと思っていたからだ。実際にオーダーしておいて何をか云わんやだが。
まあしかし考えてみれば、これはAIを使っているからこそ生じる問題だろうから、カーナビ運用の想定がまだそこまで追い付いていないだけなのかも知れない。
「思っていたより暖かい冬が来たんじゃなかったのか?何で死に場所なんか探すんだよ?」
全くその通りである。だが、それについては追々説明させてもらおう。
今はとにかく、旅を始めたい。
◇
レオノーラは、首都高の都心環状線から、東名高速に乗るよう指示してきた。
西へ向かうらしい。
渋滞の中を這うようにして進む。
案内するのは最新のAIナビだが、運転するのは人間だ。ましてやこの旧式な車には運転支援システムや自動運転のための装置は一切ついていない。ということは、最新のAIナビであるレオノーラがコントロールできるのは、生身のドライバーであるこの私だけなのである。なんとも皮肉な話だ。
やがて渋滞を抜ける。
ようやくギアを6速まで上げ、東名を名古屋方面に向けて走る。
◇
<途中一泊する必要があります。どこで宿泊しますか?>
レオノーラが訊く。
どこでもいいよ、と答える。
出来れば安いところで、ちょっと面白いところがあれば、そこで。
さて、私のリクエストで、レオノーラはどんな宿泊先を見つけてくるのだろう。
◇
<出発が早朝でしたから、まずは朝食をとりましょう。>
そうだね、そうしよう。
<途中のSAでいいですか?>
構わないよ。もとよりそのつもりだ。
旅は順調だ。今のところ。