表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

第9話 みんなでもう一度、隠し部屋に行った。


 僕がダンジョンに足を踏み入れると、当然のように牧羊(牛)犬のボスがぺったりと僕にくっついている。

 ボスがついてくることに、アーサー兄さんは驚いたけど、ダメとは言わなかった。

 先頭にウィル兄さん、ギルド職員の人、僕とボス、最後にアーサー兄さんの順でダンジョンに足を踏み入れた。

 先頭のウィル兄さんはギルドの人に、「基本的に低層階ダンジョンらしく、順路は簡単な造りのようで――……」とか説明してる。

 お願いだから、ボスはウィル兄さんの前には飛びださないでね。

 僕の気持ちが通じたようで、ボスは大人しかった。


「で、ここが隠し扉です」


ウィル兄さんが冒険者ギルドの人にそう説明すると、一度ここに潜ったことのあるアーサー兄さんは「ほんとだ……マジで隠し扉できてやがる」と呟いていた。

ボスは嬉しそうに尻尾をパタパタしてる。「そうそう、このとびらのむこうに、おいしいお水があるの」と言ってるように。

隠し扉に入ると、噴水はあった。

ギルドの人がくるくると噴水の周囲を回る。ウィル兄さんが僕が宝箱を開けた場所をギルドの人に知らせると、ギルドの人は眼鏡を押し上げて、その場所を見つめる。


「えーと、ジャック君だっけ? ちょっときてくれるかな?」

「はい」


言われた通りにあの宝物が出てきた場所に立つと、またそこがピカって光った。

文字が浮き立つ。


 ――彷徨いし孤独なる魂を持つ者よ、時空の神から愛と幸を知る祝福を授けよう――


前と同じ文面だった。

僕の周りに光が漂って、その光は部屋の片隅に移動すると、また宝箱が出現した。


「うん、大丈夫ですねー……害はないでしょう」

「害はない……」


ギルドの人の言葉に、ウィル兄さんとアーサー兄さんは顔を見合わせてほっとしていた。

このダンジョンも大きくなる気配はないらしい。

ただ気になることがあると呟いた。


「ウィルさん、アーサーさん、さっきの文字読めました?」

「いや、光が強くなかったですか?」

「うん強かった。ジャックは平気か?」


「だいじょぶだよ。へいきだよ。よめたよ、文字。前と同じだったよ」


僕がそう言うと、ウィル兄さんとアーサー兄さんは僕を見る。

ギルドの人はうんうんと頷いてた。ギルドの人も見えたんだ……。

宝箱の前に四人が集うと、宝箱の表面に文字が浮き上がる。


――小さな子へ。またきてくれて、ありがとう。これをあげるからまたきてね――


子供向けの文面。

薄い光で記されてある。

これはウィル兄さんもアーサー兄さんにも読めたみたいだ。


「ジャック宛?」

「それっぽいなー」

「そのようですね」


ウィル兄さんアーサー兄さんギルドの人が口々に呟く。

僕は兄さん達とギルドの人を見上げる。


「あけてみろ、ジャック」

「いいの?」

「ミミックじゃなさそうだしな」

「危険はないと思いますから」


ギルドの人もそう言ってくれたので、兄さん二人はうんうんと頷く。

いえやと声をかけて宝箱を開けると、小さなボトルと食玩パーツの一部が一緒に入ってた。

ポケットに忍ばせていた前回宝箱から出てきたパーツの一部を取り出して、今目の前にある宝箱からでてきた足……脛の部分と思われるものとジョイントしてみた。

カチッと音がして、つながる。

足だ……。脛の部分だ。


「ウィル兄さん、アーサー兄さん、これ、みて、ほら、つながったの」


僕がつなげた部品を兄さん達に見せる。


「足?」

「足の部分?」


一番最初に出てきたのが人間の足の甲の部分だった。今は足の甲と脛の部分をくっつけてみたので、それがわかる。

ギルドの人は僕が握るその謎のパーツをじっと見つめる。


「魔力の回路が見えますね……かなり緻密な……」


眼鏡を押し上げて僕の手の中の謎のパーツを見るギルドの人……。


「きっと残りもこのダンジョンにあるのは間違いないでしょう。えーと材質はミスリルですか……集めるとギルドに報告が上がってる中でも、最小の――ゴーレムになるかもしれませんね」

「ゴーレム……」

「形状からして間違いないでしょう。ゴーレムのデザイン、サイズは様々ですけれど、ここまで小さなものは初めてです」


ギルドの人の言葉に、兄さん達は顔を見合わせる。

宝箱に入ってるボトルを取り出す。


「あと何このボトル……」


ガラスのボトルを取り出すと、ボトルの首のところにタグがついている。


――またきてくれたご褒美だよ。いつでもたくさん、おいしいお水がでてきます。またきてね――


タグにはそう書いてあった。

……ホラーっぽい。

でも純粋に、お誘い文句のような気がしないでもない。

このタグも兄さんとギルドの人にはちゃんと読める。


「そう、うちの犬も――……あー言ってるそばからボスが噴水の水を!」


ウィル兄さんがギルドの人に説明しようとしたら、ボスが噴水の水を飲んでる。

兄さんの声にびくっとしてボスは噴水から離れて、僕の傍にやってきた。


「おいしいお水だったから、ボス、飲みたかったんだよね?」


僕がボスにそう語りかけてもふもふした毛並みを撫でると、「そうなの~我慢できなかなったの~」というように、くーんと鼻を鳴らす。


「噴水のと同じお水かも」

「飲料水ですね……ダンジョン産の飲料水は売れますよ」

「水が?」

「メルクーア迷宮都市もサンクレルも上下水道はかなり進んでます。でも、ダンジョン産は飲料水では極上なのはご存じでしょ?」


ギルドの人がそういうと、ウィル兄さんもアーサー兄さんも頷く。


「こういうお土産も用意してる……ジャック君にどうしてもダンジョンに来てほしいって……このダンジョンの意志を感じますね。機会があれば、ジャック君はサンクレルにきて、スキルと魔法の素養調査を受けてほしいです」


ギルドのお姉さんはそう言った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ