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第22話 兄さん達もわりと心配性かもしれない。


「うちのミルクを使ってるのがその美味しさの秘密だったかあ~」

「いや、ユジンの家のクリームシチューは絶品だから、すいません、俺等もごちそうになっちゃって」


 ユジン兄さんとお家増築? 改装? してるハンザ工務店の従業員の人達がクリームシチューを食べながらそういった。


「食事はみんなで食べると美味しいからね」


 お婆ちゃんはそういって頷く。


「でも、そういうことなら、レシピだけじゃなくて、提携してるチーズ工房にも協力してもらわないとダメじゃな。デイジーがお世話になったんだから、うちのミルクの提供はしてもええ」

「おばあちゃん……いいの?」

「デイジーが窓口になって、うまいことやってくれればええ」


 デイジーお姉さんはみんなを見る。

 とりわけウィル兄さんを見る。


「いいかな……ウィル兄さん……」

「いいと思う。うちのばあちゃんのチーズケーキが、サンクレルの街でも食べられるんだ。悪いことじゃない。この件は婆ちゃんのいうように、デイジーに任せるぞ」

「わかったわ……やってみる。ありがとう、お婆ちゃんみんな!」


 デイジーお姉さんにとって、前の職場はいい職場だったんだろうな。

 でなきゃ、辞めてまでお店に関わろうとか思わないもんね。

 人気のウェイトレスさんだったていうから、きっとお店の人もよくしてくれたんだろうな。


「ごちそうさま、ぼく、またダンジョン行くね」



 食器を片して、ボスと一緒に家を出た。

 ボスの背中に乗った僕はボスに話しかける。


「ねえ、ボス、おばあちゃんが、いいよーって言ったのは……」


 そう話しかけて、僕は言葉を止めた。

 いつかお迎えがきても、お婆ちゃんが作ったチーズケーキの味が残るならって、思ったんじゃないかな……って言うつもりだったんだけど。

 優しいお婆ちゃんがいなくなることを口に出すのはちょっと怖かった。

 きっと、こんなことを考えちゃったのは、僕が人生二週目だからなのかも。

 やめやめ。今は今のことを考えよ。


「今はダンジョンに潜るけど、僕、おうちのお手伝いもするから、ボスも手伝ってね」


 僕がそういうと、ボスはフンフンと鼻を鳴らす。

 ずっとお婆ちゃんと一緒にいるっていうと、きっとまたお婆ちゃんが心配する。もっと子供らしく遊んでとか言うにきまってる。

 ここはやり始めたダンジョンの小さなゴーレムを完成させて、おうちのこと、ちゃんとやろ。


「ジャック――!」


 家の方から声がして、振り返ると、アーサー兄さんが走ってやってくる。

 ボスはちゃーんとアーサー兄さんの声を聞いて足を止めていた。


「俺も行くよ」

「え」

「ウィルに聞いてさ、ジャックがダンジョンにいくならちょっと見てた方がいいかなってな」

「ええ~」


 僕の「ええ~」にアーサー兄さんは苦笑する。


「邪魔はしないよ、見てるだけにするから。だってこのダンジョンはジャックを呼んでるんだろ? 中で俺がモンスターを倒しても、何もドロップしないかもしれない」


 うーん……そうかな……?


「アーサー兄さん、一番最初にうちにできたミニダンジョンに潜ったとき、モンスターから何もでなかったの?」

「うん。ワーム系モンスターが出るだけで、何もドロップしなかった」


 そうなんだ……。


「俺が一緒だとドロップ率が悪くなるからとかいうなよ?」

「そうなの?」

「知らんけど、ジャックそう言いそうだから」

「うん、そういうの試すの、検証っていうんだよね?」

「お前、難しい言葉知ってるな?」


 僕は黙ったまま、じいっとアーサー兄さんを見上げる。

 僕の沈黙とまなざしに、アーサー兄さんは「ウィル兄さんに頼まれた」と白状した。

 やっぱり、午前中最後に倒したカマキリは虫系モンスターでも強い方で、ワーム系モンスターに比べればランク二つぐらい上らしい。

 僕はボスとスライムでやっつけたけど、ウィル兄さんはきっと内心ハラハラしてたんだろう。

 だからアーサー兄さんに一緒に行って、様子を見てこいとか言ったんだな……きっと。

 ウィル兄さんの言ったそれを、ちゃんということ聞いちゃうアーサー兄さん。

 冒険者ランクは同じだし、年齢だって一つしか違わないから、普通なら、こう、自分の意見があればそれを主張して、違ったりするとぶつかるというか、言い争いとかしそうなもんだけど、アーサー兄さんって、ウィル兄さんをたててるなあ。


「わかった」


 もし、名前を知ってるモンスターがいれば、教えてくれるだろうし。


「でも手は出さないでね。午後は、左手と左腕のパーツを集めたいの。午前中は右手と右腕が出たから、残りの腕を集めて合体させたいの」

「そうなのか? すごいな。ちゃくちゃくと集めてるんだな」

「みせてあげるね」


 僕はマリアお姉さんから借りてるウェストポーチの中に手を突っ込んで、これまで集めてつなげたちっちゃい食玩サイズロボ(ゴーレム)をアーサー兄さんに見せた。

 僕の手のひらに収まるあとちょっとで完成の食玩ロボ(ゴーレム)を、アーサー兄さんはまじまじと見つめる。


「すげえ……素材がミスリルだからかもしれないけど、キラキラしてるし、いやーわかる! あと少しで完成じゃないか!」


 あ、アーサー兄さんもわかってくれる。


「わかった、俺は邪魔しないから、見てるだけにするから、ジャック頑張れ!」


 アーサー兄さんは僕の頭をくしゃくしゃと大きい掌で撫でまわした。





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