第19話 ハサミはお野菜の収穫ハサミ
ポムポムと跳ねてるスライムをじっと見る。
攻撃しようとしてこないんだよね。
「えーと、いっしょにダンジョンでアイテム見つける?」
僕がそうスライムに尋ねると「その言葉を待ってたぜ」とでもいうように、ボスと僕の周りを一周する。
「幼児ならではのコミュニケーション……」
アーサー兄さん……心の声が漏れてます。
「ダンジョンからでちゃダメだよ? 普通にやっつけられるよ?」
おう……今度はプルプル震え始めた……。
僕の言葉、わかってるっぽいなー。
「よし、虫モンスターを頑張ってやっつけよー」
僕がそういうと、ボスはワンワンと吠えて、スライムも気持ち跳ねる速度を上げてた。
僕とボス以外にスライムがこのミニダンジョンのモンスター退治の仲間になったよ。
スライムは前衛。ポムポムと弾みながら、ダンジョンの奥へと進む。
そして虫モンスターが近いと、その場で止まって、ポムポムと弾んで僕にも知らせてくれる。
うん、協力してくれるいいスライムだ。悪いスライムじゃないね。
虫モンスターの足止めをしてくれるから、攻撃が入りやすい。
モンスターを倒すと、今度は、部品ゲット!
やった~手の部分だ。
手の部分、ちゃんと小さい食玩サイズだけど、すごく精巧。指の関節とかちょいちょいって動かしてもポキッて折れない。
素材が素材だもんね。
「みてみて、アーサー兄さん、これ、手の部品なの、ほら、指が動くよ」
多分、アーサー兄さんが指の関節部分触っても壊れないはず。
アーサー兄さんは指先で食玩サイズの手の部分をちょいちょいと動かす。
人の指同様の関節の動きに目を見開く。
「おお~スゲーよくできてるなあ、これ、うん、ジャックが夢中になるのは、なんとなくわかる!」
「でしょ? アーサー兄さん、ゴーレム見たことある?」
「ある。あいつ堅いんだよな~」
「堅いんだ……どうやって倒すの?」
「俺がエンカウントしたのは、構造というか素材が土なんだよね。だから魔法使いが水魔法で攻撃、あとは物理だった」
「へ~」
「これがおもちゃだからいいけど、本物サイズでこの素材だったら……出現場所はメルクーア大迷宮の深層部分かな……。ジャックのいうようにレアだなこれ!」
「えへへ! レアでしょ!?」
そっか~Bランク冒険者はメルクーア大迷宮だと中層攻略なんだね。
でもそこを攻略してるウィル兄さんとアーサー兄さんすごーい。
よーし、アーサー兄さんが今日は見てくれてるから、頑張って、いっぱい倒すぞ!
腕のパーツ、この手のパーツとジョイントできる腕のパーツ出てこい!
アーサー兄さんに見守れながら、僕は三階層から四階層に向かった。
頑張って四階で、ミミズの大きいモンスターを倒すと、ドロップしたのは畑の肥料だった……残念。
ミミズモンスターを倒したところで、アーサー兄さんが、今日のダンジョン探索終了って言われた。
帰り道も何かでるかもしれないもんね。
でも明日から四階層だ。がんばるぞ。
「やっぱりジャックはテイマーっぽいよなー。攻撃パターンが」
ダンジョンからの帰り道、アーサー兄さんがそうポツリと呟く。
「え? テイマーの攻撃ってこういう感じなの?」
「使役してるモンスターがやっぱ、前衛、遊撃。モンスターによるけどね」
「へ~」
「誰に教わったわけでもないんだろ?」
「うん。でもさあ、ふしぎなの」
「ふしぎ?」
「このスライム、虫モンスター三体に囲まれプルプルしてたの。めちゃくちゃ弱そうだったのに……だから見逃したんだよ、ぼく」
「弱そうか~愛嬌あるからな~」
「え、アーサー兄さん、スライムのこと詳しいの?」
「いや、うーん前に一度、臨時でテイマーがいるパーティーと組んでダンジョンに入ったことがあったんだよ」
「スライムのテイマーがいたの?」
「多数のモンスターを使役してたけど、その中の一体にね。こんなに跳ねなかったけど」
「へ~」
そしてスライムはダンジョンの入口近くで跳ねるのをやめた。
「またあしたくるからね。ダンジョンからでちゃダメだよ?」
僕がそういうと、スライムはわかったよとでもいうようにそのばでポンポン跳ねて、ダンジョンの奥へ戻って言った。
ぼくの言葉、やっぱりわかってるっぽい?
翌朝、僕は畑の仕事を手伝うそこで、昨日、ダンジョンでゲットした収穫用のハサミを使った。
ハサミを使って、食べごろトマトをパチンと枝から切ると、籠いっぱいのトマトがあふれた。
何これ……。
うちの畑にあるトマト。
となりのトマトの枝を見ると、ハサミで切った感じがしてる。
え、どういうこと?
「デイジーお姉さーん! マリアお姉さーん!」
僕が声をかけると、収穫中にもかかわらず、お姉さん二人は僕の方へやってきてくれた。
「どうしたのジャック?」
「あら、もう? こんなに籠いっぱいにトマト」
「あのね、このハサミで一個、トマトを切ったら、籠に、いっぱいトマトが入ってくる!」
「は?」
「どういうこと?」
僕は何も入ってない籠をもって、背を向けてた反対側のトマトの畝に振り返る。
「見てて、あ……お姉さん、どれが美味しそう?」
「これかな?」
「まって、切らないでね、僕のハサミで切るよ? 見ててね」
「うん」
パチンとトマトをハサミできると、足元に置いておいた空っぽの籠に、いっぱいにトマトがあふれんばかりに収穫される。
「「ええええ~!?」」
お姉さん達は驚きの声を上げた。




