第16話 サンクレル冒険者ギルド
デイジーお姉さんのお店のご挨拶が済んだら、今度はユジン兄さんがお勤めしてるハンザ工務店へ。
そこにも一応「うちのユジンがお世話になってます~」って言って、チーズケーキをお渡しした。
みんな僕を見てほっこりしてる。
「ユジンが言ってた弟か~」
「ダンジョンに落っこちたんだって? もう大丈夫か~?」
とか言われたので「大丈夫です」って言ったらみんなニコニコしてた。
ユジン兄さんがお勤めしてるところだから、みんないい人なのかも。
ユジン兄さんから頼まれた書類を渡して、僕達は冒険者ギルドへ。
ドワーフ工業地区とか言われてるところと冒険者ギルドは隣の区画。
もちろん区画内に住宅はあるよ。
冒険者ギルドも、綺麗な建物。
ちょっと前世のお役所風味。
アーサーお兄さんがいうには、商業ギルドとかもこういう建物の作りなんだって。
冒険者ギルドに入ると、アーサー兄さんは顔見知りの冒険者の人に声をかけられる。
「おう、アーサー実家に戻ってるんだって?」
「戻ってる」
「ウィルもか」
「そうそう。実家が牧場でさ、うちの爺さんが亡くなったから……ウィルと俺は兼業にきりかえようかと」
「怪我で引退よりはなんぼかましだろ」
「いい肉卸してくれよ~」
アーサー兄さんは何人かの冒険者に囲まれた。
「……ていうか……お前、結婚したんか?」
「可愛い……いつのまに……」
アーサー兄さんの後ろにいるデイジーお姉さんを見てみんな口々にそういう。
デイジーお姉さんは人気カフェ店の看板ウェイトレスだったもんね。
アーサー兄さんに声をかけてきた冒険者の人達は羨ましそうにアーサー兄さんを見る。
「妹と弟だよ。弟の素養調査にきたんだ」
血がつながってないから、妹に見られないし弟にも見られない……のかな。
僕に視線を落として、冒険者の人達は肯く。
「まだ小さいじゃねえか。何歳だよ、そんな焦ってギルドに依頼しにこなくても」
「心配なんだよ、弟はうちに出来たダンジョンに落っこちて記憶が抜け落ちたところもあるから」
「ダンジョンに落ちた!?」
「よく無事だったな~怖かったろ~」
こわもての冒険者の人から口々にそう声をかけられる。
顔怖いけど、優しい……。
「アーサー兄さんの弟のジャックです。五歳です。お爺ちゃんが守ってくれたの」
僕がそう言うと、冒険者の人達は僕を見て「なんだこの可愛いのは」とか呟いてる。
屈強な冒険者の人達に囲まれていたからなのか、カウンターにいたギルドの受付のお姉さん達が彼等と僕達の間に割って入ってくる。
そんなに心配しなくても……大丈夫なのに……。
「可愛い~」
「このぐらいの子って、うちの職場じゃなかなか見ないよねえ~」
「メルツちゃんが学校帰りにお使いでくるぐらいじゃなーい?」
「メルツちゃんよりも気持ち、小さい子だよ~可愛い~男の子の可愛さはまた別よねえ」
あ、そうなのか、普段職場では見ることがない小さい子がいるから近づいてきたんだ。
そんな感じでお姉さん達が声を上げてたけど、そんなお姉さん達を持ち場に戻らせるような、合図が……パンパンって手拍子が鳴った。
手拍子で合図してたのは、先日、うちのミニダンジョンを調査にきてくれたダークエルフのギルド職員のお姉さんだった。
僕をとりかこんでいたギルドの受付のお姉さん達は、まるで、教室に先生がやってきた生徒のようにあわてて持ち場のカウンターへ去っていき、アーサーお兄さんに声をかけてた屈強な冒険者っぽい人達も、ダークエルフのお姉さんを見ると「じゃ、俺等も行くわ~」「またな~」って手を振って離れていった。
ダークエルフのお姉さん……えらい人なのかな……。
「ジャック君お久しぶり、あれから謎パーツは集まったかな?」
「両足と、胴体までです」
「今日はどうしたのかな?」
僕はアーサー兄さんとデイジーお姉さんを見上げる。
「うちのジャックの……」
「スキルと魔法、どうなっているのか調べてほしくて」
二人が代わる代わる答えると、ダークエルフのお姉さんは頷く。
「学校行くと、自然とテストで個人の持ってるスキルや魔法なんかが判明するから、焦らなくてもいいんですけれど。ご家族の方は心配されますよね。ジャック君はまだ幼いですし……じゃ、ちょっと上の方で、調べましょうか」
ダークエルフのお姉さんがデイジーお姉さんとアーサー兄さんにそう伝える。
二階の会議室みたいなところに案内されて、クッション高めに盛られた椅子に座らされた。
「はーい、まずはこのボードにペタって手をおいてねー」
言われるままに手を置いくとボードが上からスルルっと薄い光を放って、下まで到達する。あれだ。コピー機のスキャンみたいな感じ?
異世界転生だと水晶玉に手をかざして魔力を図るとかそんなのを見た気がする。そんでチートな転生者が水晶玉を割るまでがおやくそくなんだよね。
この世界だとこういうのなのか。
もちろん手を置いたボードに異常は見られませんでした。
よかった。
「はーいよくできました。これはサンクレルの初級学校のものだけど、文字は読める?」
「うん、読んで文章の横の空欄に、〇か×。意味がわからなかったら聞いてね」
「はい」
子供用のアンケート用紙みたいな感じ。
設問の隙間に可愛いイラストがある。
枚数は結構あるけど……。
こういうことやっても、きっと僕は普通の子だと思うよー。




