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第10話 おいしいお水のふしぎな効果。


 おいしいお水のボトルと小さなつなげるアイテムを僕は持ち帰った。

 そしてギルドの人もサンクレルに帰っていった。


「いまのところ、これ以上、ダンジョンは大きくならないし、危険はない。ただ……ジャックを呼んでるみたいなんだよな」


 夕食の時、ウィル兄さんがみんなに伝えた。

 お姉さん二人は眉間にしわを寄せてる。

 小さくてもダンジョンだから、危険がいっぱいだとお姉さん二人が心配してるんだろう、

 ギルドの人も検証してくれたのにね。

 僕が持ち帰った小さなパーツはゴーレムの部品。

 これを組み立ててほしいというダンジョンの意志。

 そしておまけのボトル。

 飲料水が入ってるんだけど、不思議なボトルで、たくさんお水が湧いて出る。

 牛舎の牛の水やりをこれでやったのは楽だった。


 餌やりとか水やりは、結構手間がかかるんだよ。

 でも水桶にたぱぱぱって、ボトルのお水を入れたら、牛がみんな喜んでるみたいだった。そしてボトルの中からずーっと湧き出てる。蓋を締めると、水が湧き出ることはなくなる。

 あと畑の野菜にも水やりした。


「おいしくなりますよーに」


 そういいながら水まきをしていたら、お姉さん達がほっこりしたように僕を見てる。

 前世の大人の時だった記憶がうっすらしてきてるとはいえ、あまりにも幼児だったかもしれないと照れてしまった。


「ジャック可愛い~」

「ね~」


 ほんとそれは止めてほしいよ。お姉さんたちにいちいち抱っこしないでって言ったら、お姉さんたちはしゅんとしてしまった。




 そして翌朝の小さな変化。

 みんながうちの牛の牛乳を飲んだ時、一瞬黙った。


「何これ……」

「めっちゃうま」

「うちの牛の牛乳ってこんなおいしかったっけ?」


 兄さんとお姉さん達が口々にそう呟く。


「ジャックのダンジョンの水のせいじゃろ?」


 お婆ちゃんがそう言うと、みんなもそれしかないだろうなと思ったようだった。


「あと~もぎたてのトマトもおいしい~」

「それな、野菜がうまいよな」

「それは昨日ジャックがお水をあげてくれたからよねえ~」


 デイジーお姉さんの言葉に、僕は部屋にあるボトルを思い浮かべた。

 このおいしい牛乳や野菜は、もしかしてダンジョンアイテムの効果……そんな気がする。

 朝ご飯を食べたら、牛にお水をやって、畑にもお水まいてみよう。

 またおいしくなるかもしれない。

 そのあと、ダンジョンに潜らないと。

 またきてねって言われたし、ミスリルのゴーレムとか浪漫を感じるよね。

 僕はもぐもぐと朝ご飯を食べ続けるのだった。



「一人でダンジョンに潜っちゃダメ!」

「ボスもいるから……へいきだよ」

「あたしが一緒にいってくるわ」


 水やりが終わったから、ダンジョンに潜る準備をしてから家をでようとしたらデイジーお姉さんに止めらた。

 デイジーお姉さんの制止の声を聞いたマリアお姉さんがそう言う。


「ウィル兄さんもアーサー兄さんも、Bランクだから、いまいち感覚的にズレがあるかもしれないわ! 子供だけで、もぐって本当に大丈夫か、Dランクのあたしが、ジャックにつきそう」

「マリア!」


 デイジーお姉さんがそう叫ぶようにマリアお姉さんを呼ぶけど、その後ろからお婆ちゃんが言う。


「ジャックがしたいようにさせておやり」

「お婆ちゃん!?」

「ジャックはいい子すぎて、子供らしくないところがあった。家の仕事を必死でやって、わたしも爺さんも心配していた。ここにきてようやく、子供らしくやりたいことを言うんだ、やらせておやり……とはいえ、お前たちもジャックが心配じゃろうし、気が済むまで付き添ってやりなさい」

「お婆ちゃんありがと!」


 僕がお婆ちゃんにそう言うと、お婆ちゃんは僕の頭を撫でる。


「子供らしく遊んでおいで」


 僕はお婆ちゃんを見つめる……お婆ちゃんの多分白内障だった目が、ちょっと澄んできてる気がする……。


「お婆ちゃん……もしかして……おめめよくなった?」


 僕がそう尋ねると、お婆ちゃんは目じりの皺を深くさせて笑う。


「ジャックのお水のおかげかもしれないねえ」


 すごーい!

 僕が言葉もなく飛び上がってると、お婆ちゃんの傍にいたデイジーお姉さんと、僕の傍にいたマリアお姉さんが「え?」っという表情になってお婆ちゃんを見る。


「マリア、どうなってる?」

「……うん、目の様子がキレイになってる」


 マリアお姉さんはほんのちょっぴりの鑑定と治癒魔法が使えるのだ。

 でも、冒険者にはならなくて、メルクーア迷宮都市で病院とか治療院でアルバイトしてたんだって。

 強力な治癒魔法ならウィル兄さん達がいるパーティーにも加入できるレベルだけど、マリアお姉さんはそこまでじゃなくて、アルバイターとしていろんなところにお勤めしていたようです。

 このメルクーア迷宮都市とサンクレルにはそういう人がいっぱいいる。

 ちなみにデイジーお姉さんはサンクレルの人気のカフェの店員でした。

 デイジーお姉さんも、ユジン兄さんやマリアお姉さんと同じで、冒険者になるのにはいまいち魔法もスキルも足りなくて、でも魅了スキルがほんのちょっぴりあったんだって。

 だからお店屋さんでは大人気な店員さんだったって、ユジン兄さんが言ってた!

 だからお店のみんなが、デイジーお姉さんがうちの牧場にきて、残念~って思ってる人もいるとかいないとか。


「なんか俺達が付きそうって話だったのにな……」

「それな……でも、マリアとデイジーが納得したらいいんだろ、今日は俺達は牛の世話をしよう……それと、ジャックをギルドに連れ行って、素養調査してもらわないと」

「それもあったな――……サンクレルまで連れて行かないとな~でも、ジャックが迷子になるかもしれないから怖いんだよな~」


 街には行かないの、ダンジョンに潜るのが先なの!




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