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3話 最後の戦いへ

 ゲイル率いる星の民は壊滅。ゲイルは死に、甲冑騎士もアリシアとアインツマイヤー騎士団の活躍により消滅。西部の戦線は守られ、平穏が取り戻され始めていた。


 だが、傷も癒えないこのタイミングで一通の文書が届く。



 シュバルツ・レオンハルト殿へ


 現状を報告します。アーツバルトは星の民によって制圧されました。アーツバルトの精鋭は消え、戦えぬ者達はホワイトアーツという小さな村に身を潜めています。

 この文書は、最後の手段としてシュバルツ殿と東の中心地に栄えたハインドゴーンの信頼できる少年、アスター殿に託しています。状況について簡潔に示しておきます。現状をしっかりと理解されたうえで、行動ください。



 伝説に語られる女性、ポラリス様が星の剣と二つの塔に封印を施されてから長い年月が経ちました。最近になり、我々はその封印に異変が生じたのを観測していました。封印は急速に効果を薄め、崩壊していく兆候が異形の生命体の出現として現れ始めました。

 数日前。斥候として手配していた騎士達が戻らなくなりました。斥候に選んでいたのは星の力を色濃く宿した精鋭達でした。彼らが戻らないという事は十二名座が降臨してしまった可能性があるということです。  

 我々は最悪の事態を想定し、レーベに侵攻を計画しています。もし、十二名座が降臨していた場合、私達では力不足となる可能性が高い。

 南の塔レーベに封印されていたのは、十二名座最強といわれた獅子座を関するゾディアック。大罪を背負いし男、ディオス・アルマータ。彼はライエ奪還のため、アーツバルトに侵攻することでしょう。

 十二名座の力は我々の力を大きく凌駕する。ですが、彼らの侵攻を許して星の剣の封印が解かれてしまえばこの島も惑星も破滅してしまう。我がイージス家の伝承では、十二名座を率いるスターロード・ライエの目的は銀河全体の平穏に導く事。彼女達が用いる方法は非常にシンプルなものです。それは、知的生命体の抹消。つまり、彼女達が解放されれば人類は真っ先に滅亡させられることとなるでしょう。

 私達アーツバルトは全勢力を持ってレーベに侵攻し、彼らを止めに向かいます。しかし、力が及ばずにアーツバルトを陥落させてしまった場合、星の剣の封印が解かれるのは時間の問題です。ポラリス様が再び降臨でもされない限り、アーカムの全勢力を用いてもディオス達に刃は届かないかもしれない。それでも、力を貸してくださるのなら最大限の準備を。アーツバルトの見取り図と侵攻ルートを示した地図を同封します。ご活用ください。

 急な事態に驚かれている事と思いますが、この島のためにお力を貸してくださると幸いです。


 アーツ・イージス


 文書を読み終え、シュバルツは涙を流す。「アーツ卿…残念です…」と静かに俯く。



 寝室で一人悲しみに暮れるシュバルツの部屋にノックが聞こえる。


 シュバルツは入室を許可し、入って来た壮年の男に驚く。「貴方は…」


 男は帽子を取り、「調子はいかがですかな?シュバルツ様」と丁寧に挨拶しながら微笑む。


 シュバルツは会釈で返し、「どうして君がここに?」と尋ねる。


 男は優しい表情を崩さず、「アインツマイヤーに用事があり訪れていたところ、アーツバルトからの使者にアーツ様の文書を託され事情を話していただいたもので。このロムラ、貴方様との約束を果たすため、馳せ参じたというわけでございます」


 シュバルツは理解が追いつかないと言った表情でロムラを見つめる。「どうして君にアーツバルトの使者が?」


 ロムラは帽子を置き、「私は、遥か昔アーツバルトの騎士として彼らと共に研鑽に励んでおりまして。使者に遣われた者は、私の知り合いの娘様だったのです」と呟く。


 「ロムラはアーツバルト騎士団の団員だったのか…。何故隠していたんだ?」


 ロムラは頬を緩ませ、「騎士団を抜けた事を今でも後悔しているからでございます。若き頃の私は騎士団で研鑽に励む中、自分の限界を見ました。私はその壁を打ち破る方法を見いだせず、騎士団を抜けて放浪することを選びました。そして、かの地に身を寄せる事を選びました。旅路の中で私は多くの事を経験し、限界だと決めつけて道半ばに剣の道を諦めた事を大きく後悔したのです。ですので、あの時の後悔を忘れるため、以前の身分は隠してこれまで生活してきたのです」と優しく告げる。


 「ロムラにそんな事があったとは驚きだ。でも、それなら何故アインツマイヤーに?」


 「私も偶には旅に出たくなります。彼女と会い、貴方様の元に訪れたのは本当に偶然の事です」


 「そうか。足を運んでくれた事には感謝するが、私達アインツマイヤー騎士団は壊滅した。キースとニックは残された人々の統率を私の代わりにやってくれている。民の受けた傷はあまりにも大きい。今彼らを連れていくことは不可能だ。私だけで行ったとて状況が変わるとは思えないが…」と呟く。


 ロムラはシュバルツに視線を合わせ、「私は、シュバルツ様の力とご友人の方々の力を見て確信しました。私達であれば一矢報いる事ができると。何故なら、シュバルツ様には以前お会いした頃とは見違えるほどの星の力が循環しておられる。老いた我が身にも、微かながら星の力は巡っております。手も足も出ないという結果にはなりますまい。それに、指をくわえて終末を見守るなぞ、私達の性に合わない。そうでしょう?」と煽るように尋ねる。


 シュバルツは差し出された手を見つめ、「時間をくれ。明後日、答えを出す」とだけ伝える。


 「承知いたしました。どのような答えであろうと、私はシュバルツ様の選択を尊重いたします」と告げ、ロムラは静かに部屋を後にした。


 シュバルツは誰も居ない部屋でただ一人、天を仰ぐ。

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