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30話 真意

 「最近、スターロードを名乗り惑星に介入行動を行っている星の民が現れたそうです」


 「そう。スターロードの名は古くからこの星界に伝わっている伝説のようなものよ。それを真似る者が居てもおかしくはないわ」


 「ええ、そうですね。実際のところ、その星の民はライエ様とは違い一人で行動しているそうです。スターロードは規則上攻撃的な介入行動は許されていません。スターロードとして介入するには眷属などの他者の力が必要となるはずですから、その星の民は本当のスターロードではないのでしょう」


 「そうね。でも、そうやって勝手な事をされれば私達の立場に影響が出るかもしれないわ。レグルス、その星の民の名は分かるかしら」


 「はい。その星の民の名は…ポラリス。スターロード・ポラリスと名乗っているそうです」


 「…。覚えておくわ」



 程なくして、お父様は私にスターロードの責務を与えた。お父様はスピトールという惑星で人類の為にスターコードを使用したからだ。そうしなければあの荒れ果てた土地を止める事は出来ないと。でもそれは、たった一つの惑星の為に自らの命を捨てるという意味だった。スターコードとは、アトラシア様の力の断片そのもの。つまり、星の民ですら手の届かない奇跡をも起こす力の事だ。神の力を断片ながらも顕現させるというのは、どれ程の力を有する星の民であっても代償を伴う。その代償とは、使用者の完全消滅。

 お父様はそれを分かっていながら、スターコードを使用した。人類はお父様の軌跡に触れ、真実を知り団結した。程なくしてスピトールは戦い無き穏やかな惑星となった。たった数億年だけは。私がスターロードとして惑星の秩序を取り戻した後。スピトールは再び紛争が支配する欺瞞と争いに満ちた醜い惑星になっていた。多くの時間を得ていながらも成長せず、資源の枯渇を招いていた事が発端だった。

 私はその光景に涙が止まらなかった。私達にとっては瞬きするまでもないほどの短い時。そんな時間を守る為だけにお父様は自身の身を捨てたのだと分かったから。


 私はスピトールへは介入せず、お父様と訪れた惑星を辿った。介入した事で平穏が続いていた惑星もあった。だけど、スピトールのように戦争に戻ってしまう惑星もあった。私はその旅路の中で、お父様の言葉を思いながらスターロードとして責務を全うした。数えきれない程の時間を超えた。そして、私は一つの結論を出した。人類こそが惑星の平穏を乱す要因だと。スピトール、タイケミル、アコード。どの惑星もその地を荒らしたのは人間だった。惑星との調和を乱し、時の流れでは癒しきれない程の傷を与え続けていた。奴らこそが、スターロードが介入すべき存在だ。


 私は、旅路の中で出会った力ある星の民を集結させた。十二名座と名付け、眷属としてスターロードの責務を共に行う存在とした。そして、レグルス達と共に数えきれないほどの惑星に介入し、正常な発展に分岐させてきた。私達が居なければ大きく辿る道が逸れた惑星は多かった。私達の旅路の後に残ったのは人類を省いた生態系と数パーセントの焦土のみ。


 過酷な旅路には意味と誇りがあった。私は、彼に託されたこのスターロードとしての役割を全うする事に喜びを感じていた。それまでの孤独な自分より充実していたから。お父様の意思を継げたと思っていたから。


 なのに…。彼女はその道を遮った。間違っていると告げた。何も間違ってなんかいないのに。ポラリスはいつもこう言った。「スターロードの責務とは、生存する全ての生命体の平穏と秩序を守り、星の民の過剰な介入による軌道のずれを修正するためにある」と。そんな事は綺麗ごとに過ぎない。人類なんて愚かな種族を存続させて星の民の介入を牽制したところで、惑星に平和は維持されない。文明が人類だけの言葉かのように、人類を中心とした考え方で介入するのは間違ってる。人類は他種族を絶滅させ、生態系を乱す。本来辿る必要のなかった運命を手繰り寄せ、惑星を脅かす存在なのに。

 人類を根絶しないと、スターロードの使命が終わる事はない。それは、お姉ちゃんも私と一緒に最後まで苦しみ続けるしかないって事だ。お父様はこれ程までの無力感を感じながら責務を全うし続けていたんだ。


 その元凶は、アトラシアだ。惑星の介入を続けていれば、いずれあれはこちらに向く。お父様の話でもアトラシアはこちらを見ていると言っていた。だからこそ、私はその時。アトラシアをも殺してこの責務を終わらせないといけない。


 だからこれは、あの子を守るためだったのに…。



 目の前の光景がどうしても理解できない。彼女は退いてくれるはず…そう思っていたのに。どうして彼女は今、私の目の前でその体を光に変えているのだろうか。


 身体が勝手に動く。フラフラと近づいてくるポラリスに手を伸ばす。


 ポラリスは力無く微笑む。「私を甘く見るからこうなるんだよ。自分の思い通りに行かなくて、本当にしたいことに手が届かなかったからって自暴自棄になっちゃダメ。人類を根絶する事がスターロードの使命なんかじゃない。貴方は分かってる。そうでしょ?」


 「何を…言って…」


 「ふふっ。知ってるんだよ、全部。貴方がしようとしてくれていた事。私はそれが知れて嬉しかった。けれど、私は貴方が道を違えるのを見るのが寂しかった。常に最前線に立ち、星界と惑星の全てを見守るスターロード。貴方は全ての星の民が尊敬する存在なんだから。一人の為に全てを捨てようとしないでほしかった」


 「どうして…貴方はどこまで知って…」


 「ライエは知っているんでしょう?私の目。私には全ての可能性を辿る未来視に匹敵する能力が与えられてる。私はここに来てから今に至るまで、何度も繰り返した。貴方が死ぬ未来を変えたくて。けれど、どうしても上手くいかなかった。貴方の行動の理由が分からなかったから。貴方はどの未来でも、最後には死を選んでしまう」


 「何度も繰り返し、この惑星を破滅させたとき。貴方はそれを語ってくれた」


 ポラリスはライエを抱きしめ、呟く。「貴方は、私の自由の為に。ただそれだけの為に自分の積み上げてきたものを捨ててしまっていた。それは、生まれた時からその使命を与えられたお父様や私を憂いてくれていたからだった。そうなんだよね…」


 ライエは消えつつある彼女を抱きしめ、涙を流す。「そう…。全部ばれていたのね…。それじゃあ、私が必死にやってきた演技も意味なかったんじゃないっ…。そういう事は早く言ってほしかったわ…。貴方とは違って、私は過去には戻れない。貴方とはもう、話せなくなるのよ…」


 「ごめんね…。けど、おねえちゃんが強情なのが悪いんだよ…。何回言っても聞き入れてくれないから…。だから、私はこうやって手順を踏むしかなかったんだから。」


 「ちゃんと言葉で伝えてくれないと私には分からないわ…。まったく、こんな無茶ばっかりして…。それで、貴方はもう未来がみえてないの?」


 「え…?う、うん。私の権能は全部捨ててしまったから…」


 「そう。じゃあ、おねえちゃんとして、貴方に星の力の使い方を教えてあげる」


 「え…?」驚きと不安が急激に募る。消えゆく身体が鼓動を強める。


 「スターコード・アクティベート」


 「ま…待ってっ!んっ!」ポラリスの口を手で抑え、「権能剝奪。希望を叶える流星よ。今一度、この者に奇跡を与えたまえ」「嬉しかったわ。ポラリス。貴方が私を止めようとしてくれた事。けど、たった一人の妹が居なくなる世界を進むことだけは出来ないの。だから、これでおあいこね」ライエは優しく微笑む。「星の力を、その導きを示したまえ。ロード・ノヴァ」


 ライエの核が輝き、白銀の光が広がる。その光は彼女達を包み、天に放たれる。天から光が降り注ぎ、その一筋の光が一人の少女に宿る。天からの光が収束し、白銀の光がポラリスの核を埋め、身体を再形成させる。


 ライエはポラリスの肩を持ち、トンっと押す。「私の核を上げる。妹にどう使われても文句はないわ。貴方が生きていられるならね」そう言い、崩壊する光の中で笑う。


 ポラリスは自身を包み込む白銀の光を見て目を見開き、「どうしてっ!私が消えて、おねえちゃんが残れば、事態は収拾する…。悲しむ人だっていなかったはずなのにっ…。皆がおねえちゃんを待っているんだよ?!おねえちゃんが消えたら悲しむ人がいっぱいいるんだよ!」


 ライエは自身の口元に指をあて、「そんな悲しい事を言わないで。妹が居ない世界に私は意味を感じない。私は、こんな世界よりも貴方の自由を望んだの。そうじゃなきゃ、こんな馬鹿げたことはしないわ…。それに、貴方はいつも一人じゃなかった。そうでしょ?」と優しく微笑む。


 「じゃあね、ポラリス。私の一番大切な、ただ一人の可愛い妹」ライエは手を伸ばすポラリスにもう一度笑いかけ、光に消える。


 「ああ…そんな…」霧散する光を掬い、消え去る温かみを抱く。力に馴染み始めた自身を悲しみながら…。


 ライエの消滅により星剣から白銀の光が放出されていく。雪のように降り注ぐ美しい光に抱かれながら、剣はその役目を完全に失っていった。

 白銀の光はアイオス全体を照らし、その光が意味する事を星の民達は理解した。彼らも攻勢を止め、闇夜に紛れて撤退していった。


 その後、アスター達一行はそれぞれの場所へ帰還したと記録されている。しかし、アスター、シュバルツのそれ以上の記録は存在せず、代わりにミーティアや残された人々が各地の復興を指揮したとされている。

 ポラリスはミーティアに手を貸し、彼女がその役割を終えた後に表舞台から姿を消している。その後、各地では常人ならざる力を持ちし刺客の噂とそれに対峙する一人の少女の話が語られるようになった。

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