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29話 責務

 光が収束する。二人は亀裂の走った防護陣に覆われ、剣同士を打ち合ったまま立ち尽くしていた。


 シュバルツはサッと後退し、「やはり守るか。レグルスの為か?それとも、お前自身の為か?」と尋ねる。


 ライエは光の剣を降ろし、「勘違いしないことね。レグルスの身体を乗っ取っているからといって私に敵うことなどありえない。それに、たとえ誰であっても私の障害となるなら消すわ」とシュバルツを睨みながら答える。


 「まあそうだろうな。だが、盤面はこちらに傾いたようだな」とシュバルツが答えた直後、緋色の光が視界の端に煌めく。


 ライエは見向きもせずに防護陣を展開し、簡単に受け止める。「さっきより弱いわね。限界が近いのかしら。英雄様?」と嘲笑う。直後、溜息を吐きながら直上に防護陣を展開し、空から放たれた螺旋の矢を受け止める。


 「クッ…。ダメですか…。」ミーティアがスッと空から舞い降り、苦い表情を見せる。


 「もう十分です。もう終わりにしましょう」溜息を吐き、覚悟するように手を空に掲げる。ライエの元に再び白銀の光が集い始め、勢いを強めていく。光は風となり、風は暴風となり、暴風は彼女の内包する力を増大させていく。


 「私が受け継いだスターロードとしての力。その力は私の眷属である十二名座全てをもってしても届き得ない極地。その力が放たれたらどうなると思う?この島は完全に消滅し、周囲の陸地も気候の変化や副次的な災害に巻き込まれることになる。最悪の場合は不毛の大地とさえなるでしょうね。さあ、最後の時よ。ポラリス」


 ライエは言葉通り、表出する全ての力を一点に集わせていく。身体の末端から光をゆっくりと巡らせ、溢れだす力は壁となり周囲を圧倒する。


 ミーティアはすぐさま大弓を構え、螺旋の矢を顕現させる。引き絞り、「竜をも落とす大矢の力でッ!」解き放つ。反動で軽い衝撃派が現れ、空気を切り裂いて突き進んでいく。しかし、彼女の暴風壁は間近まで迫った矢を容易く砕き、塵へと変えてしまった。


 シュバルツが大型の魔方陣を重ね、氷雷の槍を顕現させる。「今できる全力でッ!」魔方陣が煌めき、大槍が撃ち出される。大槍は暴風壁を乱し、拮抗しながらも目前まで迫る。しかし、勢いのほぼ全てを失った槍にライエを崩す程の力はなかった。「クソッ!ならッ!ゾディアックコード・アクティベートッ!」シュバルツが手を掲げると、小さな光が顕現され、光は周囲の大気を吸収して暴風を内包する。大気を集約し、白銀の光が織り交ざった光球を降ろす。白銀の光を纏い、白銀の嵐に嵐の宝玉を突き出す。「この一撃で止まるんだッ!キングス・ロアッ!」宝玉から白銀の光が混じった嵐が解き放たれ、一筋の閃光となって白銀の暴風壁を退ける。そして、少女の体躯をも飲み込んで世界を照らす。

 解き放たれた力が雲を退ける。隠されていた夜を照らす光が姿を現し、淡い光が降り注ぐ。


 しかし、そこには傷つきながらも立ち尽くし、力を集約させた少女の姿があった。


 「惜しかったわね。これで終わりよ。何もかも」ライエはそう呟き、光を解放する。


 ポラリスは三人の前に立ち、覚悟を決めたかのようにライエを睨む。「何も終わってなんかいない」金色の光を纏い、髪が揺れる。「たとえどれほどの犠牲を払おうとも、私は貴方を止めて見せる!」言葉に呼応するように急激に強まる金色の光がライエの解き放った光と拮抗し、中和するように霧散していく。



 白銀の光の先に立つ少女を思い、力無く微笑む。覚悟はしていた。こうなるんじゃないかって思ってた。でも、いざやるとなると怖いな…。はあ、皆はこんな恐怖の中で私と共に歩み、道を切り開いてくれたんだね。絶望にあがき、どれだけ傷ついても、泥を被ろうとも立ち上がって抵抗する。その先に待つのは理想郷ではなく、ただただ辛い現実であったとしても。私は、共にあってくれた彼らと同じように。彼らと共に並んで立つために、二度と後悔することのないように一筋の光となりましょう。


 「ここからは私の出番です。私の全てをもって、かの敵を打ち滅ぼしましょう。たとえ全てを失おうとも、貴方達を助けましょう。私はスターロード・ポラリス。星界を統べ、全てを見守る者。今ここに、その全てをもって彼女を宙に返しましょう」


 手を伸ばし、詠唱する。最初で最後の全力。全てを捨て、目の前の人々を助けましょう。アレス、私はもう貴方のように見捨てはしない。「スターコード・アクティベート。権能剥奪。星界航行能力消失。宙の瞳、返還。」


 「ロード・ノヴァ」


 ポラリスの前に暖かい銀河の光が広がり、全ての星の力を消失させる。光は彼女の眼前からどこまでも広がり、空も大地をも包み込んでいく。そして、一滴の金色の光がゆっくりと彼女の前で零れ落ちる。一瞬の無が過ぎ去り、その全ての力が解放される。全ての人々を、アイオス全体に広がった光はその全てを包み込む。



 その瞬間、ポラリスとライエは目を合わせる。驚きと悲しみが込め上げ、呆然と立ち尽くすライエは、身体の先から霧散していくポラリスに手を伸ばす。「ポラ…リス…?」


 ポラリスは優しく微笑む。「私は今、すごく満足しているの。後悔はない。これでいいんだ」自身の権能、力が散り、その光は今を生きる全ての人々をも包み込む。

 星の光に包まれ、優しく輝く島を俯瞰して笑う。ポラリスはライエに手を伸ばす。


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