27話 総意を背負う者
星剣前
魔方陣が地面に描かれ、三人の人影を作り出す。影は実態を纏い、彼らは目を開く。
そこに、乾いた拍手の音が響く。「生きていたのね、褒めてあげる。」
ポラリスは少女を睨み、金色の光を纏う。
ライエはその様子に驚く素振りも見せず、「あら、話も聞いてくれないの?悲しいわ」と溜息を吐く。
「貴方に話すことなんてないっ。今すぐそこをどいてッ」
「嫌よ。ここでわざわざ待っていたのが何のためだと思っているの?剣に力が集う時まで、私は貴方達を足止めするわ」
「ならッ!無理にでも押しとおりますッ!」と金色の光を展開し、式を展開する。
ライエの周囲を取り囲み、八つの点が線を繋ぐ。「監獄で眠りなさいッ!」その声に呼応するように金色の点が輝き、繋がれた線同士が展開される。
ライエはポラリスの展開した金色の立方体の中で笑う。「フフッ。こんな玩具で私が止まると思っているの?ポラリス」と呟き、指をパチンと鳴らす。ライエの身体から白銀の力が波動のように広がり、白銀の光と金色の立方体が拮抗する。
立方体が軋み、亀裂が生じる。白銀の光は立方体をガラスのように砕き、さらに膨張する。
「貴方の力では私を止められない。貴方のお遊びには付き合っていられないわ。ポラリス。」ライエは指を再びパチンと鳴らし、周囲に展開された球体の光を崩壊させる。
そして、ポラリスに向けて手を伸ばす。その動きに呼応するように、ライエの背後から無数の魔方陣が展開される。
ポラリスは驚きの表情を見せ、「ダメッ!それを使えば、貴方はもうッ!」と手を伸ばす。
ライエはその様子を睨む。「この私が、今更代償なんかに恐れる訳がないでしょッ!果てなさいッ!ポラリスッ!」叫びながら、手を握るライエに呼応するように魔方陣が起動し、白銀の槍が撃ちだされる。
白銀の槍は放物線を描き、ポラリスに向かって誘導されていく。
ポラリスはへたりと座り込み、ライエを見つめる。「ああ…。ああ…。なんて…事を…」
即座にミーティアが彼女の前に立ち、防護陣を展開する。白銀の槍は無慈悲に防護陣に突き込まれていく。
亀裂の走る防護陣に力を込めながら、「ポラリス様ッ!気を確かに持ってくださいッ!」と叫ぶ。
アスターがライエに向かって駆け出し、緋剣を振るう。ライエはアスターを一瞥して手を向け、彼の攻撃を最小の防護陣で受け止める。「英雄…ね」ポツリとつぶやき、白銀の防護陣に光を込める。
防護陣から衝撃波が撃ちだされ、アスターの身体が地面に叩き落される。土煙が舞い、彼の姿が隠れる中、内部で緋色の輝きが漏れだす。
土煙が即座に晴れ、緋色の斬撃が風を斬る。
ライエは即座に防護陣を重ねて応じる。緋色の斬撃は防護陣を揺らし、拮抗する。斬撃は防護陣を軋ませ、その輝きを強めていく。防護陣に込められた白銀の光は急激に霧散し、砕け散る。
ライエは防護陣が砕けた状況に目を見開き、両手を斬撃に向けて円形の陣を斜めに展開する。緋色の斬撃は円形の陣に触れた途端にそれを砕いたが、進行方向を変えられて地面に叩きつけられる。
直後に金色の防護陣と青い防護陣が三人を覆う。ライエも球体の防護陣を纏い、衝撃に備える。
緋色の斬撃は地面に触れた途端にその光を膨張させ、大きく爆発する。轟音と衝撃が轟き、暴風が全員を越える。木々が悲鳴を上げ、地面が大きく抉られる。
ライエは直下の爆撃を見つめ、「何て力…。人間如きがどうしてこれほどの…。」と驚いたように呟く。
一瞬気を逸らしたライエに向かって風を切る音が響き、彼女は即座に回避行動をとる。直後、その体を光の矢が横切り空を裂く。
「外したっ…」大弓を構えるミーティアが苦い表情を見せる。直後、合わせるようにアスターがライエに迫る。
体勢が崩れたライエは即座に防護陣を展開するが、アスターの振り下ろした一撃は即興の防護陣で相殺できるものではなかった。抵抗の余地もなく一筋の光となり、ライエは叩き落される。アスターはすぐさま身体を翻して緋色の斬撃を飛ばして追撃する。
しかし、斬撃は土煙に飲み込まれるように消え、衝撃なく消える。
直後に三重の防護陣と金色の加護が付与され、「防御してください!」とポラリスの声が響く。
その声と同時に緋色の光が土煙の中で輝き、無作為に全方向に弾丸のように飛ばされる。緋色の弾丸は何かに触れた途端にそれを崩壊させるように爆発し、全てを抉る。
金色の防護陣が一瞬にして砕け、アスターはその爆風に吹き飛ばされる。
ミーティアとポラリスも、展開した防護陣が砕かれた衝撃で吹き飛ばされてしまう。
地に伏す三人を見下すように、悠々と歩く音が響く。「ポラリス、教えていなかったの?私達ロードがどのようにして惑星を守ってきたのかを。私達スターロードは星神アイオスの規則に基づき、直接的な干渉が禁じられている。私達が出来る介入行動は大きく三つ。ポラリスのように現地生命体に力を貸すか、眷属を使うか。それか、悪者の力を使うか。私達スターロードは、放たれた力を変換して返したり受け流したりすることを得意とする。攻撃が許されない私たちにとって、唯一の自衛手段であり、最大の武器ともなるから。馬鹿みたいな規則の抜け道みたいなものよ」
「つまり、貴方達は全力を出せば出す程自身を危険にさらすのよ。けれど、私を倒したければ全力以上で挑まねばならない。さあ、どうするの?ここで諦めることも許してあげるわ。」
三人は苦しみながらも立ち上がり、自身の力を顕現させる。
「あら、この話をしても戦意を保ったままだなんて。なら、もう一つ。私はさっき、その規則を破った。アイオスの裁きが下されるまでの間、私は攻撃もするわよ」淡々と告げ、背後に無数の魔方陣を展開する。
「おいおい…今更自分の死を恐れる馬鹿がいるわけないだろ。僕達はお前と違って自身の命だけでここまで来ているわけじゃない。ここに至る為に繋げてくれた多くの人々の命を背負ってきてんだよッ!その程度の脅し文句でてめえの蛮行を見逃すわけがないだろッ!」アスターはライエを睨み、緋剣の輝きをさらに増大させる。
ミーティアとポラリスもその言葉に賛同するように光を強める。
「ふーん。そんなちっぽけな理由で立ち向かうんだ。まあどうせ、尻尾を巻いて帰っても居場所なんてないものね。英雄とは、求められた成果を上げて帰還した者の事を言う。そこまでに至った犠牲の有無なんて関係ない。こうして向かってくる貴方は、無名の犠牲の一人になるのが怖いのよ。今まで積み上げてきた全てが無駄で、貴方なんて存在しなかった。そう言われ続けた貴方は、それが怖くなってしまっている。いいわ。貴方が満足するまで相手になってあげる。全人類の命運を背負ったままに死ねたなら、少しは満足できるでしょう?」
「いつまでその澄ました顔を続けられるか、楽しみだなッ!ライエッ!」アスターは叫び、飛び上がって斬撃を飛ばす。空中を蹴り、ライエの元に突撃する。




