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25話 反転

雫は次第に形を作り始め、一体にガラスが砕けるような音が響き始める。「貴様は無名の星の民でありながら招集に応じず、あまつさえ人類の味方をした。その責任を刻み込み、果てろッ!」アリエスの声に呼応するように、周囲に響いていたガラスの音が徐々に中央に迫り始める。


 シンは大太刀を納刀し、深く構える。地面を強く踏み込み、空気が凪ぐ。周囲を圧倒する程の気迫が轟き、天に向けて刃が振るわれる。大太刀の斬撃は展開されていたアリエスの領域をも綻ばせ、光を差し込ませる。直後、シンの周囲のギリギリまでを死の雨が降り注ぎ、周囲一帯を赤く染め上げる。シンは深く息を吐き、再び納刀してアリエスを睨む。


 「コード…。自身の力を超えた超常現象。それはただの星の民では目指す事すら出来ぬ最奥。そんなものに頼らねば無名の星の民一人を足止めできぬとは。ゾディアックが聞いてあきれるぞ、アリエス。」


 「星の民を先導する存在たるスターロード。その眷属たるゾディアックが…。役割を理解しないままに盲目に付き従っている様では話にならない。今一度その頭で思案し、身の振り方を考えることだ」言葉が耳に届くのと同時に、土が舞う。


 シンの姿は消え、アリエスの髪が揺れる。直後、アリエスの背後で鞘と鍔が触れる音が響く。


 アリエスの身体から鮮血が飛び、膝をつく。彼女の口端から血が流れ、信じられないとばかりに目を見開く。「バカなッ…。貴様…一体…何…者だ…。」そう呟き、静かに地面に伏す。


 シンはその様子を一瞥し、星剣を睨む。そして、暗闇に消えるようにその場を去る。




 同刻


 「人間如きが私の道を阻むか。愚かだな」レグルスはロムラを見下しながら吐き捨てる。


 ロムラは息を整え、静かに剣を構えなおす。地面を蹴り、流れるように剣を振るう。剣が触れ合い、直後に反転して斬り返す。レグルスは即座に反応し、剣で受け止める。レグルスは即座に空いた手を突き出す。ロムラは直感で後退し、それを追うように地面が割れ、天を貫くが如く光が照射される。ロムラは光柱を避けつつレグルスの懐に飛び込み、剣を斬り上げる。即座に反応され、回避するよりも早くに腹部に拳が突き込まれる。直後に腹部に強烈な衝撃が走り、ロムラの身体が弓のようにしなり、吹き飛ぶ。


 地面に強く打ち付けられ、地面に伏すロムラに対してレグルスはもう一度手を振るう。地面が再び割れ、光が漏れ出すのを感じ取り、辛うじて飛び退く。


 「ほう…?」抵抗の意思を継続させるロムラに驚きの声を洩らす。


 ロムラはふらつきながらも剣を握り、レグルスを睨む。再び駆け出し、レグルスの懐に飛び込み、低い姿勢で斬り込む。即座に反応するレグルスの動きに合わせて体を捻り、剣を当てないように通過しつつ反転して斬り込む。


 しかし、レグルスは振り返らずに手を背部に回し、ロムラの攻撃を受け止める。「その程度の速度と威力。反応できないわけがなかろう。人間の全力など知れた事。どれほど頭を回そうと私に触れる事すら敵わないぞ」


 ロムラはすぐさま後退し、肩で息をしつつ剣を握る。再び地面を蹴り、真正面から剣を振るう。簡単に反応されるのを気に留めず、斜めに斬り上げる。勢いのままに体を捻り、横薙ぎ、続けて斬り降ろし、斬り上げ。最後は…踏み込んですれ違いざまに一閃。


 平凡な剣戟の中のただ一つの一閃。直後、レグルスの腹部に鮮血が走る。腹部を抑え、手に付着する自身の血を見つめて驚くように目を見開く。「体が反応しなかった…何故だ…」


 ロムラは後退しつつ微笑む。「シュバルツ様との稽古ではいつもこの手順で打ち込んだものです。貴方が反応できなかったのは、最後の打ち込み方が違うからです。私はいつも、最後に斬り降ろしをしていたのです。貴方のその人格にシュバルツ様の意識が無いとしても、彼の何かを貴方が学習しているならば反応できない動きのはずです。」


 レグルスは苛立つようにロムラを睨む。「貴様…。人間如きが…。調子に…」そう呟いた瞬間、レグルスが頭を抱える。「何だ…何が起こっている…。」レグルスは剣を手放し、顔を覆う。「グッ…意識が…何が…」苦しみながら抵抗するように力を込め、よろめく。


 ロムラはその様子を見守り、「きっかけさえできれば、綻びが生じる。完全な世界を用意していたとしても、現実ではない楽園などに意味はない。内側に閉じ込められた意識は、今もなお逆転の機会を狙い続けているはずだと彼女は言いました。貴方の行いは正しいのか、間違っているのか。それは誰にもわからないでしょう。ただ一つ言えるのは、生み出された物はそう易々と貴方の思い通りにはなってくれないという事です。」と告げる。


 苦しみながらも顔を上げ、「知った口をきくなッ!人間ッ!」と苛立ちを見せる。


 「きっとそこに行けば貴方も理解するはずです。夢の中の楽園で生かされる事がどれほど空しく、残酷な事か。」


 レグルスは苦痛で顔を歪ませながら、ゆっくりと近づいてくるロムラに手を突き出す。収束した光が撃ちだされ、彼の身体を貫く。ロムラは身体を貫かれたのを気にも留めずにレグルスに迫り、手を差し伸べる。


 瞳の光を失いながらも立ち尽くすレグルスの身体から、光が漏れ出す。光はレグルスの身体に宿り、ロムラの手に触れる。直後、ゆっくりと瞳の光を取り戻すレグルスを見つめ、ロムラは優しく微笑みながら瞳を閉じる。

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