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23話 剣聖

 浮遊剣が空気を揺らし、疾風が如く突き込まれる。ロムラは静かに剣を構え、静かに振り下ろす。確かな修練により修められた剣術が物語る確かな剣筋、足取りがこの場を無の世界に導く。


 カラン…カラン…。浮遊剣が一つ一つと力を失い、地に落ちる。最後に迫った獣が彼の横を通り過ぎる。ロムラは剣を払い、静かに霧散させる。その背後でバタッと大きな質量の物が倒れる音と共に。


 割れたステンドグラス越しに見える星を見上げる。(アーツ様。未熟な私を拾ってくださり…ともに歩くことを、離れる事を…笑って許し続けてくれた我が主。貴方様には数えきれないほどのご恩を賜りました。我儘を言って貴方様のお側を離れ、長い年月が経ってしまいました。たった一度でも、貴方様にお返しすることができなかったこのご恩を…私は一生悔いてしまう事でしょう。貴方様はそれでもあの時のように笑って許すのでしょうね。勇敢で思慮深い我が友よ、明るき空の上からどうか見守ってやってください)


 静かな祈りを終え、再び異形の生命体の渦に飛び込んでいく。




 イージス邸を抜け、指揮の塔を見上げる。「あの光は…」「これは…。」二人して声が漏れる。


 アイオスに突き立てられた星剣を包み込むように輝かしい光が降り注いでいた。そして、その光に呼応するように剣が淡く発光していた。


 アスターは唇を噛み締める。「もう時間はないな…。クソッ…」


 「あの剣は本来、ライエの力を放出する為に突き立てられた物です。放出された力を私の力で中和して霧散させ続け、彼女の力を永久的に削ぎ続けるように作りました。ですが、私が剣から弾かれてしまった今、彼女の力が剣を満たすのは時間の問題です。剣の制御を手に入れ、あれを起点に力を放出されればこの惑星はひとたまりもないでしょう…。先を急ぎましょう。ライエを止めなくては」


 アスターはその言葉に背中を押されるようにポラリスに続く。




 星剣前 平野


 アーツバルトを抜け、星剣の建つ平野に出る。そこには、星明りに照らされる男の姿が見えた。


 「シュバルツ様…」


 「やはり、我がロードのお慈悲を無視してこの先を目指すか…。どこまでも愚かだな、ポラリス。ちっぽけな力しか持たぬ貴様が何を考えているかなど興味はないが、命乞いとしてなら聞いてやってもいい」


 「貴方達には理解できないでしょう。さあ、時間稼ぎなど必要ありません。かかってきなさい。私達を下せるなら」


 レグルスは口角を上げる。「面白い。そこの戦士がどれほどの強者であろうとも、我ら十二名座二人を相手になど出来るはずがない。誇れ、人類の英雄。スターロードが眷属、十二名座が直々に相手をしてやるのだ。またとない光栄な事であるぞ」


 アスターは静かに緋剣を顕現させ、構える。


 レグルスは水晶大剣を顕現させ、剣を品定めするように眺めてから払う。「来い、人類の英雄。時間まで遊んでやろう」


 アスターはその言葉に応えるように地面を蹴る。可能な限りの全力の速度でレグルスに迫り、剣を振るう。剣同士がぶつかり合う。構えすらしていなかったレグルスはアスターの剣を受け、片手の膂力で圧倒する。簡単にアスターの剣を押し返し、後退する彼の顔を見て笑う。「この程度か?人類の英雄…?クククッ」アスターの前に瞬時に迫り、剣を当てる。そして、押しつぶすように少しずつ力を加え、アスターの体勢を崩していく。

 アスターは緋剣を霧散させつつ身体を捻る。レグルスの剣が体に触れるより早く反転し、再び緋剣を顕現させて横薙ぎにする。「その程度の小細工が通じると思っているのか?」とレグルスは素手で剣を受け止め、アスターを睨む。

 アスターはすぐさま緋剣を手放し、霧散させながら後退する。レグルスは剣を砕くように拳を握り、霧散する光を眺める。「この力は…。純粋な星の力…。それも、二つの力が練り上げられて構成されているように見える。こんな物は初めて見る…。興味深い」そう呟きながら、レグルスの瞳が怪しく輝きアスターを見つめる。

 「ほう…。貴様、面白い…。このような事は初めて見る…。ポラリスの力の影響を強く受けた人類が星の民となった。そして、その力の全てを立った一振りの武器として注ぎ、お前に託した…。アレスとやらは相当な変わり者と見える」瞳の輝きを鎮め、レグルスが剣を構える。「アリエスが気にかけた理由がわかったぞ。私にも本当の力を見せてみろ」


 レグルスの姿が消え、直後にアスターの身体が吹き飛ぶ。吹き飛ぶ彼の身体がへの字に曲がり、宙を舞う。レグルスの姿が彼と重なり、剣が振り下ろされる。


 地面が砕け、衝撃が轟く。土煙があがる中、叩きつけられたアスターの元に水晶大剣を放る。金色の防護陣が煙を晴らし、水晶大剣を受け止める。レグルスは空中から大剣を蹴り込み、防護陣を容易く砕く。勢いのままにアスターに剣を振るい、大きな衝突に暴風が吹き荒れる。レグルスの眼が赤く輝くのと同時にアスターの直上から一振りの剣が放たれる。アスターが即座に後退し、二人の間に剣が突き立てられる。レグルスは剣を抜き去りながら体を捻り、水晶大剣を放る。そして、大剣がアスターの元に辿り着くよりも早くに彼の目前に迫り、隆起した岩に叩きつける。同時に彼の真横に剣が突き立てられる。

 レグルスはアスターをゼロ距離で睨み、残念そうに首を横に振る。「なぜ本気を出さない。貴様、力を出さずにこの私の相手が出来ると思っているのか?それとも、本気が出せないのか?」

 興味を損ねたようにアスターの元から離れ、レグルスはポラリスの方へ視線を向ける。そして、水晶大剣を顕現させて地面を蹴る。ポラリスは金色の槍を放って応じるが、レグルスは容易くそれを砕き、彼女の元に迫る。レグルスが目前に迫り、苦い表情を見せながらも防護陣を展開する。レグルスは赤い光を空中に放ち、槍を顕現させる。槍は防護陣に突き立てられ、甲高い音を立てながら強大な爆発を引き起こす。衝撃で防護陣が砕け散る音が響き、煙が立ちこむ中をレグルスは迷うことなく直進する。そして、地面に伏すポラリスを見下ろし、剣先を向ける。「終わりだ。直にこの地は消滅する。貴様はその最後を見届けることなく一人で星界に戻り、悔いるがいい。そして、二度とロードに歯向かうな」レグルスは剣を構え、迷うことなく振り下ろす。しかし、その剣は彼女の身体を貫くことはなかった。

 レグルスは口角を上げる。「力を使う気になったか。いいだろう。もう少し遊んでやろう」後退し、再び剣を構える。アスターの握る緋色の剣はその光を強く放出し続けていた。

 アスターが地面を蹴る。緋色の光が軌跡を残して迫り、勢いの乗った剣を振るう。とてつもない衝撃が轟き、音の波動が周囲を圧倒する。

 アスターの全力は立ったままのレグルスに簡単に受け止められ、拮抗していた。片手で持った剣で受け止めたレグルスは、手を掲げて赤い光を放ち、振り下ろす。アスターの直上で光が煌めき、光の雨が降り注ぐ。

 アスターは避けることができないことを悟り、構える。しかし、エネルギーの雨が彼に到達する直前に爆発する。彼の頭上には金色の防護陣が展開されていた。


 「レグルスはただの星の民ではありません。彼は、力を奪った全ての星の力を自在に行使することが出来ます。シュバルツ様の水晶大剣は、貴方の剣と同様にその力の全てを内包しています。緋剣を全力で振るっても同等の立場にすら届かないのです」


 「説明する手間が省けて助かる。その通り。私は言わば魔術師のようなものだ。多くの魔法を選び、最適に使うことが出来る。君達のように単純ではないのだよ」

 レグルスは手を突き出す。掌を開き、降ろす。直後、空に大きな亀裂が生じ、赤い輝きが漏れ出す。直後、亀裂から赤い光が杭のように突き込まれ、辺り一帯を照らす。


 ポラリスが金色の防護陣を敷く。レグルスが掌を上に向け、握り込む。呼応するように杭同士が甲高い音を立て、その輝きを瞬時に強める。直後、一帯が一つの爆発に包み込まれ、焦げた匂いと火の粉がちらつく。同時に金色の光が砕け、レグルスが迫る。アスターも同時に地面を蹴り、剣を振るう。緋剣は更なる光を宿し、全力をはるかに上回る状態となっていた。


 レグルスの水晶大剣を地面に叩きつけ、剣をさらに振るう。間合いギリギリに後退したレグルスは口角を上げ、「おおっ…この私を押すかッ!いいぞ…もっとだッ!」と叫ぶ。

 直後、二人以外には捉えることができないほどの次元違いの剣戟が周囲を圧倒する。一際甲高い金属音が音の波動を轟かせ、二人が距離を取る。赤い光が集まり、質量を持ったエネルギー弾をアスターに解き放つ。

 金色の防護陣が赤い光と相殺され、二人が再び剣を当てる。一太刀でレグルスは後退し、視線を一瞬降ろす。アスターはその一瞬の仕草を不審に思い、瞬時に後退する。直後、地面から大槍が突き出す。


 すぐさま大槍が霧散され、二人が地面を蹴った直後に赤黒い霧が辺りを包む。


 「苦戦しているのかい?レグルス。鈍ったわね」と声が響く。霧が晴れ、女性が姿を現す。


 「アリエス…」


 「レグルス相手に生き残るとはね。流石は見込んだだけはあるわ。けれど、もう終わりにしないと。星剣は直に抜かれる。貴方達とのお遊びも終わりだそうよ」アリエスがそう呟いた直後、地面が大きく揺れ、剣がゆっくりと浮かび上がる。

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