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20話 集結する英雄

 ディオスは鮮血を口端から零しながら立ち上がり、白銀の光を纏う。瞬時に失った体の部位が輝きを放って修復され、ディオスの周囲に六本の剣が浮かぶ。明らかな怒りと殺意を青年に向けて、「やってくれたな人間ッ!この私の体を貫いたその罪、高くつくぞッ!」と吠えながら手を突き出す。

 その動きに呼応するように六本の剣が青年の方へ剣先を向け、放たれる。青年は肩に届きうる刀身の剣を地面から引き抜き、軽々と振るう。

 接近していた剣を容易く斬り降ろし、青年は地面を蹴る。ディオスは勢いに圧倒されながらも大剣を両手で握り、剣戟に応じる。青年は全身を使って、慣れた様子で特大剣を振るう。その一撃一撃には巨大な獣をも瞬く間に滅ぼしてしまうほどの強大な力が宿っていた。


 ディオスは彼の剣戟を辛うじて受け止めながら動揺を見せる。「何故だッ!何故人類にここまでの出力を制御できるッ!ありえないッ!ありえないッ!」


 狼狽するディオスの様子を気にする様子を見せず、青年は無感情に淡々と剣戟を続行する。


 衝撃が轟き、剣戟が止まる。体に幾重もの傷を負い、よろめきながらもディオスは大剣を体の前に構える。青年は一切の言葉を発さずに距離を詰め、大剣諸共一閃する。大きな金属音と衝撃が周囲を圧倒し、火花が飛び散る。二人の動きが一瞬止まり、睨みあう。その瞬間、ディオスは青年の背後に落ちていた浮遊剣に視線を移し、即座に青年に向けて放つ。

 青年はディオスの微かな動きから瞬時に察知し、視線を向けることなく回避行動をとる。勢いを持った浮遊剣はディオスの背を越え、静かに彼の肩に呼び戻される。

 ディオスは肩で呼吸を行いながら剣を構える。青年は静かに特大剣を構えなおし、再びディオスに迫っていく。その剣に刻まれた緋色の光は、彼の攻勢に応えるようにその輝きを強めていく。


 二人が再び交わった直後、先ほどよりも何倍もの衝撃が邸宅を支配し始める。鳴り響く金属音はその間隔を狭め、激しさを増していく。

 圧倒的な強者の剣戟は、他の全ての人間には捉えることすら敵わず、彼の大剣が残す緋色の軌跡のみが苛烈さを物語った。


 激しい剣戟の果てに一瞬の無が訪れる。二人はお互いを背に向け、立ち尽くす。直後、ディオスの腹部から鮮血が飛び散りよろめく。ディオスの表情は明らかに歪み、青年に圧倒されていることが見て取れた。青年はディオスが動き出すよりも早くに反転しながら緋剣を振り下ろす。殺気に背中を押されるように即座に振り向いて大剣を構えるが、溶解するように刀身が瞬時に寸断される。正面からの直撃を体で受け止め、吹き飛ぶ。


 ディオスは青年の突入してきた大型のステンドグラスの下の壁に叩きつけられ、土煙に埋もれる。煙が晴れて姿を晒した彼は、傷つきながらも荒い呼吸で肩を揺らして壁によりかかっていた。


 青年はディオスを捉えた途端に剣を構えて迫る。しかし、彼の前を遮るように白銀の壁が形成され、彼の動きを止めさせる。その時、ディオスの隣にはゆっくりと少女が降り立っていた。「ふふっ。苦戦しているようね、ディオス様?」その声を聞いた時、ディオスは笑みをこぼす。


 「私達の目的は果たされた…っ!クククッハハハハハ!」少女は深手を負っていたディオスの隣に降り立ち、優しく笑いながら一礼する。同時に、彼を白銀の光が包み込む。


 少女は顔を上げ、一人の男に視線を合わせる。「ご機嫌はいかがかしら?シュバルツ様?」


 その声と顔に、シュバルツは自身でも分からないままに戦慄する。「君は…誰だ…」


 少女はふふっと笑い、「貴方様が想像しておられる通りですよ。私はライエ・スターロード。数多の世界を統べ、平和に導くもの。そして、「貴方」の味方です。」


 「ライエ…」シュバルツの近くに立つ少女は、そっくりな見た目の少女を睨む。


 ライエはその声にようやく視線を移す。「あら、来ていたのね。ごきげんよう、ポラリス?」


 「剣の封印を解くのがこんなにも早いなんて…。アリエスね…」ポラリスは思わず表情を歪める。


 「あら、頭は冴えているようですわね。その通り。ディオスが貴方達と遊んでいたのはアリエス達が封印に綻びを作るための時間稼ぎ。作戦は上手くいったようですね。お手柄ですよ、ディオス」


 いつの間にか完全に傷を回復させたディオスは立ち上がり、剣を振る。「勿体ないお言葉です。ロード」


 ライエはその場の全員に視線を向ける。「賽は投げられ、未来が確定しました。貴方達の役割は終わりです。唯一のロードたる私は復活しました。全ての抵抗は何の意味も持たない。数刻後にはこの惑星は星界から姿を消します」そう高らかに宣言した後、ライエは憐れむように溜息を吐く。「私達にとっては瞬きする間に過ぎてしまうようなちっぽけな人生。ですが、その中でもやり残した事はあるのでしょう?この私が許します。最後の時を楽しまれてはいかがですか?」


 シュバルツは目を見開く。「なんだって…?惑星を消す…?」


 ライエは大きく笑うのを抑えるように口を手で覆い、「ええ。惑星トルンの人類はその高い知性を争いにしか使えない失敗作です。星界に貴方達のようなゴミは不要だという事です。ですから、恥をこれ以上晒さないように惑星諸共なかったことにして差し上げましょう。せめてもの慈悲というものです」と悪気もないといった様子で告げる。


 「調子に乗るんじゃねえ…」暗闇の中に一つの光が灯される。緋色の光は先ほどの戦闘以上の輝きを放ち、周囲を照らす。

 「お前の言うように、僕達アーカムの人類は争いの歴史を続けてきた。多くの過ちで泥を塗りあい、醜く足を引っ張り合ってきた。だが、そんな歴史を終わらせるために、手を取り合えるようにと行動してきた人類も居た。過去を変える事は出来ない。だが、未来を変える事は出来る。そう信じて、動き続けてきた人はいた…。この場所は、そんな希望を抱いて平和への歩みを推し進めた人達が居た場所だった。アーツバルトはこの争いに満ちた世界を平和に歩ませるための中心地となっていた。アーツ卿はアインツマイヤー、ハインドゴーンを繋ぎ、この島全体の平和を目指して動き続けてくれていた人だった。そんな人を、お前のような神を自称する悪魔の復活の為に殺した。お前達には分からないだろうな。子供のように、上手くいかなければ暴れてなかった事にするようなお前達失敗作ではなッ!」


 「口を慎め!ゴミの分際で!」ディオスはその言葉に形相を変えて叫び、アスターに突進する。


 アスターはその攻勢を受け止め、ディオスの顔に詰め寄る。「反論もせずに武力行使する。そうやってまた暴れて主張を通そうってんだろ!やってみろよッ!」

 緋色の光が限界を超えて輝きを放ち、ディオスは弾き飛ばされる。体勢を立て直す間もなく彼を追撃し、迎撃に飛び立つ六本の剣を叩き折る。

 アスターは緋剣を構え直し、ディオスを睨む。ディオスは片手を突き出す。足元が輝きを放ち、魔方陣が展開される。「舐めるなよガキがッ!この私を侮辱した事、後悔させてやるッ!」言葉を終え、手を振るう。呼応するように魔方陣が輝き、彼の両手に光が収束する。

 ディオスは剣を握りなおし、地面を蹴る。アスターに剣を突き込み、彼が剣を砕くのと同時に剣を霧散させ、空いた手から槍を顕現させる。身体を器用に反転させ、槍を振るう。アスターが飛び退き、間合いを出るのと同時に槍が消え、その手には弓が握られていた。引き絞られた弓が矢を放ち、彼の回避を許さずに迫る。アスターは緋剣を前面に構えて矢を受け止めるが、矢は緋剣に触れるとともに大きな爆発を生じさせる。息をつく暇もなく、煙が揺らぐ。爆炎を超え、幾つもの剣がアスターの視界に映る。

 「させはしません」ポラリスの声と共に金色の防護陣がアスターの眼前に展開される。ディオスが放った剣は防護陣に突き刺さり、その全てが動きを止めるのと同時にガラスのように砕け散る。

 ディオスは二本の剣を手に取り、地面を蹴る。アスターに迫り、その剣を振るう。アスターは最低限の動きで回避し、緋剣を振るう。生じた隙を庇うように浮遊剣が緋剣を受け止め、ディオスは体を捻ってさらなる攻勢に出る。その手には槍が握られていたが、アスターはそれを予見していたかのように緋剣を振り上げる。槍と共に両手を打ち上げられたディオスに迫り、緋剣を彼の身体に一閃する。即座に後退するディオスの腹部には緋色の軌跡が刻まれ、彼の口端には血が零れていた。


 「はぁ…。少しの言葉に扇動され、力の全てを使っても及ばないなんて。もういいわ」とライエが呟き、白銀の光を解き放つ。

 直後、全員が地面に叩きつけられる。ライエは白銀の光で一つの剣を構築し、迷うことなく解き放つ。そして、剣は容易く彼の心臓を貫く。


 「ロード…?これは…」驚きで目を見開きながらも、ディオスはライエに視線を向ける。

 

 「この私の前でこれほどまでに恥をさらした事。万死に値するわ。根源たる星ではなく、その体を貫いた慈悲に感謝しなさい」とライエは蔑むように吐き捨てる。


 「そんな…私は…計画通りに…」絶望の色を見せながら、ディオスは崩れ去る。


 「アリエスに操られていながら気づきもしなかった癖に。計画を語るなんて…。本当におめでたいわ」ライエは小さく呟いた後、シュバルツに視線を向ける。「さて、あんな出来損ないはもういいわ。そろそろ、戻ってきなさい。レグルス」


 ライエの声が最後まで聞こえる前に、私は暗闇に落ちた。そして、視界が開ける。その時には、私の目から映る全ての景色がまるで映像のようにただ流れる景色となっていた。青年に迫り、彼を止め…そして、次に流れた映像は…私の手に握られた水晶剣はロムラの心臓に突き立てられていた。とても受け入れられないその瞬間を…彼は静かにそれを受け入れるかのように剣を降ろした。


 映像が乱れ、視界が再び暗闇に落ちる。そして、誰かの声が私を導く。「こっちだ。シュバルツ」と。


 その一筋の光は徐々に視界を埋め尽くし、気が付くと私はある一つの部屋に辿り着いていた。そして、その部屋の奥には、あの杖を突いた私が立っていた。彼は静かに息を吐き、「ようこそ。シュバルツ。私達の領域へ」と私を誘う。

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