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17話 交錯する運命

 レーベ 最奥


 ポラリスは特殊な防護陣を展開してシャルロットを包む。静かに目を閉じ、周囲から様々な光を糸のようにして手繰り寄せ、防護陣に編み込んでいく。光の繭を完成させ、何重にも防護陣を形成させる。繊細な作業を終え、手を降ろす。「必ず…目覚めるんだよ。きっと、君が目を覚ます頃には世界は大きく変わっている。けど、その先には君達が守り抜いた人々が立っているはずなんだ。シャルロットさん、貴方が目覚めた後の世界は戦いのない平和なせかいでありますように…」そう呟き、ポラリスはレーベを後にする。




 アーツバルト 東門



 東門に到着。任務開始。



 門前に立つ二人の人影は、アーツバルトの騎士達とは違った甲冑を着こんでいた。アスターは二人を感情なく見つめ、静かに地面を蹴る。

 門番がアスターの接近に気付き、指一つを動かす前に2人の首を正確に斬り捨てる。


 息を吐き、進む。アーツバルトの街は静かなものだった。荒らされた形跡はほとんどなく、頻りに金属の擦れる音が響くのみだ。


 アスターはその音に恐れることなく、黒剣を握る。闇夜に乗じ、静かに確実に奇襲を繰り返していく。



 ??? 


 そろそろ…動くときかな。


 私は部屋を出る。そして、アリシアを連れて一つの部屋へ向かう。


 部屋に入ると、女性が不安そうに窓の外を眺めていた。女性は私が入った事でこちらに振り向き、何かを察したように悲しい表情を見せる。「行くのね…」と呟きながら。


 私は静かに頷き、静かに眠るアリシアの額に顔を当てる。「母さん、行くね」そう呟き、アリシアを彼女に優しく手渡す。


 「リーシャ、後は任せます。ホワイトアーツは放棄していただいても構いません。ここはシェルターとして最大限の機能を果たしていますが、アーツバルトのように快適なものではないですから。それに、これ以上の事態をアーツは想定していません。状況が変わるのを察知したなら、なるべく早くこの地を離れてください。アインツマイヤーなら安全かつ安定した生活を送る事が出来るはずです」


 リーシャと呼ばれた女性は涙を浮かべながら、「貴方は…?」と絞り出すように尋ねる。


 私は優しく微笑む。「ごめんなさい。リーシャには真実を伝えておくわ。私はもう、戻れないでしょう。ですからリーシャ。皆を頼みます」


 そう告げ、私は静かに泣くリーシャの声を背に部屋を出る。


 誰にも見られないように静かにホワイトアーツを脱し、両手に視線を降ろし、ゆっくりと顕現される白い剣を見守る。


 「最後のピースとなりましょう。かの敵にも届くはずです…。届かせて見せましょう。彼らの為にも、貴方の為にも。」



 アーツバルト 東部


 剣を振り、目の前で崩れ落ちる騎士を見つめて息を吐く。目の前に淡い光が昇るのを見送り、アスターは次の戦場に向かう。

 その時、背後の気配を察知して止まる。「ありがとうございました。そして、ごめんなさい」アスターは振り返らずに伝える。


 「いいえ。謝らないでください。元はといえば力が及ばなかった私が悪いのです…。」ポラリスは俯きながら答える。


 アスターはポラリスの方へ身体を向け、「西側の部隊はアインツマイヤーの勢力が到着する前に出来る限り排除し、彼らと接触後に撤退。東部側の掃討はほぼ完遂。アーツバルト内に残存する星の民の部隊は僅か。指示をください」と淡々と報告し、指示を仰ぐ。


 ポラリスは悲しそうにその姿を見つめ、「ありがとうございます。辛い任務を課してしまい申し訳ありません。これから、アーツバルト中央付近に存在するイージス邸に向かいます。この部隊を率いた隊長がその場に居るはずです。現在、アインツマイヤーの勢力が彼と交戦しています。彼らと共に主犯を始末し、アーツバルトを事実上奪還します」と淡々と告げる。


 アスターは頷き、すぐさま地面を蹴る。ポラリスもそれに続く。



 アーツバルト イージス邸


 戦闘音が届き始める。アスターは出来うる限りの全力で目の前に迫るイージス邸を睨む。


 「アスター。このまま中央の窓を突き破って突入します。中のアインツマイヤーの方々に攻撃の余波が流れないように私が支援します。私に合わせてください」


 そう告げた後、ポラリスは自身の足元に魔方陣を何重にも展開し、両手の間に光を集める。


 アスターはすぐさま飛び上がり、黒剣に緋色の光を巡らせて深く構える。


 ポラリスが両手に集めた光が輝きを強める。手を掲げ、金色の光が広がる。「お願いします。アスター」と少女の声が響き、奥のガラスが割れる。その先から、流星の如く一筋の光がディオスを貫く。


 直後、とてつもない熱波と衝撃が地面を通じて響き渡り、周囲を燻らせる。シュバルツの前には、先ほど出会った青年が佇む。そして、彼が見つめる先には体に深く傷を負って膝をつくディオスの姿があった。

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