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13話 終幕

 赤黒い霧が晴れ、2人はただ立ち尽くす。


 「お兄様…?今の話は…」シャルロットは明らかに動揺を見せながら僕を見つめる。僕はシャルロットを宥めるように笑いかける。「大丈夫だ。たとえアリエスの話が真実かどうかなんて重要じゃない。僕達は、僕達が守るべき人、帰る場所を守るために進むだけだ。今まで通りな」


 シャルロットは震える身体を抑えるように僕の胸に頭を当てる。


 アスターは静かに抱き留める。数秒の沈黙の後、シャルロットの肩に手を置いて彼女の目を見つめる。「奴は姿を消した。この場は少しずつ沈静化していくはずだ。僕達がやるべきことは、二人の援護に行くこと。考えるのは後だ」と淡々と伝える。自分に言い聞かせるように伝える。


 シャルロットは同意するように頷き、優しく微笑む。「はい。行きましょう。こんな戦いは終わらせなくてはいけません」


 アスターも頷き、ハインドゴーン中心街に向かう。




 ハインドゴーン 中心街周辺


 二人は赤黒い霧の晴れた南西区画を抜け、中心街に向かった。しかし、そこにはかつての姿はなく、南西区画よりも遥かに酷い状況があった。建物は全壊し、至る所に火が立ち上っていた。赤黒い霧ではなく、燃え盛る赤い火と黒い煙がいくつも視界に映った。


 「こ、これは…」嫌な予感が先行する。「急ごう、シャルロット」と声をかけ、アスターは走りながら黒剣を顕現させる。


 シャルロットも静かに白槍を取り出し、後を続く。


 二人が路地を走っていたその時、アスターが急に立ち止まって剣を上空に振るう。直後、大きな衝撃が走り、黒剣が火花を散らす。剣先に触れるのは槍の先端を分かつように斧を取り付けた大型の得物。斧槍を手にしたあの女であった。


 アリエスは軽快な足取りで二人の前に降り立つ。「来たね。じゃあ、ここからが本番だ。悪いけど、もう話すことはないよ」と斧槍を構え、低い姿勢をとる。一呼吸置いた瞬間、アリエスの足元から電撃のような光が走り、姿が消える。


 直後、アスターは殺気を頼りに刀身を盾にするように構える。それと同時に大きな衝撃がアスターを押し出す。衝撃を受け止める最中、空中で得物を構えるアリエスの姿が視界に映る。

 シャルロットが瞬きをする間に先程まで隣にいたアスターは遥か後方に押し出されていた。シャルロットは直感で白槍を投擲する。そして、殺気に合わせて自分の体を白槍の元に引き寄せる。空中に移動した体をよじり、背後で攻撃を外した敵を捉える。はずだった。白槍の元に引き寄せて空中に移ったその体は、直上からの衝撃に弾き飛ばされる。衝撃を受けたのと同時に「それは、もう見た」とアリエスの声が耳に届いた。

 アリエスはシャルロットを一瞥してクルっと一回転し、軽々とアスターの元に斧槍を投擲する。アスターは直撃を免れるように体をよじり、衝撃を受け止める為に黒剣を突き立てる。直後にとてつもない衝撃が走り、地面が大きく崩れる。間髪入れずに衝撃が轟き、黒剣が軋む。

 衝撃が収まると、斧槍は赤黒い霧を纏って霧散する。アスターは黒剣を杖代わりに立ち上がり、地面から抜き取る。

 シャルロットは飛びそうになる意識を無理やり引き戻して白槍を地面に投擲する。そして、突き立てた白槍の元に体を移動させる。近くには、割れた地面の上に立つ傷ついたアスターがいた。


 二人の前にアリエスが降り立つ。アリエスは感情ないただの狩人として、2人を見つめる。そして、赤黒い霧を手から発し、斧槍を取り出す。


 構え、そして消える。


 アスターは黒剣を構え、集中する。緋色の光を黒剣に込め、静かに攻撃を待つ。直後、アスターの元で大きな金属音と衝撃が走る。キンッ!ドンッ!と衝撃から生み出される音だけが響き、周囲をその音と衝撃が砕いていく。


 殺気を頼りに、最速で振る。アスターは攻撃を諦め、完全なカウンターに移行して応戦する。「動かずに受ける。いい判断だね」とアリエスの声がどこからか耳に届く。「けど、それじゃあ勝てない」とアリエスの声が響き、アスターの目の前でわざと鍔迫り合いをする。直後、シャルロットがアリエスの背後に回り、低い姿勢で白槍を突き出す。しかし、そこにはもうアリエスの姿はなく、シャルロットも即座に反応して飛び退く。直後、赤黒い光の斬撃が地面を抉りながら通過する。斬撃は近くの瓦礫に触れると突風を巻き起こし、周囲を一掃する。その光景に気をとられることなく、シャルロットは即座に白槍を投げて瞬時に移動する。直後、シャルロットがいた場所を貫くように、斧槍が空から地面を抉る。アリエスは斧槍の横に降り立ち、乱暴に引き抜いたそれを目の前のアスターに投げ、姿を消す。アスターは斧槍の衝撃を受け流し、体を捻って直後のアリエスの蹴りに黒剣を間に合わせる。アリエスの連撃を止めるように、二人が直線に立つのも気にせずに白槍を投擲する。アリエスはギリギリまで白槍を引きつけて姿を消して斧槍の元に立つ。シャルロットは白槍がアスターを貫くよりも早くにそれを霧散させる。

 アリエスは斧槍を握り、すぐさま地面を蹴る。シャルロットの目の前で姿を現し、彼女に斧槍を振り下ろす。シャルロットは軽やかな動きでそれを回避し、動きに連動するように槍を横薙ぎする。アリエスは簡単にそれを斧槍で受け止め、直後に迫るアスターの攻撃に合わせて姿を消す。

 そして、先ほど斬撃が通過して視界の晴れた場にアリエスは降り立つ。片手で顔を覆い、「はあ…。やはり、時間をかければ情が生まれてしまうな」と大きく息を吐く。その姿には、純粋な彼女の思いが含まれているように感じられた。

 しかし、彼女が再び顔を上げると、そこには先ほどと同様の殺気が放たれる。「私は誰であろうと一様に殺す。例外はない。十二名座の一人として、仕事は完遂させてもらう」その言葉に呼応するように、赤黒い霧が顕現される。霧は斧槍に絡みつき、鈍く輝く。その光は途絶えずに保たれ、アリエスは再び構えをとる。

 姿が消え、赤黒い軌跡が追う。軌跡は一直線にアスターの元に迫り、黒剣はその軌跡を捉えるように振るわれる。しかし、その動きで軌跡は止まらず、金属音も衝撃も響かなかった。直後、鈍い音と衝撃が響き、アスターは彼方に吹き飛ばされる。軌跡は速度を増し、吹き飛ぶアスターを通り越し、合わせるように斧槍を振るう。アスターは吹き飛ぶ方向を直角に曲げられ、遥か先で大きな土煙が上がる。

 アリエスはそれを一瞥し、目の前に突撃してきたシャルロットの攻撃を回避する。シャルロットは空を切るリスクを気にもせず、白槍を横薙ぎする。距離を取るアリエスの方へ白槍を投げ、自身を白槍の元に引き寄せる。圧倒的な速さでアリエスの目の前に迫り、彼女が武器を振るうより早く白槍を突き立てる。鈍い音と確かな感触を得て、すぐに白槍を引き抜き後退する。すぐさま立ち位置をアリエスの背後に移し、低い姿勢でもう一度突き込む。何かに触れた感触はなく、シャルロットはすぐさま地面を蹴ろうとする。しかし、踏み込むよりも早くに自身を抉る衝撃が体を走り、体が宙を舞う。溢れだす鉄の味を噛み締めながら反転し、地面に白槍を突き込む。体を引き寄せ、直後に姿勢を低く取る。頭一つ上程度の高さに斧槍がとてつもない速度で振り抜かれる。攻撃が振り抜かれるのと同時に立ち上がり、白槍を投擲する。アリエスの懐に飛び込み、勢いを殺さずに槍を突き入れる。アリエスの回避行動に合わせ、さらに体を捻って周囲を横薙ぎする。勢いのままに白槍を地面に突き立てて身体を引き寄せる。アリエスの一手を予測し、着地と同時に背後に槍を突き入れる。しかし、カンッと金属音が響き、白槍が空を仰ぐ。直後にシャルロットの腹部に衝撃が響く。アリエスは斧槍を引き抜き、静かに倒れ込むシャルロットを見つめる。


 「安らかに眠れ。もう苦しむことがないように」

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