ゆいこのトライアングルレッスンU2〜ゆいこがもらった第2ボタン〜
「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」の人気企画、「ゆいこのトライアングルレッスン」に採用していただきましました、
ゆいこのトライアングルレッスンU2〜ひろしの第2ボタンの行方〜
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のゆいこ視点です。
「ゆいこのトライアングルレッスン」とは?と思われた方は、
ゆいこのトライアングルレッスン〜軌跡〜
https://ncode.syosetu.com/n1009ic/
をご一読いただくと、より楽しめると思います。
蓋をあけるとオルゴールの音が鳴る。このジュエリーボックスに詰まっているのはひろしとたくみに貰ったものや写真だ。その中から、2つの第2ボタンを取り出してまじまじと見る。
傷一つないのがひろしの分、傷跡があるのがたくみの分。
「じゃあ、私が貰ってあげる。」
「しょうがないな。やるよ。」
中学の卒業式に、誰からも取られていないひろしのボタンを私からせがんでもらった。
「はい、ゆいこ。正真正銘の第2ボタン。」
たくみのボタンは、他の人に取られる前にたくみ自身が避けておいてくれたものだ。
明日は、ひろしとたくみの高校の卒業式。ブレザーの制服は第2ボタンをあげたりしないのだろうか。制服を卒業した二人は、4月からは大学生。2歳違いだから、当たり前だけど、私は学生服に包まれた高校生。
さすがに今のトライアングルな関係は崩れるのかな。中学の卒業式にも同じことを思ったけれど、相変わらず塾に迎えに来てくれたし、高校が一緒になってからは、毎日ではないけれど、それなりの頻度で3人で帰った。私自身の学校の卒業はまだだけど、二人からの卒業のときなのかもしれない…。
なんてことを思ったな、と学ランの第2ボタン2つと、ブレザーの第2ボタン2つをジュエリーボックスに戻す。
今日はたくさんのドレスを試着して、疲れた。王道のAライン。ウェストラインにボリュームがある、お姫様の定番ドレス、プリンセスライン。華やかさを落ち着かせたスレンダーライン。裾広がりのマーメイドライン。神話に出てくるようなバストラインからストンと布が流れるエンパイア。すべてが純白のウエディングドレス。どれをとっても、ステキで、未来を祝福しているようだった。それなのに、なぜかひとごとに思えた。
今目の前にあるのは過去の品だけだ。4つのボタン。誕生日にもらった星型のペンダントトップのついたネックレスとハートのチャームがついたブレスレット。メイド服を着た私、たくみとひろしの写真。ガラスの帯留め。他にもいろいろな二人との思い出が詰まっているジュエリーボックスについているオルゴールの螺子を巻いて、本当にこのまま結婚していいのかどうかと迷っていた。
時計の螺子を巻戻すことができないことはわかってるけど、トライアングルな関係を保ち続けていたあの頃に戻りたい。妄想癖はあの頃と変わっていないのに、時間だけはどんどん過ぎていった。
結婚式に、花嫁を奪いにくる昔の映画があったっけ。もしも、万が一にもそんなことはないんだろうけど、それでも二人が迎えに来てくれたら…。
いや、いわゆるマリッジブルーというやつなだけだ。でもせめて今夜は思い出に浸っていたい。窓の外の星を見上げては、夜空に二等辺三角形を描いていた。
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ジュエリーボックスの中に入っているものたちは、
トライアングルレッスン〜三角関係でいたい私たち〜シリーズ
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