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『タツヤ君、迎えに来たよ』
ゴイチの声で、タツヤは眠い目を擦りながら起き上がった。
枕元のデジタル時計を見ると、午前二時だった。
『一緒に探して欲しいんだ』
「……眠いよ」
『約束したよね!』
語気を強めたゴイチの目は、禍々しい光を帯びている。消灯して暗いのに、その眼だけはハッキリと見える。
タツヤは恐ろしくて、身震いした。従うしかないと思い、ノロノロとベッドから降りた。
『まず、この部屋を隅々まで探そう』
「何を探しているの?」
タツヤは、パジャマのまま、床のラグを捲りながら訊ねた。
『分からない』
意外な事に、ゴイチは自分が何を探しているのか分からないという。
「分からないのに探しているの?」
ゴイチは頷く。
『でも、探さないといけない。探さなきゃ、探さなきゃって、思うんだ』
思い詰めた目をした。
探す対象も理由も分からずに、探し物をしているゴイチが、滑稽であり、哀れな気がした。
しかし、それに巻き込まれてしまった。ほっとけない気がしたのだから、仕方がない。タツヤは、どうしたら良いのか考える。このままでは、埒が明かない。