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 数日後の夜半、私は二階の部屋で、ただならぬ気配に目を開けた。

 空気が、ひんやりと湿っている。

 明かりを落として、真っ暗なはずの室内全体に白い霧が掛かっていた。その中を複数の影が、静かに移動している。 


(えっ)


 声を上げそうになって、口を押える。

 不思議な光景だった。光源が無いのにもかかわらず、白い霧でぼんやりと明るい中を、一人、また一人と未申(南西)から歩いて来て、丑寅(北東)へと、部屋を横切って行く。


(お爺さんやお婆さん? ううん、若い人もいる)


 皆、一様に無言で、霧の中から現れ、霧の中へと消えていく。ゆっくりとした不確かな足取りで。

 時折、微かに鈴の音が聞こえる。線香の香りがした。

 死者の彷徨だと思った。

 ピシリ、パシリと、家の其処かしこが、音を立てている。

 物言わぬ彼等の代わりに、存在を主張するかのようだ。

 私は、身じろぎも出来ぬまま、ベッドの中で見送る。気付かない振りをしなければならなかった。 


 どのくらい経っただろうか。やがて、白い霧が晴れて来て、室内は、もとの漆黒の闇に戻った。家は、何事も無かったかのように静かになり、私は、安堵と共に再び眠りに落ちた。



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