死者からの誘い
俺たち俺と友人2人は、スキーを楽しもうと俺の叔父が所有する別荘に来ている。
午前中別荘に到着し昼飯を食ってからスキー場に行こうと予定してたのに、正午を過ぎた辺から天気が悪化し外は猛吹雪。
悪い事は重なる物でテレビでも見て暇を潰そうとしたら、テレビのアンテナが雪の重みなのか強風の所為なのか折れ曲がり視聴不可。
来る途中通って来た道で、数年前亡くなった人たちの事を嘲笑ったのが悪かったのかも知れないな。
でも俺たち以外にも、死んだ奴等の事を嘲笑ったり悪しざまに罵ったりする人は多いと思うぜ。
今は整備されて綺麗に舗装されているけど、数年前まではガタガタ道で冬季は閉鎖されていた。
それなのに早くスキー場に行きたいとドカ雪が降る中、閉鎖している事を告げる看板を蹴り倒し侵入したのが死んだ奴等。
案の定途中で立ち往生して雪に埋り、見つけられた時には車4台の9人全員が凍死や一酸化炭素中毒で亡くなっていた。
それで此の9人、3人家族が2組とカップル1組と男1人全員が褒められない事をして遊びに来ていたんだ。
それぞれ3人の家族連れは4人家族だった。
片方は旦那の連れ子の長女を、日頃から殴る蹴るの虐待していて旅行にも置いてきぼり。
もう1組の家族も弟の方が出来が良いからと年子の兄をネグレクトしていて、金が勿体ないからって理由で此方も家に置いてきぼりにしていた。
カップルは不倫旅行、女の彼氏に友達とスキーに行くと告げながら友達の彼氏とスキーに出かけて来たW不倫。
男は無職なのに妻がパートの掛け持ちで得た金を持って、スキー場にナンパ目的で出かけて来た奴。
だから皆んな罰が当たったんだと嘲笑ったり悪しざまに罵ったりしてる訳だ。
外出も出来ずテレビも見れない状況で仕方無く、それぞれスマホやタブレットを見て暇を潰している。
スマホで面白い物は無いかな? とネットサーフィンしていたら、スキー場がある山の中腹から実況中継しているサイトに辿り着く。
大きな篝火が焚かれ、その周りで家族連れやカップルがウイスキーやココアを飲みながら夜空に輝く星を見上げたり、眼下に見える街の夜景を楽しんでいた。
アウトドア用のチェアに座っている男が、手に持つマグカップを掲げながら視聴者に語り掛ける。
『見てください此の夜空を此の夜景を、素晴らしいでしょう?
皆さんも一緒に此の素晴らしい星空を光景を楽しみませんか?
お待ちしています』
「オイ! 2人とも此れ見てみろよ」
俺は友人たちに此のサイトの事を教えた。
2人は教えたサイトを探しだし映されている画像に見入る。
画面を食い入るように見ていた友人の1人がフラフラと立ち上がり俺に声を掛けて来た。
「なあ、此の映っている雪山、裏の雪山だろ? 行って見ないか?」
「行くか」
俺も同調の声を上げる。
行こうと言った友人はダウンもジャンパーも着用せずに玄関にフラフラと歩き出した。
「オイ! ちょっと待て! 上に何か羽織れ、それにこのサイト何かおかしいぞ」
もう1人の友人がフラフラと玄関に向けて歩き出した友人の腕を掴んで止めながら言う。
「え? 何がおかしいんだ?」
「まだ午後3時を過ぎたばかりなのになんで星空が見えているんだよ? 幾ら吹雪で薄暗くなっていても早すぎるだろう。
あと山の麓が猛吹雪なのに、山の中腹が晴れているなんてありえないだろ。
それがありえても、街の夜景が見えているって事は山の中腹から別荘がある此方側を見ている訳だけど、山と街の間が猛吹雪だったら夜景も吹雪に遮られて見えない筈なんじゃないのか?
それに映っている人数が9人で、家族連れが2組にカップルが1組、それに単独の男が1人。
午前中通って来た道でお前らが嘲笑っていた、数年前雪に閉じ込められ死んだ奴等の人数と一致してないか?」
友達がそう言った直後。
スマホの画面いっぱいに若い女の顔が映り罵声がスマホから響き渡る。
『そうよ! 何が悪いのよ!
ちょっと浮気したぐらいでの罰が此の極寒の地に放置だなんて。
だから仲間を増やそうと、私たちを嘲笑ったり罵ったりした奴等に罠を張って誘ったのよ。
アンタたちも此方で寒さに震えてみなさいよ』
『自分で産んだ子でも無いガキの面倒を、なんで私が見なきゃならないのよ?』
『僕は優秀なんだ、馬鹿の兄貴なんていらないんだよ!』
『………………』
『………………』
女の後ろから他の死者の反省してない罵声が次々と響く。
それを聞き唖然としていたら突然スマホの画面が真っ黒になり音声も途絶え、いまの騒音は何だったのがと思えるくらいの静寂が辺を支配した。