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右見ても婚約、左見ても婚約(レオネル)

タイトルを変えました。

 幼馴染で王太子のヴィクトルが学園に通う?


「模擬大会にいたが一時帰国じゃなかったのか」

「婚約が白紙になったから留学は終わり、残りの期間はこの学校に通うことにしたんだとさ」


 ヴィクトルは隣国の第二王女と婚約しており、留学には彼女との交流を深めるという目的もあった。


「白紙になった理由は?」

「第二王女の駆け落ち。駆け落ちの相手は彼女の護衛騎士。国王は捜索を命じ、王女は花宿で護衛の彼と盛り上がっているところを発見。それで婚約は白紙」


「悪くない婚約だと言っていたから、ヴィクトルもつらかっただろうな」

「それはない。お相手を花宿に連れ込んで既成事実を作れと王女を嗾けたのがヴィクトル本人だから。ついでに駆け落ちにも手を貸している」


 は?


「共犯じゃないか」

「だから両成敗という形で破棄じゃなくて白紙」


 己の恋心を優先して王族としての務めをおろそかにする。

 交流を深めた結果、脳内お花畑では困るとヴィクトルは見切りをつけたに違いない。


「これで高位貴族家のご令嬢の婚約は事実上白紙か」


 ヴィクトルの行動には呆れもしたが、その結果は悪いものではない。


「カレンデュラ嬢を俺は推す」


「お前、国を亡ぼす気か?」

「レオ、気持ちは分かるけれど王子妃の候補としてすら名前が挙がらないと思うよ。血統だけは文句がつけられないが他は文句しかない」


 カレンデュラ・ホーソン侯爵令嬢は自称俺の婚約者だ。


 血縁者が代理人で婚約を届けられる制度のせいで母だというサンドラが勝手に提出し、未成年のうちは彼女が俺の婚約者だったが俺が成人した当日に「本人()の了承を得ていない」という理由で破棄した。


「サンドラ公爵夫人は絶対にカレンデュラ嬢をレオの嫁にする気でいるからね」

(おだ)て合い、(おだ)てられ合うのが大好きな二人だね」


 需要と供給の最悪な一致だ。


「サンドラ夫人の気を変える方法も一つだけあるが」

「それこそ無理な話だ」


 サンドラは父上に病的なほど執着し、そんなサンドラを父上は嫌悪を通り越して憎悪している。

 なにしろあの女と同じ空気を吸うくらいなら自害すると明言して家を出ていったくらいだ。


「父上があの女を説得してくれるわけがない」


 父上と呼んでいるが、俺には普通に接してくれるものの父上は父というより師匠。

 父と子で過ごした時間より、アイグナルドの愛し子となってから師匠と弟子のように過ごした時間のほうが圧倒的に長いから当然かもしれない。


 ウィンスロープ公爵夫妻(夫妻がセットになったことはないが)のことは誰もが腫物のように扱う。

 妹のサンドラに説得されて国王が重い腰をあげて父上に忠告したことが何度かあるらしいが、公爵の愛し子である父上を国王がどうこうできるわけがなく現状維持が続いている。


 公爵じゃなくても、国王がサンドラのことを父上に強く言えるわけがない。

 俺の出生に関してサンドラは王家が公爵家に頭が上がらなくなることをしでかしている。



「そう言えばアイシャも王子妃候補にあがっているぞ」


 は?


「え、なんでそんな、キレてるの?」

「理由は?」


 首を傾げながらのマックスの説明によると、模擬戦でアイシャを見て気に入ったヴィクトル本人の推薦と貴族数人の後押しがあったとか。


「なんでアイグナルドたちが俺を睨むの?」

「さあ、腹が減ったんだろ」



 ***



 行動力があるヴィクトルは直ぐに編入してきた。


 教室は俺たち四人だけのSクラス。

 ここ以上に安全な教室があったら教えてほしいと言われて俺たちも学院も受け入れた。


 アイシャ嬢がヴィクトルの妃候補という噂は直ぐに流れた。

 そのせいで不満・嫉妬・好奇心をごちゃまぜにした貴族たちが自由時間のたびに出入り口に鈴なりになる。


 邪魔だと思う反面、入口を塞いでくれているおかげでカレンデュラ嬢が入ってこないのは嬉しい。

 しかしなぜかイライラのほうが最近は強い。



「やあ、アイシャ嬢。元気かい?」


 それに比べてヴィクトルは元気だな、おい。


「元気ですわ。明日も元気ですし、金曜の放課後まで元気です。今週分の挨拶はこれですみましたね?」


 理想かどうかは分からないが王子様(ヴィクトル)に話しかけられれば喜ぶ令嬢たちを見てきたせいで、塩対応どころか「話しかけるな」オーラが半端ないアイシャに新鮮さを覚える。


 なんか気分がスッキリする。


「君の嫌がる顔はクセになるね」

「その変態っぷりが国民に知られたらドン引きされますよ」


「大丈夫、変態の人って結構多いから支持率五割はきっと残る」

「夢は大きく、変態を治して支持率九割を目指してください」


 音声がなければ爽やかに微笑み合う二人。

 美少女と美男子の朝のやり取りは目の保養のはずなのにイライラが止まらない。


 なんだかんだとこの二人は会話をしている。


 ヴィクトルは俺みたいに近づくなと言われたわけではないから?

 近づくなオーラならセーフということか?



「ちょっとレオ、熱いんだけど」

「今日は冷えるからな」


 大精霊の愛し子四人いて何が不安なのか分からないが、教室内はマックスが臨時の近衛騎士として護衛している。


「熱風じゃなくて温風にして」

「注文の煩い奴だな、アイグナルドをこき使うな」


 マックスと話している間にヴィクトルが昼飯にアイシャを誘い始めた。

 王子の会話術ってすごいな。


「ランチはいつもスフィンランたちと食べています」


「スフィンランってご飯を食べるの?」

「食べますよ」


 煙に巻こうとアイシャ嬢はしれっと嘘を吐く。


「それじゃあスフィンランたちも一緒でいいから僕とご飯を食べようよ」

「食事くらいストレスフリーでいたいです」


 ストレスの元だと言われているのに笑い飛ばすヴィクトルの心臓は何製だ?


「妃候補たち全員とランチしないといけないんだ、公平にするためにね」

「フェアかクズか分かりにくい発言ですね」


「今日は君のために肉汁あふれるひき肉の塊をコクのある野菜のソースで煮込んだものを用意したよ」


 アイシャ嬢が揺らいだ。


 彼女は食べるのが大好きで、魔物の討伐に同行して出る協力金を全て食べることに費やしているらしい(マックス談)。


「デザートはチーズケーキだよ」

「ご一緒いたします」


 ちょろい女だな。

 本当に、イライラする。

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