表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】俺によく似た彼女の娘……え?  作者: 酔夫人(旧:綴)
【第4章】幸せの形 ※本編最終章
64/83

4-15 必ず君を見つける|レーヴェ

アイシャが手に取ったティアラに俺は目を細める。


 ―――永遠の愛を誓うよ。


かつて、そう言って俺はこれを彼女に贈った。



パルヴァ。


久しぶりに聞いた最愛の恋人の名前。それがこの女の口から出たと思うと虫唾が走るが、それでも愛しい彼女の名前は俺の胸を絞めつける。


パルヴァは南部辺境伯の娘だった。いまの辺境伯の妹であり、彼女の姪であるレア王妃には彼女の面影が少しある。


パルヴァは俺の唯一愛する人だったが、公にすることはできなかった。俺には妻サンドラがいたからだ。


あの日、俺はパルヴァと二人きりで秘密の結婚式を挙げた。母上の形見である銀色のティアラをパルヴァの頭に載せ、俺の愛は永遠に彼女のものだと誓った。初めて重ねた愛しいパルヴァの唇はとても甘美だった。


薬で自由を奪われてもサンドラとの口づけだけは拒んだ。だから初めての口づけは愛しい人とできた。その事実は彼女がいなくなったいまも俺を幸せな気分にさせてくれる。

 

パルヴァはあの秘密の結婚式のあとに行方不明になった。


嫌な予感はしていた。あの日砦に戻った俺をサンドラが出迎えたときに嫌な予感がしたんだ。


パルヴァが姿を消して、彼女の父親である辺境伯は俺に捜索を要請した。彼からの要請があってようやく動けた我が身をあの日ほど恨んだことはない。



――― 探しにいくのですか?


そう聞いてきたサンドラの顔を見て直ぐに分かった、この女がパルヴァを害したのだと。サンドラの自分への執着を甘くみていた。その結果、犠牲になったのがパルヴァだった。


普段なら俺からサンドラに声をかけることはなかったが、俺はこの女にパルヴァの行方を問い詰めた。 その瞬間の衝撃を受けた顔。そして愉悦に満ちた顔。


この女を殺してやる。


でも、この女を殺したらパルヴァの居場所が分からない。

パルヴァは生きているかもしれない。


その可能性が俺の迷いになった。


いまもパルヴァがどこにいるかは分からない。将軍位をレオに譲ると同時に家督も譲り、自由の身になって近隣諸国を周った。だからこそ、あの日レオとアイシャを守ることができなかったというのに―――。



「まあ、何を仰っているの?」


アイシャが、俺が教えたパルヴァの仕草で微笑む。パルヴァとアイシャはどこか似ている。儚げな見た目の割に結構大胆なところとか……もちろんパルヴァはアイシャほど剛毅ではないが。



―― 仮に遺体であっても、取り戻しましょう!


時間ができるたびに北の砦に立ち寄り、なにかと世話を焼く俺にアイシャは理由を尋ねた。罪滅ぼしだという言葉は鼻で笑われたが、唯一の話し相手だったこともあって色々話すことがあって、なんで世界中をまわっているのかと言う話をキッカケに俺はアイシャにパルヴァのことを話した。


――― 復讐しましょう、レーヴェ様。


サンドラへの復讐。

それが俺とアイシャの協定で、アイシャが俺の手助けを受け入れられた理由だった。



……考えたくはないが時がたち過ぎた。嫌でも理解できてしまう。恐らくパルヴァはもう生きてはいないだろう。でも、遺骸でもいいからこの手に取り戻したい。



「ど、どうしてそのティアラがここに……」


俺はパルヴァにティアラとヴェールを贈った。そして調査のためと言って入ったパルヴァの部屋で、俺はヴェールは見つけたがティアラを見つけることができなかった。


異常を問えば辺境伯に問えば、数日前に盗人が入ったと彼は答えた。それなりに名のある剣や辺境伯夫人の宝飾品が盗まれたらしい。犯人は不明だと辺境伯は言ったが、サンドラが犯人だと俺は分かっていた。


ティアラはサンドラが持っている。ティアラのことを知るのは俺と、俺とパルヴァのあの幸福を盗み見たであろうこの女だけだから。



パルヴァ、もう少しで証拠を作れるから。

もう少しだけ、待っていて。



エレーナと共に王都にきたとき、俺は隙を見てサンドラの部屋に忍び込み、このティアラを見つけた。このティアラはこの女にとっては見たくないもの。案の定、箱はそのままに中身を抜き取ってもこの女は気づかなかった。


「パルヴァ! レーヴェ様を惑わすこの悪女め!」

「悪女、ですか?」


アイシャが笑う。まるでパルヴァがアイシャの体に乗り移って笑っているようだ。厳しい特訓をした甲斐があった……アイシャは豪胆すぎてパルヴァのような線の細い淑やかさがない。


でも、サンドラはそこまでは知らない。


「お前は私が殺した! 汚らわしいその体もサンドリオンの口から捨てた! 生きているわけがない!」



サンドリオンの口!


そこに君はいるんだね。

待ってて、直ぐに迎えに行くから。


ねえ、パルヴァ。僕の息子の嫁は心強いだろう?


孤児だとあざ笑う声を黙らせる実力を身につけて、ネチネチと、それはもうネチネチネチネチと、15年の時間をかけて恨みを晴らしているんだ。


王族には専売特許とも言える不敬罪があるがアイシャを不敬罪で裁けない。先ほどアイシャがその理由を言った。名さえ忘れられている元王女よりも国を守り続けたアイシャに国民は味方する。


そして、この胆力には僕も驚いたよ。



「もう一度死ね、パルヴァ」



―― 永蟄居なら、不敬罪でとっ捕まえればいいんじゃありません?


 

アイシャの楽しそうな声を思い出すと同時に爆発が起きた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。ブクマや下の☆を押しての評価をいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ