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【本編完結】俺によく似た彼女の娘……え?  作者: 酔夫人(旧:綴)
【第4章】幸せの形 ※本編最終章
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4-3 異母弟妹ができたらしい|レオネル

「父上が来た?」


父上が南の砦に来るのは珍しい。急用? アイシャたちに何かあったのか? とりあえず応接室に行こう。そう思っていたらガチャガチャと金属のこすれる音がして扉が勢いよく開いた。


「喜べ、レオ! 子どもができたぞ」

「は?」


部下が「おめでとうございます」と言って部屋を出ていった……そうか、めでたいことか。


「なんだ、嬉しくないのか?」

「嬉しくない……わけではないのですが、いや、なんというか、この年になってという思いが強いというか」


まさか腹違いの弟か妹ができるなんて。貴族は政略結婚が多いから年の離れた異母弟妹など珍しくないだろうが、30歳以上年の差があるのはそうはないだろう。


「気持ちは分かるが、喜べ!」


バンバン叩かれた肩が痛い。こんなテンションの高い父上は初めて見た。それほどまでに嬉しいことなのだと思うと戸惑いが消え、おめでとうの気持ちが強くなる。


「喜んでいますよ」

「その割には落ち着いて見えるが……」

「正直言えばいまいち実感がわかなくて」


そう言うと「なるほど」と父上が快活に笑う。本当にテンションが高いな。


「それでは実感できるように早く北部に来い。その目で見れば実感がわくだろう」

「北部にいるのですか?」

「最近はよく王都にいっているが、アイツの家は北部だからな」


北部の女性、か。異母弟妹に会うことが許されれば北部に行く口実ができると喜ぶ自分が情けなくなった。


 ◇


仕事の調整に1カ月ほどかかり、砦を部下たちに任せて王都にきた。城と北の砦を繋ぐゲートの話は聞いている。


アイシャの家にお邪魔する形になるので手土産でも持ってくべきだとミシュアの樹のホールケーキを一つ買っていく。顔馴染みの店主からアイシャが毎日のようにきてショートケーキと新作を買っていくと聞き、どのケーキにするか悩んで時間がかかってしまった。


「レオは初めての転移だから、あっちに行ったらアイシャから体調の確認を受けてね」

「分かった」


つまり扉の向こうにはアイシャがいるというわけか。ケーキの箱の重みが増した気がした。



「遅かったわね」

「アイシャ」

「体調に異変は? 気持ちが悪いとかはない?」

「大丈夫だ」


久しぶりの再会に緊張しているのは俺だけか。平然とペタペタ触って、魔力に淀みなどの異常がないか確認している。


「すごいものだが、正面ホールにつながっているのは不用心じゃないか」

「許可している人しか通れないようになっているから大丈夫よ」

「無理やり通ろうとするとどうなる?」

「四肢がねじ切れる」


……怖っ!


「……という幻惑を空間の狭間で見ながら餓死する。見せしめと再犯防止で罰はきつめにした」

「戻ってこれないんだから再犯も見せしめもできないだろう」

「あ………………まあ、やってしまったものは仕方がない」


面倒だから仕様を変える気はないらしい。悪戯っ子のように笑うアイシャのもとにアイグナルドが数匹飛んでいき、甘えるアイグナルドたちはアイシャに撫でられてご満悦だ。


こうやって俺は死ぬまで片思いをするってことか。それでもいいと思うのはアイシャといるときしか世界に彩を感じないからだろう。

 


「それにしても、ずいぶん畏まった姿じゃない?」


気合入り過ぎ、と揶揄うアイシャに首を傾げる。


「挨拶だからと思って……騎士の正装のほうがよかったかな」

「どっちも同じくらい派手だから大して変わらないわよ」


そう言いながらアイシャが俺のクラバットを直す。あまりに自然が動作過ぎて『完成』というように昔みたいにアイシャが俺の胸元を叩いたときに二人してハッとする。


「ま、曲がっていたの」

「た、助かったよ……あの、ほら、父上は?」


キョロキョロと周りを見るレオネルにアイシャは首を傾げる。


「来ているけれど、レーヴェ様になにか用事?」

「用事って、今回は父上に呼ばれたから来たようなものなのだが?」



「それって、レーヴェ様に来いと言われなければ来なかったということ?」

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