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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生先は特撮の世界でした、なんで?

作者: 鯛パニック

完全に趣味の思いつきです

ーあ、転生先は特撮の世界なのか

謎の怪人が街を破壊するという特集記事を見ながら、この世界が特撮の世界なのだろうと、そんなことを考えたのは、自分が前世の記憶を突如思い出したからだった。


まあ、転生したといっているので誰でもわかると思うが、私は死んで、この世界に転生した。

死に方は、まあありふれたトラック事故での転生、所謂トラ転としたわけだが、まさか転生先が異世界の悪役令嬢系とか、ファンタジーの俺TUEEEE系でなく、まさかまさかの特撮系だなんて、誰が想像できただろうか。



ー特撮

特殊撮影の略であり、着ぐるみや模型のセット、映像合成等を使い、現実には撮影困難な映像を作り出すジャンルのこととしても認識されている。

日本においては土曜朝の全長40mの銀色巨人や、日曜朝に放送される5人組のヒーロー、バイク乗りの仮面ヒーローが思い浮かべられ、昨今ではイケメン俳優の登竜門としての立ち位置もあるわけだ。


今回は学園ものが舞台、昭和から平成にかけてのヒーローの職業というのはフリーターとかカメラマンとか探偵のような割と時間を自由に使えるようなのが基本だったが、最近では学生がヒーローになるのかなんて思うと感慨深いものがある。



主人公は、間違いなくこのモブ達の中で1番顔が綺麗な彼なのであろう。

ー彼の名は北郷正太郎


勉強はできないが、運動は得意、友情に熱く、自分自身のやりたいことをまだ見つけられていないという悩みを抱えているらしく、しょっちゅうクラスメイトや友人に「ガシッとくる夢を見つける」と語っている。

困っている人を助けようとする確かな優しさを持つ少年。5人組ヒーローだろうが、銀色に光る全長40m近いヒーローだろうが、バイクに乗るヒーローだろうが主人公枠というのは大体男性、活発で熱血で思いやりがあって優しいもの。まさしく彼みたいなものなのだ。


ヒロインっぽいのは主人公に親切にされながらもツンっとしている彼女のことだろう。まだ名前は把握していないのでヒロインさんと呼ばせてもらう。



そしてさっきから語っているこの自分は、どう見ても主人公みたいな北郷正太郎のクラスに存在している友人に近いモブの女子高校生、縮めてモブのクラスメイト。

ヒロイン枠ではないが、そこそこ仲のいい友人枠、家族仲も良好、虐めも受けていない物語の進行において重要視されることもないクラスメイト枠の人間のモブ。多分ギリ死なないくらいの立ち位置。モブオブザモブ。


はてさて、ここが特撮の世界であると気づいたからと言って私に何かできるわけではない。

前世の記憶を思い出したとはいえモブなことに変わりはない。前世の記憶っていっても記録みたいなもの。あくまで知識がプラスされただけの状態。結局のところ私という人間はただの16歳の女子高校生だということだ。

一話、二話くらい出たら後は最終話まで出ないくらいの立ち位置が本当は好ましいが、まだどんな敵なのかもわからないし何とも言えないが・・・まあ精々死なないように、怪我しないように友人枠を、学生時代を楽しむのが1番であろう。



お昼明けの一発目という1番眠いこの時間に、教師の進路を考えろよというお説教という名のホームルームは寝ろと言われているようだ。

だが、この担任、己の授業で寝ている人間を見ると烈火の如く怒り狂うので寝るに寝られない。

手の甲にペンを刺すなどしてどうにかこうにか起きる努力をするがどうにも眠い。


どうにか寝ないようにしなくては、頭を回し続けるとなどと考え始め、ふと、そもそもこの特撮のジャンルはどれなのだろうかと考える。


5人組、たまに3人組の全身タイツに近いヒーローか、全長40mを超える銀色のヒーローだろうか、はたまた一人でバイク乗っていようか。

割と自分が安全圏で主人公の活躍を見れるか否かは、彼がどのジャンルのヒーローかで変わるかもしれない。


個人的におススメなのは5人組全身タイツ。どちらかといえばバイク乗りより子ども向けなためか、人が死ぬような描写が比較して少なかった気がする。たしか

いや、トレンディドラマ的なレッドとブラックと敵女幹部とヒロイン枠ヒーローのドロドロ四角関係で最終的にブラックが死ぬ作品あったけども、平成でも仲間っぽくなった女幹部がラスボスに殺されたのもあったけども。


全長40m銀色ヒーローは明確に生き死にが描かれているわけではないが、そんな巨大なヒーローと怪獣がいる世界でプチっと潰されることがあるかもしれない。

あと壊れたビルの瓦礫の下敷きになったりとか、そういった描写はあった記憶がある。


仮面のバイク乗りは作品によるが、割と生き死にはしっかりと描かれている作品が多かったため、ここが一番危険かもしれない。ゲームとして人を殺してくる怪人集団とか、そもそもにしてライダー同士で殺し合ったりとか、犯罪者がライダーとかそういうのもいたからね。


どこなんだろうなぁ、なんてぼんやりと考えていると教師が

「いいかぁ!お前らは今2年生、一年後には3年生だ!!

1年なんてあっという間だ、これからの進路はしっかり考えておけよ!未来は自由なんだからな!!」

と進路希望の紙を前から送ってくる。


4月の段階でもう考えないといけないのか、でも未来は自由とは割といいこと言うな、なんて考えながら後ろのヒロインへと紙を渡し、前を向けば


「自由なんて、そんなもの・・・・・私にあるわけがないのに。」

「え」

キターーーーーー、主人公にしか聞こえないようなヒロインの呟き。2次元だろうが、2.5次元作品だろうがあるあるの展開ですよね!

実際私も聞こえているけど、聞こえていないフリですよ!!これはあくまで主人公がヒロインを気にし始めるのきっかけになるんですから、あるあるな展開なんですから!!



なんて、まるで目の前でドラマを興奮しながら見ているような感覚に浸っていると、



どぉおおおおおおんッ!!

爆発音と共に、校舎が揺れる。

なんだ、なんだと教室内で騒ぎが起き始めると、化け物だぁああ!!という声と共にそこらで悲鳴が上がる。


これはまさか、ヒロインの命を狙う怪人が襲ってくるフラグが回収されて襲われるシーンですか!!展開早いですね!


先生の逃げろ!という声に合わせて蜘蛛の子を散らすようにみな逃げる。

もちろん私もだ。流石にその場にとどまって死にたくない。





必死に足を動かし逃げていたが、校舎内にも入り込んでいた敵の下っ端に追い掛け回され、校舎の裏まで逃げてきてしまった。

周りには誰もいない、どうしようか、このままここに隠れておくべきか、皆がいそうな方向に逃げるか考えていると




「誰かを見捨てるなんて、俺にはできない!!!」


なんともヒーローっぽい口上が聞こえてきた。顔だけ声のするほうに向ければ、怪人的なのからヒロインを背に守るように隠した主人公・・・北郷正太郎がそこにいた。

思いがけないワンシーンのような光景にテンションが上がってしまう。



(これは変身道具が飛んできてとか、ヒロインが変身するための道具を持っていてとかそういうフラグですよね。・・・ですよね?)


そんなことを思っているうちに、怪人がヒロインに向けて攻撃を仕掛ける。

だが間一髪、ヒロインを抱えながらその攻撃を北郷は避け、地面へと転がり込む。


そしてその避けられた、彼らに当たらなかった攻撃は校舎の壁に直撃し

―その衝撃で砕けた校舎の瓦礫が、自分へ向かって降り注いできた



あ、と思った時にはもう避けられないほど近くまで瓦礫は降り注いできていた。

喉がひきつったように声を上げてくれない。身体も動いてくれない。

あ、これは避けるのは無理なのだとやけに冷静な頭で悟る。

短い人生だった。前世の記憶を取り戻したその次の日に死ぬとは。

あ、今日の晩御飯から揚げだった、友人から借りてた漫画返してなかった。明後日遊びに行く約束していた。

走馬灯のように己の頭に後悔と、心残りと、過去の記憶など、様々なことがよぎっていく。

だが、無駄なことなのだ。だって、これはどうあがいてもどうやっても避けられない

あのトラックに轢かれた時に与えられたものと全く同じ、生きていれば必ず最後は迎えることになる


ー死なのだから














やだ、しにたくない





瓦礫が当たる直前

ヒュンっと風を切る音が耳元を横切ると同時に腰へ、何か巻き付く感覚


【ディメンション‐コンストゥラクション】

機械的な音が耳に届くと同時に、己の視界は真っ白な光へと包まれ、その眩しさから目を強く瞑った。





襲ってくるはずの痛みはなかった

もしや死んだのだろうかと思い恐る恐る目を開ければ、周りは瓦礫、粉塵。

だがどうやら怪我は一つ無いようだった。



「お前は・・・・。」

怪人が戸惑ったような声をあげたのに気づき、そちらに視線を向ければ、そこにいた全員、怪人も、北郷も、ヒロインも、全員の視線がこちらに集中しているのが分かった。


何故私を見ているのだ、そう思いながら

己の肉体に視線を向けると、プロテクター、手にも、足にもいや、全身・・・、近未来的な、仮面を被ったバイク乗りのようなフルアーマー型のプロテクター。顔を触れば硬質的な感覚、フルマスクを被っているよう感覚、だがフルマスク特有の視界の悪さはなく、むしろ開けたように、辺りが広く見えるような感じがする。



「貴方は・・・」


まるで、ヒーローを見るような眼を向けられる

向けてくるのは、主人公のはずの北郷正太郎

向けられているのは、私



は?




―これは熱血主人公属性で突っ込もうとする男とちょっと面倒くさいヒロイン枠を諫め、擦れた2号ヒーローのメンタルケアをし、3号ヒーローのお世話をしながら、1号ヒーローとして戦わなくてはならない一人の少女の物語である





いや、変身してるの、私かよぉぉおおおおおおお






ここまでありがとうございました。

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