プロローグ
多分作者の作品の中でも一番主人公が狂ってるやつ。
《王都:大教会》
ステンドグラスから陽光が透き通る清廉かつ神聖な雰囲気を醸し出す王都の中央教会に彼女達はいた。
足まで届く長い金髪に鋭く切れ長な赤い瞳を持つ誰もが羨む完璧なスタイルを聖女の装束で包んだ年不相応に長身な10代頃であろう少女。
アーカム公爵家の長女である第一聖女エリザベート・アーカム。
もう一人は腰まで届くアメジスト色の長髪に黒み掛った蒼眼の中肉中背なスタイルの少女。これまた絶世と言うべき8歳の美少女。
スレーム侯爵家次女である第二聖女ロネルム・スレームの二人が姦しげに会話をしていた。
「ねぇロネルム。近々男爵家出身の第三聖女が来るらしいのだけれど、貴方どう歓迎するべきだと思う?」
「そうですねアーカム様、第三聖女さんには身の程を解らせてあげるべきだと思いますわ。」
「ふふっ…そうよね。」
第三聖女をいびろうとする彼女達だが一つだけ致命的な問題が…すれ違いがあった。彼女達はあまりにも第三聖女を真っ当に想像しすぎたのだ。悲しいかな”アレ”はそんな生優しい存在では無い。
誰が思うだろう今この瞬間…ステンドグラスを打ち破って件の第三聖女が降ってくるなどと。
「はっ?」
「っっ⁉︎」
衝撃と轟音最後に揺れが収まった時教会の床を吹っ飛ばして”それ”は居た。
天に突き出された片腕と人差し指、空を向く顔、聖女の装束を着たそれは刹那に吠えた‼︎
咆哮が響き渡る‼︎
「Saint Up!」
「破壊!(Break)」
「世界!(Broke)」
「奇々怪々!(Broken)」
「第三!聖女!レイル‼︎」
パクリである。某悪魔で仮面なバイク乗りのあれだ。御丁重な事に魔法によるものだろう英語の副音声まで追加されていた。この女(男)ノリノリである。
絶句するは二人の割と常識的な聖女達。
これが後に謳われる聖女三姉妹の初めての出会いだとは誰も思わなかった。
《神域:転生空間》
今時テンプレな白い部屋で多分神様であろうナニカ(ナニカとしか定義仕様のない存在)と対面していた。
「貴方は死んでしまったのでゲームバランスとシナリオ以外は最高と言われた乙女ゲーム「エルラシア王国物語」の主人公にTS転生してグランドエンド攻略RTAを配信する事になりました。」
「はあ…」
いやそんな事いきなり言われましても。
何かタイトルは聞いた事あるけどさあ。
「より多くの神々に視聴されタイムが早いほど来世が豪華になります。計測は学園入学からです、では。」
は?
「ちょっ…ま…」
って事があったのを5歳の頃思い出したピンクブロンドの髪に青い瞳のthe乙女ゲーム主人公が私です。チビって言うな殺すぞ。
尚この時ありがちな設定だけど母親とスラム街で暮らしていた私は何か突然現れた父親からの使いらしい騎士に母共々連れられカリバー男爵家に住む事になった。因みに今になって一緒に暮らせる様になったのは父親が現当主になったからだとか。
その後にあれよあれよと検査とか色々した結果何とこの国で三番目の聖女である事が判明。母と父は泣く泣く私を教会に預ける事になったのだ。
まあその後色々と紆余曲折ありながら忙しい聖女業の合間に趣味の必殺技開発などをしながら今回ついに15となり学園に通う事になったのです。尚我が姉様達事第一と第二の聖女には最後まで心配された。私の何処が心配だと言うのか。
何が言いたいかってRTA配信はっじっまっるよ〜!
【てすてす〜こちらTS第三聖女神々方〜繋がってますか〜】
□匿名神 はじまった
□匿名神 はじまった〜
□匿名神 おけ
□匿名神 だれか主人公事教えてくだシャス
□匿名神 名前はレイル・カリバー 第三聖女で聖女として新米。
□匿名神 次、元スラム暮らしで男爵令嬢な為他の聖女にはいびられてる。
□匿名神 次、ピンクブロンドの少し跳ね気味な髪に青いおっとりとした瞳の儚げなヒロイン。
□匿名神 はか…なげ?任侠物張りに鋭い鷹の目何ですけど…それは?
□匿名神 ちょっとわかんないっす。
□匿名神 続き、新米なので聖女としてはまだ無冠、ルートによって冠する冠名が変わる。
う〜ん
【あの〜私すでに冠名持ちですよ?】
□匿名神 ????
□匿名神 ????
□匿名神 ????
□匿名神 ????なぜ?
□匿名神 えーっと…冠名は?
【【無双】です。】
□匿名神 知らない知らない何それ…⁉︎
□匿名神 ”無双の聖女”
□匿名神 それ本当に聖女なんすかねぇ…
□匿名神 いや確かにレイルはルートによっては聖女無双するけどさ、後半じゃんっ‼︎
□匿名神 な〜んでもう原作崩壊してるんですかねぇ?
□匿名神 そもそもレイルって最後まで戦闘能力は低いし。
ちょっと誰の事を言っているのか良く判らない。神聖教会の最終兵器(動かないでくれ)と言われる私が弱いとか冗談だろ。
ま、取り敢えず学園の入学式に参加しに行こうか!