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第18話 業を背負う元聖女

「ジャンヌ......何もそんなことしなくてもいいだろ。この騒動はお前のせいじゃない!」


 ジャンがそう強く言い放つも、彼女は剣を離すのはやめなかった。


「いや......私のせいだ。自分の力を過信していた。神の加護がない私は、所詮ただの村娘。良くしようと行動しても、どんどん被害が広がっていく。だから私は聖女でも英雄でもない......」


 そう視線を反らすジャンヌの姿は、ほん少し押しただけで倒れてしまうほど弱弱しく映った。

ジャンは彼女の身体を抱きしめようと、腕を回す。

しかし、躊躇した彼は剣だけを奪い取って背を向けた。


「確かに、お前がオルレアンの乙女としてフランスの英雄に成れたのは神のご加護かもしれない。それでもお前の傍で共に戦場で過ごした仲間は誰一人として、ただの村娘とは思わない」


 ジャンは先ほどの躊躇した行動を思い返し、照れながらも視線を彼女に再び戻す。

ジャンヌは彼の言葉を聞き、口を開いた。


「だから......それは加護があったからじゃ......」


 彼女の言葉に、ジャンは首を横に振った。


「ジャンヌ......お前だけが敗北寸前のフランスで、前を向いていたんだ。肩に矢を受けてもひたすら前線に赴き、旗を振って味方を鼓舞した。そんな君の勇姿を見て、俺らも戦い抜くことを決断した。その行動が出来たのは神の加護でも何でもない、ジャンヌだからだよ」


 ジャンヌはそれを聞き、涙しながらも暴動を起こす民衆を見つめた。


「......ありがとうジャン、励ましてもらって。でも、私はもう怖い。皆を何とか落ち着かせたいけど、また何かすれば被害が広がる。前世のような私は、この世界にはいないんだ。でも、このまま逃げたらそれはそれで自分が無責任だから.....」


 ジャンは彼女の手を引っ張り、どこかへ向かおうとした。


「行こうジャンヌ! このレインを出て、遠くに向かうんだ」


「でも、私にはやらなきゃいけないことがあるんだ」


______この世界の両親、橋の門番だったバース、それにここにいる皆......私が関わって彼らにやり残したことが沢山ある。


「いいか、このレインはたまたま県令が怠けていたから魔人と人が喧嘩を起してなかっただけだ。

遅かれ早かれ、他の地域と同じように徴収に不満を抱くことはあったはず。だからお前はただ、時の流れを少しはやめてしまっただけなんだ。

一緒に逃げよう! この町を抜け出し、ダンバたちに合流して遠くへ......そこで俺らだけで暮らすんだ」


 彼にそう言われたジャンヌは言い返そうとするも、踏みとどまった。


______......怖い、自分の意志を伝えてここに残れたとして......最悪の結果になったら。

私の言動で今度は、ジャンまで死んでしまうかもしれない。

皆には悪いけど、これ以上人に迷惑をかけないためにも......。


 無言のままジャンの後を追う彼女は、時折後ろを振り返った。

自分の今度背負っていく業を目に焼き付けるように、ジャンヌは見続ける。

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