降り注ぐ爆弾と降伏
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──降り注ぐ爆弾と降伏
A10ロケットは順調に飛行し、帝国の帝都ドルゴルーキーを爆撃した。
ブラウン少佐は『ロケットは完全に作動。されど、別の惑星に着陸した』と日記に記している。
これに衝撃を受けたのは合衆国だ。
共和国はロケット開発の分野において合衆国のはるか先を進んでいるということが分かり、共和国からの技術者引き抜きや、ロケット開発予算の増強が求められた。
この第二次世界大戦が終結した暁には、共和国と合衆国の間で熾烈な宇宙開発競争が始まるのは誰もが予感していた。
それはそうと今大戦におけるA10ロケットの活躍は限定的なものであった。
まだまだ命中精度が低く、生産性も欠くロケットでは戦局を左右するほどの状況は生まれなかった。
実際ドルゴルーキーに打ちこまれたA10ロケット弾はほんの40発でそのうちちゃんとドルゴルーキーを捉えたのは20発程度に過ぎないのだ。
だが、共和国政府はこれを『共和国による技術的勝利』と宣伝し、対応の取れない帝国政府が歯ぎしりするしかなかった。
それより重要な作戦が共和国空軍と合衆国空軍によって行われようとしている。
「合衆国空軍は帝都ドルゴルーキーとその周辺の軍需工場を爆撃。共和国空軍はウラル山脈の向こう側にある軍需工場を爆撃する」
合衆国空軍によって『ツイスター作戦』と名付けられた戦略爆撃計画である。
帝国が失った装甲部隊の補充を防ぐために、共和国、合衆国空軍が共同で戦略爆撃を実行する。
既に合衆国の世論は帝国を『悪しき専制主義の砦』『ならず者国家』と見做していた。それはポルスカ州解放後にポルスカ州に入った合衆国の記者たちが、殺された共和国の市民や処刑された共和国陸軍の捕虜などの写真というインパクトのある映像を報道したことにもよるだろう。
今ならばどのような作戦だろうと許容される。
そう踏んだ共和国、合衆国空軍は帝国に対する大規模な戦略爆撃を決定。
これによって帝国の継戦意欲をそぐことを決めた。
この作戦にもA10ロケットは参加することになるが、あくまで賑やかし程度だろうと共和国政府すらも思っていた。
国境線での睨み合いが続く中、共和国、合衆国両空軍は爆撃を開始。
まずはドルゴルーキーが爆撃を受け、徹底的に破壊された。
荘厳な古くからの建造物も爆弾によって次々に破壊され、降り注ぐ焼夷弾によって焼き払われた。
さらにこの際に火災旋風という現象が発生し、帝国の中心ドルゴルーキーは炎に包まれた。死傷者の数は未だ分かっていない。
共和国空軍はウラル以東の帝国の工業地帯を爆撃。
「空襲警報だ!」
「まさか、こんなところまで!?」
ウラル以東の工業地帯ではパニックが起き、そこを共和国空軍に爆撃される。
戦略空軍の面目を保ったブルモフスキ元帥は次々と報告される爆撃結果に満足そうだった。
これによって帝国は魔甲騎兵を作る能力を一時的に喪失したどころか、火砲やトラックを作ることもできなくなったのだ。
さらにここでA10ロケットがウラル以東にまで届いた。
断続的に着弾するA10ロケットは労働者に恐怖を植え付け、作業効率は恐ろしく低下した。思った以上の効果があったのだ。
そして、長い冬が終わり、泥濘の季節が終わると、全軍がティーガーAusf.Aに換装された共和国装甲師団がまたしても大規模に侵入を開始した。
この時点で共和国装甲師団の数は42個。
それがA、B、C軍集団の隷下で大きな突破口を開き突撃していく。
前線に航空基地を移動させた戦略空軍たちは各地に爆撃を行い、帝国政府の継戦能力を削いでいく。
帝国にはもはやまともな魔甲騎兵はない。そう思われていた。
だが、運の悪いことに生き残りの──それも強力な魔甲騎兵にB軍集団隷下第7装甲師団ギュンター戦闘団が遭遇してしまう。
その敵は正面では71口径88ミリ砲を弾き、その主砲はティーガーAusf.Aを戦闘不能に陥らせるだけの威力があった。新型だ。
「側面に回り込め! 装甲擲弾兵大隊は対装甲砲で敵を牽制! その隙に装甲大隊は側面に回り込み、砲弾をありったけ叩き込め!」
指揮官のギュンターが叫び、装甲擲弾兵大隊が牽引式対装甲砲で砲撃を行う中、ティーガーAusf.Aが側面に回り込む。
そして砲撃。
「命中! 命中!」
「畜生。まだ動いてやがる。化け物か」
側面からでも砲弾3発程度をぶつけなければ敵の魔甲騎兵は止まらなかった。
「敵魔甲騎兵撃破!」
『こちらも撃破』
だが、これによって敵の装甲部隊はついに本当に壊滅した。
共和国と合衆国政府はバルト三国を独立させ、ベラルーシとウクライナも独立させる。そして傀儡政権を設置した。
この日のために国家保安省はリーダーになり得る人物を選び、準備しておいたのである。その人物たちが共和国、合衆国陸軍の盛大な解放パレードの中で独立を祝う。
そして、北でも動きがあった。
連邦が参戦したのだ。
帝国は既に薄くしか防衛を行っておらず、共和国から受領したレオパルトAusf.Aを模した国産魔甲騎兵で殴り込んできた連邦に抗う術はなかった。
帝国は東方戦線で、北方戦線で、極東戦線で敗北に敗北を重ねていった。
そして、ついに全員が恐れていた事態が起きる。
革命だ。
帝国の瓦礫の中から革命勢力が蜂起し、赤軍と白軍の衝突が始まった。
だが、それをよそに共和国、合衆国、皇国、連邦の4ヵ国は前進する。
赤軍も白軍も容赦のない共和国軍の攻撃を受けて、後退を続ける。
ここで帝国から無条件降伏の準備ありとの知らせが届く。
既に帝国を支える工業地帯は瓦礫の山になり、赤軍が占領している。
新しい魔甲騎兵も、火砲もないのでは帝国は戦えないと彼らは判断したのだ。
共和国はこの降伏宣言を合衆国、皇国、連邦政府で受理し、帝国の領土はウラル以西は共和国に分割。それ以外は合衆国、皇国、連邦で分割されることになった。
帝国という国家はその日をもってして消滅した。
残る共産主義勢力との戦いをそれぞれの国が戦うことになるが、既に重装備を失った共産主義勢力はただの民兵でしかなかった。
共産主義勢力はウラル以東に立て籠もり、抵抗を続け、ここが後々まで続くウラル戦線となる。
だが、戦争は終わった。
第二次世界大戦は多くの死者と犠牲者を生んだが、ついに終焉したのである。
流された血はあまりにも多く、どうしようもない。
だが、次の大戦は遥か未来のことになった。
それもそのはず。
1945年に共和国が核開発に成功。
1946年には合衆国が核開発に成功。
遅れて1951年には皇国が核開発に成功したのだ。
これで戦争が起きればどちらも大規模な破壊に見舞われるという状況になった。
これでようやくひとつの戦争は終わったのである。
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