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第8話

「ルナちゃんも知らないのか。……あくまでも推測だが…【転生】能力スキル発動時に、ある年齢まで体が戻るんじゃないのか?」

「なるほど、それなら辻褄が合うわね」

「俺がさっき言った”かわいくなった”は”若くなった”と言うのが正解なのかもしれない。実際、初めて会った時くらいの姿に見えるんだ。なぜその時なのかは全くわからないが…」


 それを聞いたルナははっとした。


(スノシュさんに初めて会ったのは三年以上前、元の世界から転生して一カ月程度デス。能力スキルが発動すると初転生時の状態に戻るということなのかもしれまセン。ワタシが持ってる【転生】LV1までの説明は…)


【LV0】死亡時、特定の場所に装備と共に転生できる

【LV1】能力スキルを忘れずに転生できる


(これだけ…元の姿に戻っても能力スキルは忘れナイ。それどころか…)


「ちょっと能力スキル鑑定してもらいマス!」


 ルナは急いでギルドの受付に行き、鑑定を依頼した。


「何かわかったみたいね」

「あぁ、いいことだ。自分の所有する能力スキルを熟知する事は冒険者にとって大事なことだからな」




「ルナさん、お待たせしました。こちらが鑑定結果です」


 鑑定結果を渡されたルナが二人に驚きの事実を伝える。


「やっぱり…【体術】が覚醒能力(スキル)から先天能力(スキル)になっていマス」


 先天能力(スキル)は文字通り、生まれながら所有していることが一般的である。


「おいおい、それはまた覚醒能力(スキル)を授与してもらえるってことか!?」

「【体術】…去年ルナが願星竜から授与された能力スキルよね?覚醒能力(スキル)はウィシュター聖王国が授与人数や日時を制限してるから競争率が高いけど大半の人が欲しがるわよね」

「あぁ、俺達がいるペリペティア王国でもそうだ。国への貢献度が高い希望者が優先的に授与されるから、冒険者をやっていれば一般市民より授与される確率は上がる。この国は冒険者に頼っているしな。覚醒能力(スキル)目当てで冒険者をやってるやつもいるくらいだ」

「でも私の知る限り、覚醒能力(スキル)を二つ以上持ってる人はいないわ」

「俺もだ。しかし、ルナちゃんの場合…授与と転生を繰り返せば…時間はかかるが能力スキルを覚え放題じゃないか…!」


 興奮するスノシュを尻目にルナは浮かない表情である。


「そうなりますネ。でも、死ぬのは怖いデス…」

「あぁ、確かに…死ぬ時の苦痛や恐怖を考えればそう都合よくいかないか…ルナちゃんの気持ちも考えずにごめんね」

「毎回転生に成功するのか、転生回数に上限はないのか等、何かしらの短所がないかと考えるとますます怖いわね。多用するべきじゃなくて、保険程度に思っておいた方がいいのかも」

「ワタシもそうした方がいいのカナと思いマス」


 ルナは同じ転生者の男のことを思い出した。


(そういえば彼は知らないうちに急に現れて【地耐性】、【空間魔法】、【地魔法】、それと相手の能力スキルを言い当てて、能力スキルを奪うようなことも言ってマシタ。多くの能力スキルを持ってるってことは…)


「もしかして…スギルさんも…?」

「スギル?誰だそいつは」

「その人がどうかしたの?」

「飛竜にやられて転生した後、ゴブリンに襲われて…その時に助けてくれた人です。その人は【空…」

「――どうもはじめまして!俺がそのスギルです!」


(危ない危ない…【空間魔法】のことを話されるところだった)


「…お前、いつの間に現れたんだ?」

「普通に歩いてきましたよ。お三方とも話に集中してて気付くのが遅れただけじゃないですか?」

「ほう、俺は【気配察知】持ちなんだがな」


(まずい、能力スキルを確認せずに不用意な話し方をしてしまった…仕方ない)


「あまり言いたくなかったんですけど…実は【隠密】能力スキルを持ってるんですよ。気配を消して行動する癖がついてて、すみません」


(【隠密】まで持ってるんですネ…ますます【転生】を持ってそうデス)


 スノシュの表情が険しくなった。


「【隠密】だと…?あの飛竜の仲間じゃねぇだろうな」

「やめなよ。彼はルナを助けてくれたんでしょ?仲間の無礼を詫びるわ、スギルさん」

「いえいえ、全然大丈夫ですよ。【隠密】能力スキルは嫌われますから」

「けっ、怪しい野郎だ」


 険悪な雰囲気を変えようとルナが間に入る。


「えーと、紹介しますネ。彼女がリアス、彼はスノシュさん、私とよくパーティを組んでくれるんデス。二人ともすごく頼りになるんですヨ!怪我した時の魔法薬ポーションぐらい頼りになりマス!」

「ルナさんからお話は伺ってました。大変危険な目に遭われたようで…お二人ともご無事で何よりです」

「労いのお言葉ありがとうございます」


「ところでルナさん、大事な話があるんですけど…できれば二人で話したいので時間をいただいてもいいですか?」

「おいおい、二人じゃないと話せない大事な話って求婚じゃねぇよなぁ」

「いいですヨ」


 舌打ちをしてつまらなそうにそっぽを向くスノシュ。


「ワタシも聞きたいことがありマス」

「じゃあ行きましょうか。お二人とも突然お邪魔してすみませんでした」

「いえ、お気遣いなく」


 スギルの家で話すことにした二人は家に着くとルナの方から話し出した。


「スギルさんは【転生】能力スキル持ちデス?」

「いや、俺は持ってませんよ」

「【転生】能力スキルのことは知ってるんですネ」

「あ!いやー、まぁ、たまたま噂で聞いたことがあって…」


(【地獄耳】能力スキルで三人の会話を全部聞いていたとは言えない…食事が終わってからは光学迷彩(ステルス)で近くにいたけど)


「…【気配察知】も持ってるんですネ」

「いえ、持ってません。なぜそう思うんですか?」


(本当は持ってるけど、レンタル屋の受付を受諾してもらっていない今はまだ話さない方がいい)


「【気配察知】の詳細を知ってるような話し方だったからデス」

能力スキルの存在は知ってましたよ。【隠密】を持ってるから【気配察知】も効かないんだろうなと思って」

「”だろうな”なんですネ。効かないのが当然みたいな言い方でしたケド」

「え?そうでした?言い方が悪かったかな、ははは」


(なんか疑われてる…?ボロが出ないように気を付けないと)


「そういえば、本当に傷跡が治ってるか自分で見たいので鏡を貸してくれマス?」

「あー、あの傷…え?傷ですか?怪我でもしたんですか?」


(危なかった!傷跡があるのを知ってたら盗み聞きしてたのが明らかだ)


「…いえ、【転生】した時に古い傷跡が無くなったようなので自分で見てみたいんデス」

「えっ!?ルナさんって【転生】持ちなんですか?」

「言ってなかったですネ。同じ転生者のスギルさんも持ってるのカナと思ってさっき聞いてみたんデス」

「そうでしたか。あ、姿見は向こうの部屋にあります」


 スギルはルナを姿見鏡の置いてある部屋に案内し、手鏡を渡して部屋を出ようとした。


「…手鏡が必要な場所に傷跡があることを知っているんデス?」


(はっ、しまった!)


「あ、いえ、えーと…、背中とか見えにくい場所に傷があった時のために手鏡もあった方がいいかなーと思って。もちろん覗いたりしないので俺はさっきの部屋で待ってます」

「…ありがとうございマス」


(はぁ…、ひやひやする…疑ってる人に嘘を突き通すって難しい…)


 スギルは憔悴した顔で部屋に戻り、ルナが来るのを待っていた。


「ありがとうございマシタ。背中の傷跡はすっかり消えてマシタ」


(背中!?これは罠だ!背中はスルーして、傷ができる前に戻った理由もちゃんと聞かないと)


「へー、よかった。ちゃんと戻ってたんですね。ところでどうして転生すると傷跡が無くなるんですか?」

「…。スギルさん、ワタシ達の会話、盗み聞きしてましたネ?」

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