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第6話

コピル・ワードリィ

挿絵(By みてみん)




 スギルの予感は的中し、空間の歪みから一人の人間が現れた。スギルはすぐに近くまで移動し、観察した。


(気を失っている女性…20歳前後くらいか?転生者…?だとしたら俺と同じチート能力スキルを持っているかも知れない。【能力スキル把握】で見てみるか………あれ?これは!?)


 女性が急に目を見開き、勢いよく起き上がる!


 スギルは光学迷彩ステルスで隠れているものの見られているような感覚に陥る。


(こいつ…【能力スキル把握】が効かない!攻撃してくるのか!?)


 スギルは急いで空中に飛び距離を取るが、女性はその存在に気付いていないようだ。


「あぁ、ワタシ、また死んじゃったのネ…」


(また?どういうことだ?何かの比喩表現か?)


 女性が立ち上がると、その背後の方から何者かが近づいてきた。


「キヒヒ…」

「ニンゲン…オンナダ…」

「コロス…クウ…ウバウ…ヒヒ…」


 剣と軽装の防具で武装した三匹のゴブリンが女性を狙っているようだ。女性もそれに気付き、戦闘態勢に入る。


(あの構え…【体術】を使えるみたいだな。ゴブリン三匹、チート能力スキル持ちなら一ひねりだろうが…。もしやられそうになったら助けてあげよう。転生者なら話を聞きたい)


 スギルは様子を見ることにした。


身体強化魔法(フォース)!」


 女性は身体能力を向上させる【補助魔法】を自身の脚にかけようとした。


(へぇ、魔法も使えるのか。でも、これは…)


「あれ?おかしいですネ…」


 彼女は魔石を持っておらず、魔法は不発に終わった。自身が身に付けていたはずの魔石がないことに気付いた。


「あ、そうデシタ…」


 あざ笑うような笑みを浮かべたゴブリン達が一斉に襲いかかる!


 女性は素早い足取りで避け、その反動を利用して横蹴りを放ち、一体を吹き飛ばす。吹き飛んだゴブリンは腹を押さえて苦しみもがいている。女性は再び距離を取って構え、相手の攻撃を待つ。


(武器を持った相手に体術で戦うにはカウンターは有効だ。当然の戦法だな。しかし…チート能力スキルを持っているようには全く見えない…【体術】LV0程度だろう。助けるべきか…)


 スギルが迷っている間にゴブリン達は女性を挟むように回り込んだ。


(あれで攻撃のタイミングをずらされたら避けて反撃するのは難しいだろう。一体が反撃を受けている隙にもう一体が攻撃すればいいからな。あとは【体術】の練度次第か…)


 スギルの予想通り、一体が早めに攻撃をしかけ、それに女性がカウンターの拳を叩きこむ。その隙にもう一体のゴブリンの剣が女性の体を狙った!


 ――その瞬間、ゴブリンは潰れた。


 地面が隆起して二枚の岩の板を形成し、それに叩き潰されたのだ。板の間からはゴブリンの体液が流れ出ている。


(【地魔法】だ!彼女がこんな魔法を使えるなら最初から使っているはず!誰だ!?)


「お姉さん、綺麗な眼球()をしているね。ボクと契約しようよ。…お前らはいらない」


 女性に遠くから声をかける子供が残りのゴブリン達に手をかざすと、先程のゴブリン同様【地魔法】で叩き潰された。子供の容姿は人間のそれではなかった。子供が女性に近づいていく。女性は構えるが、異様な存在を目の前にしてその身体は震えている。


「ボクはコピル。お姉さんの眼球()をくれない?代わりに何でも欲しいものをあげるから。ね?いいでしょ?」

「……」


(魔族か…彼女の様子を見る限りチート能力はなさそうだ。助けるのはいいけど、あの魔族の能力スキルを確認しておかないと。面倒な能力スキルを持っていないといいが…)


 【能力スキル把握】を発動した瞬間、スギルはその事実に驚愕する。


(こっ!!これは!!!)


「ボクは人間の眼球()をコレクションするのが趣味なんだ。もちろん殺さないよ?本人が生きているのがいいんだ。目を失った事の後悔、残った眼球()で自身の醜い姿を見た時の衝撃、毎日のように思い出す眼球を失う瞬間の激痛と恐怖。それが気持ちいいんだ」

「やぁ、俺はスギル。コピル君、俺と契約しない?」

「!!」


 コピルは突然目の前に出現した謎の男に驚き、飛び退くと同時に【地魔法】で複数の槍状の石を形成、男に向けて一気に放つ!


「いきなり酷いなぁ」


 スギルに命中したと思われた石の槍はいつの間にか消えていた。【地耐性】LV5の力である。


・地耐性

【LV0】地魔法のダメージや効果を10%軽減する

【LV1】30%軽減

【LV2】50%軽減

【LV3】80%軽減

【LV4】完全に無効化する

【LV5】魔素として吸収してしまう。魔素を体内に維持できない者は徐々に体外に放出されていく


「消えた!?高レベルの耐性なのか!?く……ボクの邪魔をするなぁ!!」


 コピルの手から、靄がかかった黒く巨大な球体が現れた。相手の体力を吸収するその【闇魔法】はスギルを目掛けて一直線に飛んでいく。


「無駄だよ」


 【空間魔法】で別空間へのゲートを作り、【闇魔法】を吸い込む。


「これは…まさか【空間魔法】!?人間ごときが…!?」

「ところで知ってる?…魔法を使っていいのは使われる覚悟のある奴だけだって」

「何を言ってるんだ…!?」


 コピルの背後に別空間ゲートが現れ、そこから複数の石の槍が出現、彼をめがけて放たれる。かろうじて避けるが驚きを隠せない。


「くっ!【地魔法】までっ…!」

「いらないから返すよ」


 避けた先に待っていたのは別空間ゲートと、そこから出てくる黒く巨大な球体だった。


「うあぁぁぁぁぁ!!」


 コピルは苦悶の表情で激痛に耐える。コピルの体力を奪った【闇魔法】が彼の体から出ると再び彼の体の中に戻っていく。


「自分の体力を吸収するのは初めてかな?」

「な、なんなんだお前は…」

「そんなに怯えた顔しないで。君が彼女にやってたことを僕もやってるだけだよ?押し売りする”悪徳業者”に押し売りしてるだけ。何か問題ある?」

「ありえない…このボクが人間ごときに…いや、本当に人間…なのか…?」


「ところで、君の【召喚魔法】を俺にくれない?代わりに欲しい能力スキルをあげるから」

「!…なんでボクの能力スキルを…!?」

「全部知ってるよ、君の能力スキルは…」


<種族能力(スキル)>魔素操作(LV3/C)

<種族能力(スキル)>召喚魔法(-/-)

<先天能力(スキル)>地魔法(LV4/A)

<先天能力(スキル)>闇魔法(LV3/C)

<後天能力(スキル)>炎魔法(LV2/-)

<後天能力(スキル)>体術(LV2/-)


「でしょ?」


 コピルは地面を蹴って、空に羽ばたくと捨て台詞を吐いて逃げて行った。


「ち、違うよ…?きょ…今日はこの辺で許してやる…!」


 スギルは特に追おうとはしなかった。


「”小学生”みたいな捨て台詞だな」


 子供のような見た目のせいか、スギルはコピルのことを少しかわいいと思ってしまった。そして自身の行動を疑問視した。


(強引に能力スキルを奪わなかったのはなぜだ?見た目が人間の子供に似てるからっていうのは大きい気がする。魔物なら躊躇しないからなぁ)


 スギルは固まっている女性の方に目を向ける。


(彼女が転生者ならレンタル屋の受付を頼んでみるのはいいかもしれない。転生者なら共感できる考えも多いだろうし、説明も楽そうだ。まぁ、彼女次第だけど)


 二人の攻防を見て目が点になっていた女性が我に返り、スギルに話しかける。


「ありがとうございマス!助かりマシタ」

「礼には及びませんよ。ところであなたは転生者ですか?つまり、別の世界から来ましたか?」

「!!そうデス!アナタも?アッ、だからこの世界では使われない”悪徳業者”や”小学生”という言葉を知っていたんですネ!」

「そうですそうです!それと…」

「――ところで知っテル?魔法を使っていいのは使われる覚悟のある奴だけダッテ…」


『マジックギアス!』


 二人は声を揃えて元の世界のアニメのタイトルを言った。


「やっぱり!ワタシあのアニメ大好きなんデス!」

「あの作品こそ至高です」

「そうですネ!転生者の人に初めて会いマシタ!元の世界の話楽しいデス!」

「俺も初めてですよ。良ければ町で食事でもしながら話しませんか?実はお腹が空いてて…」


 ぐぅ…と小さな音が聞こえた。


「アッ…じ、実はワタシも…」

「あはは、おごりますよ」

「オー、じゃあ一番高いお店にしまショウ」

「いいですね」


 お互い自己紹介しながら歩いて町に戻る。


「ワタシはルナといいマス。元の世界の〇〇年に歳の離れた弟を庇って、トラックに轢かれてしまいマシタ。弟が…モティが助かったのかはわかりマセン…。だから早く元の世界に帰りたいデス」 

「〇〇年?俺も同じ年に死んだ…。何月か覚えてます?あ、失礼、俺はスギルと言います」

「ウーン、たしか〇月だったと思いマス」

「同じだ…」


(これは…もしかして…)

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