第3話
スギルはワイズを人気のない場所に連れていき、話し出した。
「いい?ゴーダの能力を教えるね」
(やっぱりゴーダの件なんだ)
<名前>ゴーダ
<種族能力>適応(LV0/D)
<覚醒能力>盾術(LV0/F)
<先天能力>剣術(LV1/C)
<名前>ワイズ
<種族能力>適応(LV0/C)
<先天能力>剣術(LV0/E)
「ゴーダは14歳なのに自信家なだけあって大したもんだよ」
「ゴーダって14歳なんですか!?」
「………そこ?」
(まぁ、ゴーダがこの町にきてから数年しか経っていないようだし、一方的に暴行を受けるだけでまともに交流していないのだから当然か)
ワイズは恥ずかしそうに頭を掻いている。
「すみません。ゴーダと僕は【剣術】の能力レベルが1しか変わらないんですか?」
「1の差は大きいよ。例えば【剣術】の場合…」
【LV0】知識、技術、間合い等は未熟だが剣の扱いが上手い、またはその素質を持つ
【LV1】多くの流派共通の基本的な技を全て習得
【LV2】特定流派の技を数多く習得
【LV3】特定流派の免許皆伝(奥義含む全ての技を習得)
【LV4】複数流派の免許皆伝、または既存流派を超える技を持つ独自流派の創始者等
【LV5】あらゆる剣技を知りつくし、その多くを使いこなす剣聖
「ゴーダは僕よりちゃんとした技を使えるってことですか?」
「それもあるけど、技を習得しているということは、実戦で使えるレベルだということ。また、基本的な技というのは多くの人が使い、洗練されている技とも言える。もちろん、それらの技の対処方法も知っている」
「なるほど。僕の剣が通じるはずがないんですね…」
「まぁ、能力レベルだけで勝敗が決まるわけではないけど、ゴーダは君より体格も身体能力も優れているよね?」
「たしかにそうですね」
「【剣術】だけだとさすがに厳しいだろうから、今から君に【炎魔法】を付与してみる」
「えぇぇっ!?」
大きな声を発したワイズはしまったという顔で口を塞ぎ、小声で質問する。
「そんなこともできるんですか?」
「あ、ちなみに俺の能力は一切他言無用だよ?」
「わかりました!絶対守ります!」
「両親にも言ってないよね?」
「大丈夫です!」
「じゃあ、始めるよ」
スギルがワイズの頭に手を乗せるとワイズの体の表面がわずかに発光し、その光は次第に消えていった。
「じゃあ見てみるか…うん、能力レベルのコントロールも上手くいったみたいだ。あまり高いと危険だからね。こんな感じになったよ」
<名前>ワイズ
<種族能力>適応(LV0/C)
<先天能力>剣術(LV0/E)
<先天能力>炎魔法(LV1/S)
「才能Sですか!?」
「Gの方がよかった?」
「そういうわけじゃないですけど…僕なんかが才能Sだなんて…」
「君には明るい未来が必要だと思う」
「!…ありがとうございます。ところで【炎魔法】LV1ってどんな魔法を使えるんですか?」
「あぁ、まだ説明してなかったね。【炎魔法】は…」
【LV0】魔素を炎に変換できない、または小さな炎しか出せない
【LV1】実戦で役立つ程度の炎を出すことができる(火炎放射等)
【LV2】炎を形作り、自由に動かしたり、自身から離れた場所に炎を出すことができる(火球を飛ばす、剣に炎を纏わせる等)
【LV3】複数の炎を操ることができる
【LV4】少量の魔素で炎を操ることができる
【LV5】天災級またはそれ以上の範囲と威力を持つ炎を操ることができる
「火炎放射…すごいですね」
(軍用の火炎放射器を持った相手に勝てる武術の達人は存在しない。これで十分だろう)
「魔法に名前をつけるのは勝手だから好きにするといいよ。それと人間が魔法を使う上で必要な物がある」
「魔術師の方が持ってる杖とかですか?」
「うーん、正確には杖や装備にはめ込んでいる魔石という石が必要なんだ」
「魔石…」
「魔法を使うためには魔素が必要で、人間は体内で魔素を生成できない。だから大気中の魔素を蓄積する性質のある魔石を使うんだ。【炎魔法】の場合、魔石の中の魔素を炎に変換するイメージだね。魔石内の魔素が空になると、再び魔素が蓄積するまで魔法が使えなくなる」
「なるほど…魔法にも弱点があるんですね。」
「それを踏まえても強力だけどね」
「大気中の魔素を直接、魔法にすることはできないんですか?」
「できるけど、魔素が足りなくて十分な威力が出なかったり、発動までに時間がかかったりするよ」
「うーん…、難しいですね」
「例えば、コップ一杯の水をかけることを魔法とする。大気中の魔素を使うっていうのは雨の中でコップを持って水が溜まるのを待っている状態。大きなバケツに水が溜まっていたらそこからすくってかければいいよね?そのバケツが魔石って感じかな」
「なるほど!わかった気がします」
「よかった。魔法にはイメージが大事だからね。これをあげるよ」
スギルはワイズにぼんやり光る濃い紫色の宝石のような石を渡した。
「これが魔石ですか。貴重なものなんじゃないですか?」
「一般的には貴重みたいだけど俺はたくさん持ってるから」
「たくさん…」
「じゃあ少し魔法の練習をしてみようか」
スギルは【空間魔法】で別空間へのゲートを開いた。この空間は【時魔法】で時間の流れを変えている。
「この中は時間経過が通常より早くなってるから短時間でたくさん練習できるよ」
「………。もう驚かなくなってきました」
「いい傾向だね」
五日後、町の広場――
「お、雑草ワイズじゃないか。しばらく見ないから野垂れ死んだかと思ったけど…さすが雑草、まだしぶとく生きてたんだな」
「ネス…いつもゴーダの後ろに隠れてばかりだね。僕が怖いの?」
「なっ!」
驚くネスを尻目に、ゴーダが鋭い目をしたワイズを見下すように話す。
「お前、何かあったな?随分いい目になったじゃないか」
見透かされたようで尻込みしそうになるワイズだったが、勇気をもって言い返す。
「…ゴーダは変わってないね。相変わらず自信過剰だ。いつまでも僕に勝てると思ってる」
「………いい度胸だ…10分後、裏門の外に来い!!」
そう言うとゴーダはネスと共に自分の家に戻っていく。ワイズは先に裏門の外に行き、別空間でのスギルの言葉を思い出していた。
「いい感じだね。【炎魔法】を避けられたら剣で攻撃するのも有効だよ。【炎魔法】直撃だと殺しちゃうかもだし」
「たしかに…こんな炎をまともに受けたら…」
「……。俺ならあんな仕打ちを受けたら殺意が湧きそうだけど」
「弱い僕が悪いのも事実なので…」
「今の君は強いよ、自信を持って」
――(迷ってたら勝てない。僕は絶対ゴーダに勝って本当の自信を持つんだ)
「ゴーダ…それはさすがにまずいんじゃ…」
木剣ではなく鉄製の剣を腰に下げ、革製の鎧を身に着け、革製の盾を腕に付けたゴーダを見てネスが言った。
「ビビってるなら来なくていいぞ。あの野郎を後悔させてやる…あの世でな」
ゴーダはネスを置いて裏門の外へ向かった。
「ゴーダのやつ…本気だ…どうしよう…」
裏門の外、門兵に見られない場所で待つワイズにゴーダが近づいてきて、少し離れた場所で足を止めた。
「殺される覚悟はできたか?ワイズ」
ゴーダは鉄製の剣を鞘から抜いて、左腕の盾を前に半身になって構えた。それに応じるように両手で正面に木剣を構えたワイズだが、鉄製の剣とこちらを睨むゴーダを見て思わず唾を飲み込む。
ドクン…ドクン…
(自分の心臓の音が聞こえる…あのゴーダの構え…初めて見た)
「…本気みたいだね。でも、僕は負けない」
「いちいち癇に障る野郎だ…!」
実戦慣れしているゴーダが最初に動いた。
「うおぉぉぉ!!」
ワイズは声を上げて突進してくるゴーダに向かって左手をかざす。
「火炎放射!!」
「なにっ!?」
ゴーダは勢いよく放出される炎に驚くが、素早い身のこなしで横にころがりながら避ける。
次の瞬間、ゴーダの目前に剣を振りかぶるワイズが飛びかかっていた。
――ガツッ!!
ワイズの振り下ろした剣はゴーダの盾に弾かれ、体勢を崩したまま横に振られた鉄製の剣がワイズの足元を襲う!
慌てて後方へ跳躍するワイズだが、右太ももからは血が流れている…。
「くっ…!はぁっ…はぁっ…」
(失敗したっ!この傷はまずい…)
膝をつき、片手で傷を抑えながらも剣を向けるワイズに、ゴーダは立ち上がりながら声をかける。
「おい、手を抜いて勝てると思ったのか?俺に炎が直撃しないように軌道をずらしただろ」
「はぁ…はぁ…よくわかるね」
「なめやがって…その脚じゃまともに動けない。次は…首を切断する」
(魔法しかない…!でも直撃させなければ避けられて、出血と魔素の消費で僕が不利になる。…僕は人を殺すのか!?ここで死ぬのか!?)
「死ね…!!」




